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第54回不来方賞

後方待機から直線弾ける
  三冠阻止し重賞初制覇

長らく岩手のダービーとして親しまれてきた不来方賞。現在は三冠の最終戦となり役割が少し変わってきたが、同舞台で行われる3歳秋のチャンピオンシップのファイナル、ダービーグランプリへ向けての地元ステップとして、重要な位置づけにあることは変わらない。

今年はさらに三冠馬誕生の期待もかかった。ダイヤモンドカップと東北優駿(岩手ダービー)を制したグットクレンジングは、ホッカイドウでのデビューから高知、大井を経て岩手に転入。東北優駿で10馬身差の圧勝劇を演じて力の違いを示しただけに、久々の実戦でも単勝1.7倍の1番人気と注目を集めた。

この日の盛岡競馬場は時計の速い不良馬場。グットクレンジングは逃げたノンロムをマークするかたちで、2番手を追走。勝負どころで追い出しにかかり、あとは栄光のゴールまで一直線……、と思われた。しかし、予想以上に反応がなく、直線に向いても脚いろは今ひとつ。そこへ後方待機策を取った馬が一気に襲いかかった。なかでも力強く伸びたのが2番人気のマナホク。北斗盃、北海優駿でともに3着の実力馬が、転入初戦、初の左回りをものともせず、岩手の地で重賞初制覇を飾った。

入線後、高々と右手を挙げたマナホクの高松亮騎手。レース前に「時計は速いですけど、どこからでも競馬ができる馬場」と話していたが、それを具現化する騎乗を見せた。最後方の追走から向正面で仕掛け、4コーナーで先行集団の外に進出すると、直線の半ばで先頭へ。「前半に仕掛けていくと良くないので、自分のリズムで追走させました。操縦性が高く、しっかり脚を使ってくれます」とパートナーの長所を口にし、「厩務員さんも昔から一緒にやってきた仲間。いろいろな感情が沸き起こったゴールでした」と、自厩舎の馬でのタイトル獲得に目を潤ませた。

管理する佐藤雅彦調教師も「順調さを欠いた部分もあって、試行錯誤しながら調整。そのなかで100点以上の結果を出してくれた」と人馬をねぎらう。「当初から(岩手では)不来方賞とダービーグランプリの2戦ということになっているので、予定通りに進みます。強い馬も来ると思いますが、また頑張ります」と、ファイナルへ向けて意気込みを見せた。

一方、グットクレンジングは8着に敗れ、三冠を逃した。今年のホッカイドウや南関東牝馬路線もそうだったように、三冠達成への道のりは想像以上に険しい。山本政聡騎手は「逃げか2、3番手を想定していて、その通りの競馬はできたけど、追い出してからの手応えがありませんでした。左回りの経験がなかったのが影響したのか……。この馬らしくなかったですね」と悔しさをにじませた。ただ、左回りを経験し、一度実戦を使ったことで変わってくるはず。次走以降は岩手二冠の実力を示してくれるに違いない。

取材・文大貫師男

写真佐藤到(いちかんぽ)

Comment

高松亮騎手

門別で距離を経験していますし、乗っていた落合騎手にも話を聞いていましたから、僕は馬を信じて乗るだけでした。最後まで勝てるか分からなかったですし、自分も祈る思いで乗っていました。こうしてトライアルを勝てたので、全国の強敵を迎え撃つかたちで、次も頑張りたいと思います。

佐藤雅彦調教師

転入初戦なので、ある程度は門別の関係者から聞いて調整してきましたが、どんなレースになるかはやってみないと分からないと思っていました。先頭に立った時も、まだ安心はできなかったですね。ダービーグランプリは他地区からやってくる相手も強いでしょうけど、また頑張ります。