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第22回サンライズカップ

同厩舎のライバルを差し返す
  重賞初制覇でJBCへ弾み

9月20日から22日までの3日間、セプテンバーセールが開催された。近年の北海道市場は、地方競馬のオーナーが積極的に高額馬を落札しており、年々、各地の生え抜きが活躍している。「ホッカイドウ競馬のレベルが高い」と謳われ続け、今夏のJRA札幌でも、クローバー賞とすずらん賞で勝ち馬を送り出した。しかし、栄冠賞とブリーダーズゴールドジュニアカップで3着に健闘したポリゴンウェイヴが重賞初制覇を目論み、早々と浦和へ移籍したが、ゴールドジュニアで2着に敗退。園田プリンセスカップも、オープン好走のエイシンエイトとエイシンレゲンダが参戦したものの、連対を確保することもできなかった。

セールには当然、ホッカイドウ競馬の調教師も多く来場している。「高くて、思うように馬が買えない」と嘆くシーンを、近年はよく見る。3歳馬なら金沢のスーパーバンタム、2歳なら岩手のフジラプンツェル、金沢のショウガタップリは、北海道市場で取引された。2歳戦に対する各地の取り組みが奏功し、ハイクラスの馬をデビューさせている。

それでも、ホッカイドウ競馬がブランド化されている1つの背景に、レースの質がある。今年の栄冠賞は、ポリゴンウェイヴがマークした前半3ハロンは34秒1だった。不良馬場にせよ、2歳6月のダート戦で、このハイラップは中央競馬でも刻まれることはない。昨年のJBC2歳優駿JpnIIIも、エンリルが記録した前半3ハロンは34秒8だったが、厳しいレースの経験値の多さは、他地区との大きな差だと感じている。

2歳中距離重賞を連勝中のベルピット、重賞初挑戦となるグラビティモデル、ベルピットに食い下がるレースを3戦続けているオーマイグッネス。角川秀樹厩舎の有力3頭に対し、JRA札幌のコスモス賞を経験したタイガーチャージは、出走馬の中で唯一、1800メートルでの勝利実績がある。コルドゥアンは、栄冠賞を最後方から大外強襲を決めたタイトルホース。今年のサンライズカップは7頭立てながら、JBC2歳優駿JpnIIIの重要な前哨戦に相応しいメンバーで覇を競った。

オーマイグッネスが好スタートを決め、外からタイガーチャージが追いかける展開。それらを見る形でベルピットは3番手を追走した。前半3ハロン標で、先頭から最後方まで2秒6も開く縦長の展開となったが、前半は12秒7-12秒3-12秒6=37秒6と、平均より少し遅いぐらいのペースだった。向正面に入り、5ハロン通過は63秒7と、先頭の阿部龍騎手が13秒前後のラップに落とす。

勝負のポイントは、3コーナーを過ぎた地点。後半3ハロンの最初のラップが12秒6と、阿部騎手はその前の地点よりラップを一気に上げ、引き離そうとする。タイガーチャージはモタつき、ベルピットはこの地点から追い上げを開始する。この勝負所の駆け引きが、最後の直線の攻防につながる。ラップが上がったところで追いかけたベルピットは、一旦先頭に立ったものの、最後の最後で脚が止まる。主導権を握っていたオーマイグッネスが二枚腰を見せ、ゴール直前で差し返し、4度目の直接対決でベルピットに先着。重賞初制覇を飾った。

「縦長だったので、ハイペースだと思ってレースを観ていた」と角川調教師は苦笑いしていたが、個人的に採ったレースラップを見ながら、「オーマイグッネスが上手にレースを運んでいましたね。後半3ハロン(12秒6-12秒9-13秒2)が、これだけしっかりまとまっているなら、ベルピットが敗れたのも頷けます」と、2頭の叩き合いを振り返った。

JBC2歳優駿JpnIIIで、角川厩舎は2頭のタイトルホースで中央勢を迎え撃つ。

「少頭数の競馬が多いとはいえ、揉まれたり砂を被っても不安のない馬たちですから、より状態をアップして頂点を目指します」と、力強い言葉を残した。今年の2歳重賞で5勝目となった角川厩舎は、北海道2歳優駿JpnIII時代に3勝している。2歳重賞の勝ち方を、北海道で最も知る角川調教師が、3代目JBCの称号を目指す。

取材・文古谷剛彦

写真浅野一行(いちかんぽ)

Comment

阿部龍騎手

1コーナーをゆったり回ることができ、マイペースで逃げることができました。3コーナーでラップを上げることを念頭に置いていたので、思い描いたレースができましたが、ベルピットの勢いがすごく、今回もダメか……と思った時に、根性を見せてくれたオーマイグッネスに成長を感じました。

角川秀樹調教師

縦長の展開だったので、ハイペースかと思いましたが、ラップを見てオーマイグッネスが上手に逃げていたことを感じました。少しずつベルピットとの差を縮めていましたから、ようやくタイトルを獲ることができて良かったと思います。ベルピットとともに当然、JBC2歳優駿で頂点を目指します。