web furlong ウエブハロン

地方競馬のオンライン情報誌ウェブハロンPresented by National Association of Racing

Copyright(C) 1998-NAR.All Rights Reserved.

第12回絆カップ

断然人気に応え危なげなく連覇
  好時計マークしJBCを視野に

東日本大震災が発生した2011年に創設された絆カップ。当初は地方全国交流のダート1400メートル戦として実施され、第2回からは1600メートルに変更され、14年はJBCクラシックJpnIの指定競走として、例外的に岩手所属馬限定の2000メートルで行われた。3年前からは岩手所属馬限定戦に変わり、昨年は1200メートルで実施。そしてJBCが盛岡に戻ってきた今年は開催時期が1カ月ほど早まって、JBCスプリントJpnIの指定競走となった。

その舞台に登場したのは9頭。いずれもダート1200メートルで勝利したことがあるが、その9頭のなかではキラットダイヤのスピードと勢いが一枚も二枚も上だった。

JRAではダート1000メートルでの3着内率が100%で2勝を挙げたが、2勝クラスに昇級後は1200メートルで(芝も含め)3戦とも2秒差以上での敗退。しかし昨春の岩手移籍後は、初戦こそ3着だったが、その後は7戦6勝、2着1回と好成績。その2着は水沢競馬場の1400メートルで、移籍後は1200メートル以下の勝率が100%となっている。

その戦績なら断然人気に支持されるのは当然だが、今回は約2カ月半の休み明け。それでも締め切り3分前に1.2倍だったキラットダイヤの単勝オッズは、最終的に1.1倍にまで下がった。続く2番人気は4.8倍のカミノコで、人気はこの2頭に集中。3番人気は初めて古馬に挑むボサノヴァが12.9倍となったが、4番人気以下は50倍以上で100倍以上も3頭いた。

9月下旬の盛岡競馬場は18時頃になると完全に夜の景色。静けさが支配するパドックに登場した9頭も静かに歩いていたが、カミノコだけが2人曳きで、ときおり小走りになるところを見せていた。

対してキラットダイヤはピンク色のチークピーシーズを装着して、ゆったりとした歩き。その雰囲気には、ひときわ目立つものがあった。

そしてゲートが開くと、キラットダイヤは少し出遅れ。しかしすぐに加速がついて2番手につけ、4コーナーの手前で先頭に立った。その姿はスタンドからでも全く無理がないと分かるもの。4コーナーを回り終えたところでは早くも2番手以下を引き離し、最後は2着のゲンキチハヤブサに7馬身の差をつけて余裕のゴール。「危なげなく」という言葉しか浮かんでこない内容だった。

2着から4馬身差の3着には中団から流れ込んだ6番人気のシングンポラリス。カミノコはそこから3馬身差の4着に敗れた。

カミノコの手綱を取った山本聡哉騎手によると「なんか今日はいつもと違う感じでした」とのこと。「外を回るほうがいいタイプで、位置取りも後ろでいいんですが、手ごたえがなくて」と首をかしげた。それでもクラスターカップJpnIIIでは5着で地方最先着。馬主の傾向としてJBCスプリントJpnIに出走する可能性が高いと思われるだけに、巻き返しを期待したいところだ。

一方のキラットダイヤは、JBCに進むかどうかは「未定」(板垣吉則調教師)とのこと。ただし、板垣調教師は出走させたい意向を持っている。キラットダイヤで絆カップの連覇を飾った鈴木祐騎手は「まだ時計は短縮できますし、1頭になると気を抜くところがあるので、強い相手がいるほうがレースをしやすいと思います。JBCは今日くらいの馬場状態で、枠はなるべく内のほうで」と、11月3日を楽しみにしていた。

取材・文浅野靖典

写真佐藤到(いちかんぽ)

Comment

鈴木祐騎手

途中まで2番手の位置でレースができたのは今後につながると思います。それでも3コーナー手前からは馬が勝手に上がっていこうとするので、それをなだめながら進むという感じでした。休み明けより2戦目のほうが間違いなくいいタイプ。JBCでは岩手代表として、全国を相手に戦いたいと思います。

板垣吉則調教師

スタートで少し遅れたのは、休み明けだとゲートで気合が入らないところがあるので、これはいつものことですね。それでもレース自体はとてもいい内容で満足しています。自分としてはJBCに岩手代表として出走させたいのですが、どうなるのかまだわかりません。これから馬主さんに相談します。