路盤も含めた馬場の改修工事が行われている船橋競馬場。この開催前までに、1000メートルのスタート地点から3～4コーナーを経て、直線半ばまでの工事が完了した。砂を一時的に撤去していたこともあり、レース傾向に注目が集まっていたが、この日本テレビ盃JpnIIの前日は全12レースのうち、10レースが逃げ切りという顕著な結果。当日も前半レースは先行馬の好走が目立っていた。

しかし、顕著な前残り傾向が出ていれば、騎手の心理も当然「前へ」となる。日本テレビ盃JpnII直前の2レースはともに短距離戦だったが、差し、追い込み馬が台頭する結果。迎えたこの一戦も、単騎での逃げが予想されるサルサディオーネ（大井）に対し、他馬がどの程度のアプローチをしてくるかが鍵を握っていた。

レースはもちろんサルサディオーネが先導。これをJRAの3歳馬ノットゥルノがぴったりマークする。前半はノットゥルノも後ろに控えるかたちだったが、向正面の半ば過ぎから馬体を併せにいき、サルサディオーネに息を入れさせない。さらに3コーナーからクラウンプライドも加わり、よどみないペースのまま直線を迎えた。

サルサディオーネは懸命の粘りを見せ、クラウンプライドに応戦していたが、残り100メートルで力尽き、勝負が決したかと思われた。しかしその瞬間、外から飛んできたのが船橋のフィールドセンス。道中は7番手で息をひそめていたが、3コーナーの手前から徐々に位置取りを上げ、直線で末脚を爆発させた。ゴール前でクラウンプライドを捉えて、半馬身差で勝利。前走のスパーキングサマーカップからの連勝を果たし、初のダートグレードタイトルを手にした。

検量室前に引き揚げてきたフィールドセンスの本橋孝太騎手は、馬上で雄たけびを上げ、何度もガッツポーズ。「ゴール前でも『よっしゃ』と叫んでしまいました。展開が向いたとも思いますが、8歳でもまだ馬が若くて、いい脚を使ってくれます」と、2013年のオーバルスプリントJpnIII（セイントメモリー）以来となる2度目のダートグレード制覇を喜んだ。

また、管理する山下貴之調教師はカジノフォンテンでのJpnI・2勝に続き、ダートグレードは3勝目。「8歳ですけど、充実していますね。でも、中央馬が相手だと、距離はこれがギリギリでしょう」と話す。今後はマイル～1800メートルを中心に使っていく予定で、優先出走権を獲得したJBCクラシックJpnIは見送ることになりそう。ただ、持ち前の鋭い末脚は今後も広いコースで武器となるはずで、さらなるビッグタイトルも期待できる。

UAEダービー馬クラウンプライドは2着に敗れたものの、ケンタッキーダービーGI（13着）からの帰国初戦で能力の高さを示した。福永祐一騎手は「初めての小回りをうまく立ち回ってくれた。勝ったと思ったけど……」と悔しさをにじませたが、「レベルの高い馬だし、今後が楽しみです」と先々へ期待を寄せた。母エミーズプライド、祖母エミーズスマイルともに、船橋に所属していた地方ゆかりの血統。今後も垣根を越えた活躍を期待したい。

一方、3着に終わったサルサディオーネだが、矢野貴之騎手は「厳しい流れで、息が入らなかったですね。それでもよく3着に粘ってくれました」とパートナーをねぎらった。牝馬限定戦ならともかく、牡馬との混合重賞でも厳しいマークに遭ったのは、その実績に加え、馬場に対する他陣営の懸念も影響したはず。むしろ前残り馬場の印象がなければ、もう少し楽な展開に持ち込めたのかもしれない。

心配なのは、昨年のJBCクラシックJpnI覇者のミューチャリー（船橋）。前走の大井記念と同じく最下位に敗れ、「歩様が硬くて……」と真島大輔騎手も表情を曇らせた。復調を待ちたいところ。