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第62回姫山菊花賞

直線外から鋭く伸び差し切る
  道営三冠馬が三強対決を制す

この2年、地元馬相手には負けなしだった王者ジンギ。しかし今春の兵庫大賞典では前年末にJRAオープンクラスから移籍したシェダルがクビ差2着まで迫り、兵庫の古馬中距離界は一気に2頭のバチバチムードとなった。ジンギが休養中の8月にシェダルが摂津盃で重賞初制覇を果たすと、「待ってろ、ジンギ!」という実況が飛び出したほど。さらに8月下旬には昨年の道営三冠馬・ラッキードリームが兵庫移籍初戦を快勝。年末の大一番・園田金盃に向けて役者が揃い、ファンの期待も高まっていった。

その大一番まで約2カ月あるものの、例年、前哨戦的な位置づけとなっているのが姫山菊花賞。JBC指定競走ともなっている。

人気はやはり3頭に集まった。ジンギが1番人気で単勝1.8倍、シェダルが2.7倍、ラッキードリームが4.8倍と続き、4番人気のタガノウィリアムはなんと20.7倍。単勝オッズからも三強ムードが色濃く伝わってきた。

戦前にはアイアムレジェンドの逃げ宣言も聞こえてきたが、先手を取ったのはタガノウィリアム。前走・摂津盃こそ出遅れて10着に沈んだが、当地では逃げると2戦2勝と粘り腰を見せる。そこにジンギが2番手外つけると、真後ろにラッキードリーム、さらにその直後にシェダルと三強は縦一直線でお互いの存在を意識しあった。

2周目向正面からペースは一気に上がり、4コーナーではジンギとシェダルが、タガノウィリアムを捕らえにかかった。ラッキードリームは2頭から2馬身ほど置かれてしまったが、直線で外に出されると鋭く伸び、ゴールまであと数完歩というところでタガノウィリアムを交わして勝利。道営三冠馬の底力を見せた。

3/4馬身差にタガノウィリアムが逃げ粘ったことで新子雅司厩舎はワン・ツー。半馬身差の3着にジンギ、シェダルは3馬身離された4着だった。

久しぶりに地元馬相手に敗れたジンギだが、休み明けに加え、前も後ろも警戒せねばならず、難しい展開だっただろう。その展開に持ち込めたのは有力馬を多数擁する新子厩舎だからこそ。

「タガノゴールドがいなくなってからジンギが絶対王者と言われていたのを、自分の厩舎の馬で勝てて嬉しいです」と、新子調教師は2018年に姫山菊花賞を勝ちJBCクラシックJpnIに出走した管理馬の名を挙げた。「ジンギは休み明けでしたし、園田金盃でまたいい勝負ができればと思います」と、ライバルとの再戦に期待を寄せた。

田中学騎手はジンギの反応や道中の動きなどがこれまでと違ったと話し、「負けて悔しいけど、いつかは負けるからね」と自身に言い聞かせるように呟いた。この2年、王者として目標にされ続けてきた立場。様々な思いを抱えていたのだろう。

シェダルは「返し馬から『走りたくないです』という雰囲気でした。それでも4コーナーでジンギに並びかけた時は『いけるっ!』と思ったのですが。1870メートルになれば、また走りも良くなると思います」と吉村智洋騎手は話した。

兵庫移籍2戦目で存在感を強く示したラッキードリーム。今後はオーナーと相談の上、ひと叩きするか直行で園田金盃を目指す見込みだ。中距離界が俄然、面白くなってきた。

取材・文大恵陽子

写真桂伸也(いちかんぽ)

Comment

下原理騎手

ホッとしました。3コーナーでシェダルが上がっていった時に対応できず、強い馬相手ではコーナーで置かれる面がありそうです。それでも、思い切って外に進路を求めたら豪脚を使ってくれました。門別時代のレースでも直線はすごい脚だと思っていて、「こういうことか」と実感しました。

新子雅司調教師

タガノウィリアムが逃げ、有力馬の隊列が思っていた通りになりました。少しズブい面があり3コーナーで置かれて冷や冷やしましたが、エンジンがかかるといい脚でした。調教でテンションを上げすぎると良くない方にいきそうなので、人間は無理に手を加えず、馬が自分で体をつくってくれました。