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第35回ダービーグランプリ

北海道2頭が直線一騎打ち
  三冠を逃した雪辱の勝利

3歳秋のチャンピオンシップのファイナルは、出走15頭の半数近い7頭が南関東からの遠征馬で、舞台を盛岡に替えて南関東三冠の延長戦かというようなメンバー。しかし直線、その南関東勢を寄せ付けず一騎打ちとなったのは、北海道三冠のタイトルを分け合った2頭だった。

まず注目となったのは先行争い。黒潮盃を逃げ切った大井のエスポワールガイか、王冠賞を逃げ切った北海道のエンリルか。果たして、外枠ながらエンリルが行く気を見せてハナを取った。短距離路線を使われてきて黒潮盃よりさらなる距離延長となったエスポワールガイは好スタートを切ったものの、折り合い重視で控えて2番手。これでペースが落ち着き、東京ダービー馬カイル、北海道二冠馬シルトプレが続いた。

3コーナーあたりでは、中団からナッジ、クライオジェニックら上位人気馬が動いていったが、前をとらえるまでには至らず。4コーナー手前、抜群の手応えでシルトプレが前をとらえにかかると、エンリルにもまだ余裕があるように見えた。

そして直線を向くと北海道の2頭が馬体を併せての一騎打ちとなり、3番手以下は離れた。互いに譲らずの追い比べは残り100メートルを切っても続いたが、最後はエンリルが力尽き、シルトプレが1馬身差をつけてゴール。石川倭騎手の右手が上がった。

後続で唯一直線伸びを見せたナッジが3着に入ったものの、2着とは4馬身差。北海道デビューでJBC2歳優駿JpnIIIで2着に好走し、全日本2歳優駿JpnI(8着)のあと大井に移籍。南関東の三冠戦線では常に上位争いに絡むものの、3歳になってからは勝ち星がなく、ここも3着まで。矢野貴之騎手は、「いつもあと一歩、伸びきれないですね。古馬になってからとは思っているので、手応えを感じるレースでした」と今後への期待を語った。

さらに4馬身離れて4着にカイル。ここまで無冠も東京ダービー、黒潮盃とも2着で1番人気に期待されたクライオジェニックは5着。東海三冠馬タニノタビトは6着だった。

王冠賞ではエンリルに8馬身差をつけられ三冠を逃していたシルトプレの石川騎手は、「前走は(エンリルを楽に行かせすぎた)僕の失敗だったので、なんとか借りを返せました」と、ほっとした表情。次走について米川昇調教師は明言を避けたが、道営記念か、ここを勝ったことで同じ舞台のJBCクラシックJpnIも選択肢となるようだ。

一方、惜しくも2着だったエンリルは、「行かせたほうが持ち味が出るので外枠でも逃げるつもりでしたが、そのぶん行き脚を使ってしまいました。初めての左回りで少し遊びながら走っていたのもあるし、ベストはもう少し短いところだと思います。それでもこだけ走ってくれるので、今後が楽しみです」と桑村真明騎手。

かつてホッカイドウ競馬では、2歳時の有力馬の多くが中央や南関東に移籍するなどで、3歳三冠戦線が盛り上がりに欠ける時期もあった。しかし近年では三冠ボーナスをはじめとする様々な施策や賞金アップもあり、2歳の有力馬が出ていくばかりでなく留まることも目立ってきた。それが結果として表れているのが、2017年のスーパーステション、19年のリンノレジェンドによるダービーグランプリ制覇であり、そして今回のワンツー決着といえそうだ。

取材・文斎藤修

写真佐藤到(いちかんぽ)

Comment

石川倭騎手

あのペースならこの位置がベストかなと思える、イメージ通りの競馬ができました。いい手応えで直線に来たので、必死で追いました。直線が長く感じましたし、ゴールではほっとした気持ちと、うれしい気持ちで興奮しました。来年も全国で活躍できるように、がんばっていきます。

米川昇調教師

前回(王冠賞)の失敗がありますから、(エンリルに)楽に逃げられないように、ジョッキーと相談して少し前には行くようにと作戦を立てていました。思った以上にかかっていたのでどうかと思ったんですけど、しのいでくれたのでよかったです。負けられない戦いでしたから、直線は力が入りました。