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第35回マイルチャンピオンシップ南部杯JpnI

ゴール前の接戦をハナ差制す
  1番人気に応えジーワン3勝目

前日の夜から降り続く雨の影響で第1レースから最悪のコンディションの不良馬場もレースが進むにつれて表面の水は徐々に引いた。第8レース終了後には曇となるが、第10レースからは濃霧で視界がききずらい状況。発走が遅れた第11レース、1600メートルのスタートは記者室から確認できず、最初の300メートルくらいは双眼鏡でも厳しくラップが取れなかったほど。しかし続くマイルチャンピオンシップ南部杯JpnIの返し馬のころにはスッキリと見える状態になってホッとした。

芝・ダートGI/JpnIのタイトルホルダーが5頭参戦。単勝1番人気に支持されたのはフェブラリーステークスGIを2連覇カフェファラオで2.8倍、南部杯JpnI・3連覇を狙うアルクトスが3.7倍の2番人気。今年ダートグレード3勝シャマルが5.1倍、昨年の南部杯JpnI・3着馬ソリストサンダーが5.4倍で10倍を切るオッズは4頭。

スタートして何が先手をとるか、先団が固まり周回コースに入るあたりでヘリオスの逃げ。ソリストサンダー、カフェファラオ、アルクトス、イグナイター、シャマルが追走する形。流れは速いが、この日は逃げが絶対に有利ともいえず、不良のコンディションの割には思ったほどタイムも速くならず平均値より1秒6速い馬場(岩手ケイシュウ調べ)。

勝負どころでアルクトスがいっぱいとなり脱落したが、先団の位置取りはそれほど変わらず。直線に入ると、逃げるヘリオスにカフェファラオが並ぶ。最内を突くイグナイターに、外からはシャマルが迫る。グイグイ伸びるカフェファラオとしぶとい粘り腰ヘリオスが並んでフィニッシュ。ゴール前にある記者室で見ていても、この瞬間はどちらが制したがわからないほど。スロー再生でカフェファラオがハナ差出ていた。勝ちタイムは1分34秒6で、ラップは【12.1-10.9-11.5-11.4-11.8-11.8-11.8-13.3】。

カフェファラオの福永祐一騎手は「アルクトスのプレッシャーもあって3コーナーすぎから動く形になり、楽ではなかった。この馬場でしたので、あまり待たずについていきました。道中のリズムがフェブラリーステークスの時よりは楽ではなかったですから、そのぶん最後の伸びが甘くなってしまったこともあります。最後各馬の脚が上がってから、差は僅かでしたけど、そこでグッと伸びて勝ち切ったあたりはGI馬の底力だと思います。初めての環境で今日はカフェファラオの気が乗らない感じでしたが、それでも結果を出してくれました」

ハナ差の2着だったヘリオスの武豊騎手は「行けたら行こうと思っていました。4コーナーでは手応えがひと息でしたが、その割には最後まで粘ってくれた。状態が良かったので勝ちたかったけど……」

半馬身差の3着がシャマルで、内で食い下がった兵庫のイグナイターがさらに半馬身差の4着に入った。

笑顔で戻ってきたのは5着に入った牝馬ゴールデンヒーラーの山本政聡騎手。「次に繋がるレースだと思って前々で競馬をしたかったのですが、流れがいつもと違うし無理せずあの位置(中団)で。この馬場(不良)は合うし、最後まで手応えは良かった」。古馬初タイトルとなった前走青藍賞の記事をウェブハロンに書いたが、着差はともあれ豪華メンバーのJpnIで地元馬が掲示板に頑張ってくれたのは嬉しい。

14着に敗れたアルクトスは、「ここで引退しようと思います」とオーナーが発表した。ダート1600メートルの日本レコードで勝った20年南部杯JpnIのパドック解説でも言ったが、あのデキの良さは忘れられない。

取材・文 峯村正利

写真 佐藤到(いちかんぽ)

Comment

福永祐一騎手

内目の枠で、あまり揉まれるような競馬だとやる気をなくしてしまうこともあり、スタートからポジションを取るまでが一番鍵になると思った。ニの脚があまりよくなかったけど、うまくスペースがあって3番手に収まった。逃げた馬も差し返してきて苦しい戦いでしたけど馬が本当に頑張っていました。