web furlong ウエブハロン

地方競馬のオンライン情報誌ウェブハロンPresented by National Association of Racing

Copyright(C) 1998-NAR.All Rights Reserved.

第49回南部駒賞

スローな流れを逃げ切る
  北海道が5年連続で勝利

6頭立ては、これまでの南部駒賞の歴史においてもっとも少ない頭数。その要因のひとつは、地元で5戦5勝のフジラプンツェルが9月6日にビギナーズカップを勝ったあと、次走は南部駒賞に照準を合わせると伝えられていたことが挙げられる。

フジラプンツェルは水沢の新馬戦こそハナ差の辛勝だったが、2戦目以降はレースごとに2着との差を広げていた。2走前の若鮎賞で芝に挑戦するはずが、レース当日のダート変更で2着に1秒6(10馬身)差。そして前走のビギナーズカップでは2着に1秒9秒の大差をつけた。

となると、ほかの陣営が「地方全国交流という条件でもある南部駒賞に挑むのは……」となるのは仕方ないところ。岩手所属馬は若鮎賞で3着だったローズトレミエ、ビギナーズカップで3着だったアシモトヨシが出走したが、遠征馬を含めた上位人気4頭とは差のあるオッズになっていた。

単勝1.3倍に推されたフジラプンツェルに挑戦してきたのは、北海道、船橋、佐賀所属の計3頭。そのなかで人気を集めたのは北海道のエイシンケプラーで、徐々に支持を高めて3.3倍となった。3番人気は6.5倍で船橋のナイトオブバンド、4番人気は19.6倍で佐賀のネオシエルと続いた。

2コーナー奥のスタート地点でゲートが開くと、フジラプンツェルは最近2戦と同じように少し遅れる形。すぐさま鞍上の山本政聡騎手は最内枠の位置から外に誘導して、砂をかぶらない位置につけた。

先手を取ったのはエイシンケプラーだったが、レース後に「僕の馬は進んでいかないし、後ろから誰も来ないし」と山本咲来到騎手が話したように、見た目にも遅い流れ。エイシンケプラーから少し離れた2番手はナイトオブバンドで、その直後にフジラプンツェルがつけ、ネオシエルはインコースの4番手。その後ろの岩手2頭は徐々に離された。

それでも単騎逃げを続けるエイシンケプラーに、3コーナーの下り坂を利用してナイトオブバンドとフジラプンツェルが接近。馬体を並べる瞬間もあった。しかしエイシンケプラーは直線に入ると再加速。逆転を狙うナイトオブバンドを残り50メートルあたりで突き放し、競馬場内に山本咲希到騎手の雄叫びが響き渡った。

「初めて乗ったときから絶対に重賞を勝てると思っていたのに、この馬自身に課題があって勝てなくて、でもそれがここで実現できました」と、山本咲希到騎手は勝った瞬間に右の拳を握った理由を説明。その課題とは集中力が続かないことで、それでも「脚力は申し分ない」と、同騎手は高く評価している。

逆に、2着のナイトオブバンドは厳しい展開になったようで「逃げた馬は遊びながら走っていたから早めに並ぶのはどうかなと思いましたし、後ろの人気馬にも気を遣いましたし」と、本田正重騎手。3着のネオシエルも山口勲騎手が「1番(フジラプンツェル)がもう少し走ると思っていたのに動かないから、最後の直線は外に切り替えてよかった」と苦笑い。それでも遠征競馬で3着には「この馬は走りますよ。来た甲斐がありました」と前向き。九州産馬という点を含めて、今後が楽しみな存在だ。

「来た甲斐があった」というのはエイシンケプラーも同様。遠征競馬で結果を出した経験が、これから生きることになるのだろう。

取材・文浅野靖典

写真佐藤到(いちかんぽ)

Comment

山本咲希到騎手

これまで真面目に走ったことがなくて、今回も普通に走ってくれることだけを願っていました。でも、返し馬で気合が入っていたのに、スタート後は行く気を見せてくれなくて。それでも先手を取って、4コーナーで並ばれたときもこれまでなら走るのをやめていたんですが、今日は辛抱してくれました。

松本隆宏調教師

普段はおとなしくて、レースになるとしっかり走ってくれるのですが、どうしても遊んでしまうところがあるので、そこは引き続き課題になります。それでも広いコースのほうが合うと思いますし、門別に戻って体調面に問題がないようなら次も盛岡で、芝のジュニアグランプリを目指そうと考えています。