人気にこたえ逃げ切る
成長途上も調整が結実
朝から断続的に雨が降る笠松競馬場。3~4コーナー脇を走る名鉄の車内からもコースが雨に煙って見えた。それでも“日本一水はけのいい地方競馬場”とも言われるだけあってか第4レースまでは良馬場。その後に稍重へと悪化した。
ラブミーチャン記念は第2回以降は7年続けて10頭立てで行われてきたが、今年は8頭。しかし、前走で同じくグランダム・ジャパンの一戦である園田プリンセスカップを制したアドワン(兵庫)が当日の早い段階で競走除外となり、7頭立てとなった。
地元専門紙でも厚い印が並び、前走のレースぶりからも1番人気に推されると思われていた馬が不在となり、単勝1.4倍の支持を得たのは唯一の遠征馬・ボヌールバローズ(大井)。続いて、門別から移籍後、好成績を収めるイグアスワーク(愛知)、地元で3連勝中のマイロマンス(笠松)が単勝10倍以下で、4番人気は30倍超えと人気が極端に分かれるオッズとなった。
好スタートを決めたのはマイロマンス。3連勝と同様に押して行ったが、先手は取らず、外からボヌールバローズが逃げた。イグアスワークはその直後につけたのだが、向正面で前が詰まってスムーズに追い出せないシーンがあった。
対して、自身のリズムで脚を伸ばしていったのはボヌールバローズ。4コーナーでは外からメイクストームが迫ったが、直線で再びリードを広げて2馬身半差で勝利。さらに2馬身差の3着にはスムーズさを欠きながらもイグアスワークが入った。
ボヌールバローズは誕生日が5月21日と遅生まれながら、2歳11月にして重賞初制覇。赤岡修次騎手が「まだ緩さがあるので、何回も手前を替えた」と話していたが、それも遅生まれゆえ体がまだ成長途上ということもあるのだろう。
成長途上なのは精神面もそうで、5着に敗れた前走は「気持ちが入りすぎてテンションがすごく高かったです」と福永敏調教師。前走後は一旦リフレッシュ放牧に出し、追い切りもやりすぎず、馬なりで調整をしてきた。それが奏功し、長距離輸送でも大きくテンションは上がらなかった。ただ1点、遠征馬が1頭だったことで他に馬がいなくて寂しがり、朝は少し汗ばんでソワソワした様子を見せていたそう。それでも午後になって翌日のJRA交流レースの出走馬が到着すると、落ち着きを取り戻した。
福永厩舎は今年すでに他地区(南関東以外)への遠征を10回行っている。盛岡、金沢、名古屋、笠松、園田、佐賀と遠征先は多岐にわたるのだが、「結果が大事と考えています。そこにチャンスがあるのなら、我々が臆するのではなく、馬とオーナーのために行きたいと思っています」という。その挑戦の結果、今回のラブミーチャン記念制覇にもつながったとも言えよう。「キャリア2戦で遠征をこなしてくれました。かわいい子には旅をさせよ、ではありませんが、若いうちからこうしてチャレンジしたのは将来を見据えた部分もあります」
レース名のラブミーチャンのように、地元・他地区を問わない活躍が期待される。
取材・文大恵陽子
写真岡田友貴(いちかんぽ)
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福永敏調教師
テンションを含め大事に育てていきたいと思っている馬です。血統的に詰めて使うとテンションが上がる可能性があるので、この後は東京2歳優駿牝馬を視野に入れています。ただ、騎手は広いコースの方がいいとのことで、大井内回りのそのレースを使うかどうか、状態を見ながら考えたいと思います。
赤岡修次騎手
まだ緩さのある馬で、何回も手前を替えてしまい、コーナーではぎこちない走りになりました。小回りコースだと窮屈な走りになりますが、広いコースではより力が発揮できそうです。所々でフワフワしながら走るくらいで、競馬は上手でしょうし、距離が延びても大丈夫だと思います。