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第22回JBCスプリントJpnI

好スタートからマイペースで逃げ切り
  イグナイターは地方馬最先着の5着

小雨が降るなかで周回が始まったJBCスプリントJpnIのパドック。出走14頭の単勝人気は、連覇を狙うレッドルゼルが2.2倍で1番人気。テイエムサウスダンが3.7倍、ダンシングプリンスが5.4倍と、今年に入ってダートグレードで勝利を挙げている3頭が支持を集めた。そのあとはヘリオスが11.3倍、リュウノユキナが11.4倍、そして兵庫のイグナイターが12.4倍。地元岩手で重賞を3連勝しているキラットダイヤは34.7倍だった。

雨が降り始めた第3レースからこのレースまでにダートで行われた6レースのうち5つで、2ケタ馬番が3着以内に入る状況で迎えた多頭数の短距離戦。レッドルゼルにとっては1番ゲートが最大の難所といえた。まして、今年8月16日に行われた同じ盛岡ダート1200メートルのクラスターカップJpnIIIでは、1番ゲートだったダンシングプリンスが出遅れて4着。レッドルゼルは行き脚がつかず、最後方からになった姿には、観客席から悲鳴に近い声があちらこちらから聞こえてきた。

その反面、ダンシングプリンスは好スタートから素早く先頭に。2番手にはヘリオスがつけ、ラプタス、リュウノユキナも続いて先行策。前半3ハロンは34秒4で、このクラスとしてはそれほど速くないペースで進んだ。

4コーナーでもダンシングプリンスが先頭で、2番手がヘリオスという順番は変わらず。その後ろはラプタスが脱落し、5番手を進んでいたテイエムサウスダンも動きがいまひとつ。代わってインコースを通ってイグナイターが差を詰めてきた。

しかしダンシングプリンスにとっては、マイペースの逃げを打てたアドバンテージが最後まで生きた。最後の直線の上り坂でも勢いが衰えずに押し切り勝ち。好位から徐々に差を詰めたリュウノユキナがクラスターカップJpnIIIに続いて2着に入り、ヘリオスが3着。レッドルゼルはラスト600メートルで33秒5という芝並みの瞬発力で猛追したが4着までだった。

そのレッドルゼルの内側で粘り込みを図っていたのがイグナイター。前走のマイルチャンピオンシップ南部杯JpnIでは4着に健闘したが、今回は4着にクビ差での5着だった。レース後に田中学騎手は「外に出したかったのですがスペースがなくて……。1200メートルを1回でも経験していればまた違っていたと思います」と振り返った。新子雅司調教師も「経験の差が出たかな」とコメント。今後は兵庫ゴールドトロフィーJpnIIIで3つ目のダートグレード勝ちを狙い、その後は1200メートル戦をターゲットにしたいと考えているそうだ。

イグナイターに続く6着には浦和のティーズダンクが入った。こちらは2歳時以来の1200メートル戦だっただけに価値がある。和田譲二騎手は「最後の直線では道中で溜めた分、いい脚を使ってくれました」と話した。そのラスト3ハロンの推定タイムはレッドルゼルに次ぐ33秒8。今後の選択肢が広がる結果といえそうだ。

逆に4着に終わったレッドルゼルは、川田将雅騎手が「気合が入りすぎたことで、ゲートのところで気持ちが切れてしまった」とコメント。テイエムサウスダンは7着で、岩田康誠騎手は「最後の直線で前走みたいにグッとくるところがなかったですね。乗った感じはとてもよかったのですが」と話した。

取材・文 浅野靖典

写真 いちかんぽ(早川範雄、築田純)

Comment

三浦皇成騎手

前回のレースを踏まえて、うまく出すことを考えていましたが、スタートしたらさすがのスピード。道中はプレッシャーをかけられないようにと思っていましたが、余裕をもって走れていました。最後はさすがに苦しくなりましたが、そこでもうひと踏ん張りしてくれました。この馬には感謝しかないです。

宮田敬介調教師

昨年のカペラステークスと今年のサウジアラビア(リヤドダートスプリント)はあまり不安がありませんでしたが、そのあと疲れがあったのか、100%とは言えない状況が続いたなかの勝利。偉い馬だと思います。繊細な面があるので前走は敗れましたが、11月にリベンジするんだという気持ちでやってきました。