逃げ馬マークし直線抜け出す
3歳馬が4連勝で一気に頂点に
かしわ記念JpnIまで制したショウナンナデシコ。前走のレディスプレリュードJpnIIで3着に敗れて連勝こそストップしたが、エンプレス杯JpnIIから始まったスパーキングレディーカップJpnIIIまでの4連勝が色あせることはなく、ここでも単勝1.7倍の支持を集めた。だが、これが牝馬の難しさなのだろうか。「連勝していた時と比べて返し馬がおとなしすぎるなというのは感じました。いい時に戻りきっていないのかもしれない」と吉田隼人騎手。3、4番手から直線も最内を突いて伸びてはいるが、春のような爆発力はなく3着に敗れた。
勝ったのは3番人気のヴァレーデラルナ。ここが重賞初挑戦という3歳馬が一気に頂点に立った。道中は外の2番手。逃げたサルサディオーネを見ながら運び、向正面でまくってきたテリオスベルにも動じることなく、4コーナーでは2頭と鼻面を並べた。先にサルサディオーネが脱落。直線まで併走していたテリオスベルも坂上で振り切り、508キロの馬体を躍らせて抜け出すと、迫ってきた後続の末脚も封じて先頭でゴールを駆け抜けた。
最後に外からクビ差まで迫った2着はグランブリッジ。第12回にして初めて3歳馬によるワンツーで決着し、結果的に世代交代を感じさせるような一戦となった。
デビュー戦は芝で4着だったヴァレーデラルナ。ダートに替わった2戦目を5馬身差で圧勝すると、そこからは一貫してダートを走り、4戦連続2着と勝ちあぐねていた1勝クラスを6月に6馬身差の圧勝で突破してからは連勝街道。一気にオープンまで駆け上がった。
藤原英昭調教師は「最初は芝も考えていたんですが、ドゥラメンテ産駒ですけれどもダートも兼用できて、ダートの走りの方がよかったので。なんとかここに出るために賞金がほしかったので、ちょっときついローテーションで挑戦させて、勝ち切ってここにきたんです」。10月9日の3勝クラスから間隔は短かったが、それもここを目指していたからこそだったのだろう。ダートが合う理由として「やはり血統、体形の裏付けはあると思うんですけど、気持ちが前向きなので。今日もペースに乗りながら前進気勢をずっと保っていましたからね。気性的にすごくいいんじゃないですか」と話していた。
勝利に導いたのは岩田望来騎手。これがうれしいジーワン初制覇となった。「終始ヒヤヒヤするレースではあったんですが、勝ててホッとしています。夏開催で怪我をして1カ月半の休みがあったんですけど、その間も馬のことをしっかり考えていました。復帰してからも順調に勝たせていただいて、本当に恵まれているんだなと思います。努力を怠らずに来年、再来年と日本を盛り上げられるジョッキーのひとりになれたらいいんじゃないかなと思います」と笑顔が絶えなかった。ヴァレーデラルナにはデビュー戦から騎乗。この日を含め、10戦のうち8戦の手綱を取ってきたパートナーは「一戦一戦、強くなっていますし、今年に入ってずっと使い続けて崩れていない。精神的にも強くなってきています。もっともっと上に行ける素質を持っている馬だと思っていますし、来年も無事に走り続けてくれたらいいなと思っています」と、さらなる飛躍を期待していた。
4連勝で歴戦の古馬も封じた若き女王。この勢いはどこまで続くのか。「まずはここまでしっかり走り切ってくれたので、ちょっと休憩させて」と藤原調教師。来年はダート界を席巻しているかもしれない。
取材・文牛山基康
写真いちかんぽ(早川範雄、築田純)
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藤原英昭調教師
タフなコースですから、しまいだけというのはたぶん来ないと思うので、前でどれだけ我慢できるかと予想して指示は出しました。この勝利の賞金は大きいと思います。いろいろな選択肢が広がってきますから。今後、ダートのどこを目指していくのか、しっかり調査して、吟味して決めていきたいと思います。
岩田望来騎手
ゲートだけ気をつけて、どこで競馬するかは出てから考えようと。テリオスベルが思った以上にグッときたので、無理に競らないようにしました。流れが一気に速くなってきつくなりましたが、53キロというのもあって最後まで必死に追いました。坂を上がってから同じ脚色。それでも馬が応えて進んでくれました。