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第33回ロジータ記念

自信の走りで直線独走
  3歳女王がさらなる高みへ

本来“負けられない一戦”なのかどうかは、中心視されるその馬の陣営の主観であって、第三者が口にする言葉ではない。しかし今回のスピーディキックに対しては、他の厩舎関係者からもそんな声が聞こえてきた。

ホッカイドウ在籍時を含めて重賞6勝。浦和に移籍後は5戦4勝で、唯一敗れた関東オークスJpnIIにしても3着と、ほぼパーフェクトな成績を残してきた。前走の戸塚記念は南関東の牡馬一線級を相手に3馬身差で完勝。同舞台で牝馬限定の定量戦となれば、客観的に見れば見るほど“負けられない”という主観が顔をのぞかせる。

しかし、当の陣営は冷静だった。「競馬ですし、ほかの馬もここを目標に仕上げてきたでしょうから結果は分からないですよ。ただ、こちらもベストは尽くしてきたので、どんな結果になっても悔いはないです」と藤原智行調教師。どっしりと構えたその姿勢は、そのままスピーディキックの走りに反映された。

外枠からスムーズに3、4番手につけた御神本訓史騎手とスピーディキック。スローペースをしっかりと折り合い、好位をキープしたままスタンド前を通過する。2周目の向正面でペースが上がった際も即座に対応。ティーズハクアとともに3コーナーで抜け出すと、最後の直線でこれを突き放し、6馬身差の圧勝劇を演じた。

まぎれの少ない外枠もあって、絵に描いたような危なげのない勝利。御神本騎手も「スタートもあまり遅れることなくスムーズに反応してくれたので、自然とあの位置に収まったし、道中も楽な感じで追走できました」と涼しい顔で話し、「関東オークスは悔しい思いをしましたが、勝った馬がその後JBCレディスクラシックで2着に好走しているので、スピーディキックも来年はもっと大きいところを目指せるように頑張ってくれると思います」と先々の期待を口にした。

藤原調教師も「いつも御神本騎手には『好きに乗ってこい、勝ってこい』としか言わないですからね。スタッフも一生懸命に仕上げてくれました」。自身は益田競馬場で育ち、担当の末田秀行厩務員も益田の元騎手。鞍上の御神本騎手も含めた“チーム益田”が、地方競馬を代表する3歳女王を育て上げた。

今後は短期放牧を経て、年末の東京シンデレラマイル(大井)を目指す予定。「一度古馬と戦ってみて、そこでどういった競馬をしてくれるかですね。その走り次第で、年明けは交流やJRAのレースを視野に入れていきたいと思っています」と藤原調教師はさらなる飛躍へ向け、着実なステップを踏む心づもり。年長馬を相手にどんな走りを見せるか注目だ。

2着にはティーズハクアが入線。出遅れなどでちぐはぐなレースが続いていたが、今回はスムーズに2番手を追走して粘り込み、桜花賞2着の実力を示した。達城龍次騎手が「世代が悪かった」と話したように、スピーディキックと生まれた年が違えばタイトルにも手が届いていたはずだが、競走生活はまだこれから。馬体面の成長も見られるだけに、今後もチャンスが巡ってくるはずだ。

取材・文 大貫師男

写真 早川範雄(いちかんぽ)

Comment

御神本訓史騎手

牡馬にも勝ってトップクラスの実力があるので、自信を持って騎乗しました。ティーズハクアは桜花賞で結果を残しているので、リラックスさせないよう、プレッシャーをかけながら追走しました。1頭になってフワッとしたのでステッキを入れましたが、反応は良かったです。最近では一番いい仕上がりでした。

藤原智行調教師

4、5番手くらいになるかなと思っていましたが、イメージ通りの競馬になりましたね。関東オークス後はここを目標に、前走の戸塚記念以上に仕上がっていたので、いい競馬ができると思っていました。ひとまず次走予定の東京シンデレラマイルで古馬と戦って、この距離でどういった競馬をしてくれるかでしょう。