web furlong ウエブハロン

地方競馬のオンライン情報誌ウェブハロンPresented by National Association of Racing

Copyright(C) 1998-NAR.All Rights Reserved.

第55回ハイセイコー記念

スローの流れで早めの仕掛け
  一騎打ち制し無傷の4連勝

2020年に南関東S1に昇格したハイセイコー記念。12月の全日本2歳優駿JpnIや、翌春に向けて更に注目度が高まったこのレースに今年は10頭が参戦した。

1番人気はゴールドジュニアの優勝馬リベイクフルシティで単勝2.9倍。北海道所属時に重賞で3着2回があり、ゴールドジュニアでは半馬身差の2着だったポリゴンウェイヴが3.1倍。デビューから3連勝で重賞初挑戦のマンダリンヒーローが4.6倍と続いた。

ゲートが開くと、好スタートを切ったポリゴンウェイヴが左右を確認しながら先手を取った。2番手にナチュラルターン、好位にトワシュトラールとマイブー、そしてリベイクフルシティが続いた。

序盤はかなりのスローペースで先行集団はぎゅっと固まった状態。その流れを変えようと動いたのが中団にいたマンダリンヒーローだ。「このままでは前に届かないと思ったので行きました」(矢野貴之騎手)と向正面半ばから一気に2番手まで進出した。

直線に入ると、懸命に先頭をキープするポリゴンウェイヴと、それを追いかけるマンダリンヒーローとの一騎打ちに。最後はマンダリンヒーローが捉えきってクビ差で接戦を制した。4馬身離れた3着には直線じわじわと脚を伸ばした5番人気のピノホホッアが入った。

レース後、各騎手からは、スローの流れに苦戦したというコメントが多く聞かれた。

そのペースを作ったのがポリゴンウェイヴの左海誠二騎手だ。「押し出されるように逃げる形になってしまいました。前走と同じ負け方で悔しい。馬はまだ若いし、緩いので芯が入ってくれば2段くらいは上がりますね。クラシックの頃に良くなるんじゃないかな、まあ俺は乗れませんけどね」

左海騎手は調教師試験に合格し、今月いっぱいで騎手を引退する。このレースがおそらく重賞ラスト騎乗とのことで「(勝って)締めたかったな」と呟いた。それでも、これまで幾度となくライバルたちを翻弄してきた“逃げの左海”の姿を最後まで見せてくれた。

1番人気のリベイクフルシティは直線伸びてはいたものの、前走のような豪脚は発揮できず5着に敗れた。「残念でした。ペースが遅すぎてポケットに入ってしまい動けませんでした。砂を被って怯んでしまい厳しかったです。砂を被らずスムーズだったら良い勝負になっていたかもしれません」と和田譲治騎手はコメントした。

マンダリンヒーローは無傷の4連勝で見事に重賞初制覇。「実績馬もいるメンバーでしたが、今まで勝ってきた内容が素晴らしかったので非常に楽しみにしていました。期待に応えてくれてとても嬉しいです」と自身の好騎乗も光った矢野騎手。実はこの日の第4レースにマンダリンヒーローと同じ厩舎の馬に騎乗し、スタート直後に落馬するアクシデントがあった。

藤田輝信調教師は「自分の厩舎の馬でケガさせてしまい、体が痛くないはずないのに一生懸命に乗ってくれて勝たせてくれて感動しました。この馬には調教にも乗ってもらっていて、その感触から矢野騎手も勝てる自信があったんじゃないかと思います。本当にすごい騎手です」と感心しきりだった。

マンダリンヒーローの次走については、休みを取って雲取賞から始動が有力だが、全日本2歳優駿JpnIまたはニューイヤーカップという可能性もあり、馬の様子などを見ながら考えていきたいとのことだ。

取材・文秋田奈津子

写真早川範雄(いちかんぽ)

Comment

矢野貴之騎手

3コーナーで逃げ馬と少し離れたらフワフワしてしまい進んでいかなかったのですが、射程圏に捉えると前を交わすんだという強い気持ちがありました。相手もしぶといのでまたやり返されるかもと心配でしたが、よく凌いでくれましたね。まだまだ子供っぽいところがあるのでこれからの成長が楽しみです。

藤田輝信調教師

最初の3ハロンが38秒以上かかっていて遅いなと思って見ていたら、矢野騎手が動いたので最後までもつか心配でした。でもいつものように勝負根性を見せてくれて、最後は差し切ってくれて嬉しかったです。トビが大きい馬なので直線が長い方がいいですし、1800メートルくらいが合っていると思います。