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第68回クイーン賞JpnIII

外枠から一気呵成に先頭へ
  後続を引き離し重賞初制覇

船橋競馬今年最後の重賞は牝馬のダートグレード、クイーン賞JpnIII。ちょうどこの日は、翌日から調教師に転身する地元の左海誠二騎手が最後の騎乗となった。第1レース前に実施された引退報告会には開門と同時に多くのファンが集まり、感謝とエールを送った。左海騎手はこの日3勝をあげ、船橋の名手としての勝負強さを最後まで見せてくれた。

左海騎手の騎乗はなかったが、クイーン賞JpnIIIには中央、地方から14頭の牝馬たちが集結した。JBCレディスクラシックJpnI・3着から巻き返しを狙う女王ショウナンナデシコと、同2着の3歳馬グランブリッジが単勝2.2倍で人気を分け合い(票数の差で前者が1番人気)、3番人気は近走早めのマクリで見せ場をつくってきたテリオスベルで5.1倍。4番人気は初ダートのホウオウピースフルで9.8倍とJRA勢が人気を集めた。

ゲートが開くと、グランブリッジ、浦和のリネンファッション、ショウナンナデシコが並んで先行争い。そこに大外枠のテリオスベルが早めに迫り、その勢いのまま向正面に入ったところで先手を奪った。追いかけるようにショウナンナデシコが2番手で、リネンファッション、グランブリッジが続いた。ホウオウピースフルが離れた5番手を追走し、縦長の展開となった。

4コーナー手前からテリオスベルが後続を引き離しにかかり、直線に入ると手応えが怪しくなったショウナンナデシコをグランブリッジが交わして前を懸命に追った。しかしテリオスベルは止まらず、最後まで力強く駆け抜け2馬身差で勝利を手にした。2着グランブリッジから7馬身差の3着にショウナンナデシコが入った。

このレースは2019年から21年まで3年連続で地方馬が優勝。また地方の軽量馬が2、3着に入るケースが多かったのだが、今年は上位人気のJRA3頭で決着し3連複の配当は180円となった。

勝ったテリオスベルはこれが嬉しい重賞初制覇。今年の夏から地方のダートグレードに参戦し、中団あたりから向正面で一気に進出するというレースを続けていたが、今回はさらに早めに仕掛けてレースを作った。

「船橋競馬場は1コーナーまでに距離があるし、今日は念願の外枠だったので前の方に行こうと話していて、良い展開だと思って見ていました」と作戦通りだったという田島俊明調教師。現状ではこのレース展開がベストだということで「個性があっていいですよね。“個性派のベルさん”です」とにっこり。次走はTCK女王盃JpnIIIが有力とのことで、来年もダート牝馬戦線を盛り上げてくれそうだ。

2着グランブリッジの福永祐一騎手は「前を見ながら良い流れでしたが、前が止まらなかったですね。最後まで伸びてはいたのですが……」とコメントした。

ショウナンナデシコはこれで3戦連続、1番人気で3着という結果に。「この馬にしては返し馬も乗りやすすぎたし、春先に比べるとがんばりきれていない感じ。脚なのか、気持ちなのか、とにかく結果がかみ合わないです。難しいですね」と吉田隼人騎手は歯がゆい思いを口にした。

地方馬最先着は5着のリネンファッション。鞍上の酒井忍騎手は左海騎手と同じく、調教師転身のためこの日がラスト騎乗。「先手を取れればよかったかもしれないですね。自分の競馬ができればもっとやれる馬ですよ」と振り返り、最後の重賞騎乗だったことについて聞かれると「いつもと同じ気持ちで乗りましたよ」と微笑んだ。

取材・文 秋田奈津子

写真 早川範雄(いちかんぽ)

Comment

江田照男騎手

外枠を引きましたし、オーナーも頑張って行ってくれと話していたのでハナを主張しました。スタートは速くない馬ですが持ち味は持久力があるということ。道中もすごく良い走りで手応えも良く、馬を信じて乗りました。久しぶりに船橋で大きなタイトルを獲ることができてとても嬉しいです。

田島俊明調教師

惜しい競馬が続いていたので1つ重賞を獲らせてあげたいと思っていました。前走から大きな疲れもなくいつも通り。スタートの1、2歩目が進んでいかないので、揉まれることなく位置が取れる外枠が理想です。牡馬相手でも走ってはいますがローテーション的には牝馬ダートグレードが中心になると思います。