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第22回名古屋グランプリJpnII

直線鋭進しハナ差とらえる
  若き鞍上とともに飛躍期す

昨年まではダートグレードとして最長距離の2500メートルで行われていた名古屋グランプリJpnIIが、今年4月の弥富市への競馬場移転に伴い、2100メートル戦として装いを新たにした。

旧競馬場での最後のダートグレード・名古屋大賞典JpnIIIを勝ったクリンチャーがここにも参戦。宮本博調教師は名古屋にゆかりを感じており、レース前は「夏の休養明けはいま一つのタイプなんですけど、寒い季節はいい馬。新競馬場でも勝ちたいですね」と気合いたっぷり。JRA菊花賞GI・2着で、4歳時には凱旋門賞GIなどフランスへ遠征した馬も8歳になり、今回のJRA勢では最年長での出走となった。

対して若さと勢いがあるのは3歳のペイシャエス。ユニコーンステークスGIIIで重賞初制覇を果たすと、この秋はJBCクラシックJpnIで3着に食い込むなど古馬相手でも頭角を現していた。また、鞍上の菅原明良騎手もデビュー4年目の今年は重賞3勝と、勢いのある若手だ。

人に勢いがあるのはヴァンヤールに騎乗する荻野極騎手もそう。今秋はスプリンターズステークスをジャンダルムで勝ち、GI初制覇を果たした。

対する地方馬はセイカメテオポリス(大井)が地方勢としては最も人気を集める単勝6番人気。2走前の白山大賞典JpnIIIは「色気を持って参戦したんですけど、出遅れてしまって」と渡邉和雄調教師。続けて「今日は道中、いくらかでもついていけたら」と展望を話すと、新・名古屋競馬場の重賞は5戦4勝と驚異の成績を誇る鞍上・吉原寛人騎手とじっくりと作戦会議を行った。

ゲートが開き、しばらくすると「あの作戦会議はこういうことだったのか」と膝を打った。というのも、近走は差す競馬が多かったセイカメテオポリスが、内から逃げの手に出たのだ。

レースはゆったりと流れたが、そうなるとJRAの騎手も黙ってはいない。向正面に入るなりラーゴムと鮫島克駿騎手が一気に内からマクりをかけて先頭を奪取。さらに外からじわりとヴァンヤールが迫ると、楽な手応えで4コーナーで先頭に並びかけた。直線ではそこに外からペイシャエスが一歩ずつ迫ると、2頭は馬体を併せてゴール。写真判定の末、1着にはペイシャエスの馬番号が灯った。

それを見た小西一男調教師は「久々に力が入りました。ゴールの瞬間はギリギリ届いたかな、と感じました」と喜んだ。

対してハナ差2着ヴァンヤールの庄野靖志調教師は「勝ったと思いました」と膝から崩れ落ちた。同馬はJRA未勝利で名古屋に移籍し、2戦2勝でJRA再転入を果たした経歴を持ち、名古屋時代に管理した今津博之調教師も「正直、勝てるんじゃないかと思っていました。ここにいた時も抜けた能力がありました」と応援していた。

3馬身離れた3着は向正面で動いたラーゴム。「あそこにいても良さが出ないと感じ、思い切って競馬をしました」と話した鮫島騎手は、レース前に馬場を歩いて何度も内の砂の深さを確認しており、ギリギリ使えると判断してインから上がっていったのだろう。

4着ケイアイパープルは「調子のいい時のようなグッとくる感じがないままでした」(藤岡康太騎手)、5着はクリンチャーで、地方馬最先着は6着のタニノタビト。「もう1列前で競馬がしたかったですけど、そのうち力をつけてくると思います」と岡部誠騎手は話し、早めにマクられて厳しい展開となったセイカメテオポリスは7着だった。

4年前に3歳でこのレースを制したチュウワウィザードは、その後GI/JpnI馬に上りつめており、同じく3歳のペイシャエスにも大きな期待が寄せられる。

取材・文大恵陽子

写真岡田友貴(いちかんぽ)

Comment

菅原明良騎手

向正面でペースが上がって、直線も短いので早めに動かしました。終始手応えが怪しく、持ったままの相手に対し、こちらは促しながらでしたが、ギリギリ交わしてくれました。まだ3歳で上積みもあると思います。さらに成長できるでしょうし、GIの舞台でも結果を残せるよう、僕も精進したいです。

小西一男調教師

東京大賞典に出走したかったですが、賞金的に厳しそうだったのでこちらに切り替えました。長い距離はいいですが、深いダートが心配で、今日も追走にちょっとモタついていました。最初の頃は芝を使ってみたいと思うような馬で、今後は力のいるダートをこなせるよう、パワーアップできればと思います。