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ヤングジョッキーズシリーズ FR 名古屋

難しいコース判断が明暗
  JRA小林凌大騎手が2連勝

ヤングジョッキーズシリーズのファイナルラウンドはこれまで年末に実施されてきたが、6回目となる今年は開催時期が1週間ほど繰り上がり、金曜日が名古屋競馬場、土曜日がJRA中京競馬場というスケジュール。ファイナルラウンドに進める騎手は合計16名のため、フルゲートが12頭の名古屋競馬場では延べ32回の騎乗数への対応として、第1戦が10頭、第2戦と第3戦が11頭立てで、各騎手はそのうち2戦に騎乗する。

しかしながら、今年4月に移転してオープンした名古屋競馬場は、地元の騎手でもいまだに「むずかしい」という声が多く聞かれるコース。良馬場のこの日は内ラチから5メートルほどの範囲に蹄跡がほとんどつかない状況だった。地元愛知の浅野皓大騎手以外でコース経験がもっとも多いのは角田大河騎手(JRA)の5回で、10名が初騎乗。集合写真の撮影後は多くの騎手がパトロールビデオの画面に見入ったり、地元の騎手にアドバイスを求めたりしていた。

とはいえ、それにこだわりすぎた騎手も多かった。第1戦は好スタートを切った最内枠の泉谷楓真騎手(JRA)が一旦は先頭に立って馬場の中央に誘導したが、外から多くの馬に来られて位置取りを下げ、結果は最下位。

その反面、大外枠の水沼元輝騎手(JRA)はスムーズな形で先手を取った。

ただ、水沼騎手が通ったのは内ラチから3メートルほどの場所。そのほかの9名は内ラチからかなり離れたところを通っていた。普段の名古屋競馬場のレースからすると、水沼騎手は内を回りすぎで、そのほかの騎手は外を回りすぎ。結果としては水沼騎手が逃げ切ったが、勝ち馬を管理する沖田明子調教師は「あんな場所を通るから、最後までヒヤヒヤでしたよ」と苦笑いだった。

それでも2着以下に終わった騎手は首をかしげる姿が目立った。3/4馬身差で2着の大山龍太郎騎手(兵庫)は「もうワンテンポ早く仕掛けていれば」と話し、8着だった野畑凌騎手(川崎)は「(水沼騎手が通った)あの場所がいいんですかね」と、納得がいかない表情。3着には後方から伸びてきた永野猛蔵騎手(JRA)が入った。

ひとつレースをはさんでの第2戦は、向正面からスタートする2000メートル戦。ゲートが開くとすべての馬が内ラチから5メートル以上離れた場所をゆったりと進み、馬場を1周してスタート地点に戻ったあたりでペースが上がって、下位人気の馬たちが脱落。2周目の4コーナーでは7頭が2馬身ほどの範囲に入り、カーブを曲がり終えると横に大きく広がる形になった。

そうなると距離ロスを最小限にできた馬が有利。勝った小林凌大騎手(JRA)は、4コーナーでいちばん内側の蹄跡の上を通れたことが功を奏した。

1馬身半差2着は地元の浅野騎手。4コーナーでは前がカベになったが、最後の直線では空いたスペースをくぐり抜けるようにして浮上してきた。3/4馬身差で3着は重賞実績があるアンタエウスに騎乗した佐々木大輔騎手(JRA)。ハナ差で4着の金山昇馬騎手(佐賀)は、「もう少し追い出しを我慢してもよかったかな。3着が欲しかったなあ」と話した。それでも地元から来た応援団の姿は目に入っていたようで「声が聞こえてきました。ありがたいですね」と笑顔。同じ佐賀所属の加茂飛翔騎手も「先週、家族が応援幕を作ってくれました」と感謝していた。

すべての騎手が名古屋競馬場を経験して迎えた第3戦。第1戦と同じC級の専門紙記者選抜競走は、第1戦よりも勝ち時計が0秒9も速くなった。その要因のひとつは、スタート直後から加茂騎手と野畑騎手が先手を取りに行ったため。内枠だった加茂騎手が内を通り、野畑騎手は外側の併せ馬にならない場所を走らせた。そして3コーナーでは野畑騎手が単独先頭に立って押し切りを狙う態勢に。だがそこに、道中は中団にいた小林騎手が内側を通って伸びてきた。

それはまさに第2戦の再現。うまく立ち回った小林騎手が連勝を飾り、野畑騎手は半馬身差2着。その後ろは少し離れて、最後の直線で一気に伸びてきた川端海翼騎手(JRA)が3着。内を通った木間塚龍馬騎手(船橋)が4着に入った。

その結果に野畑騎手は「内から来られてしまって」と悔しさが感じられる表情でコメント。しかしそれを聞いていた川西毅調教師からは「うまく乗ったよ」と声がかかった。

名古屋での3戦を終え、連勝で60ポイントを獲得した小林騎手が、32ポイントの水沼騎手に圧倒的な差をつけて首位。そのあと浅野騎手が30ポイント、大山騎手が28ポイントで続いた。

そんななか、合計3ポイントだった大木天翔騎手(大井)は「今日も明日も(乗る馬が)人気がないんですよ」と肩を落としながら歩いていた。それでも10着に終わった2鞍目の第2戦では勝負どころから蹄跡がない場所を走らせて、「少しでも上に」という思いが伝わる騎乗をしていた。

取材・文浅野靖典

写真いちかんぽ(早川範雄、岡田友貴)

Comment

第1戦1着 水沼元輝騎手(JRA)

逃げるつもりはなかったのですが、スタート後に1コーナーで大外を回らされるなら逃げたほうがいいと思って行きました。後ろとは差があって、ペースが速いのかなと思っていましたが、なかなかエンジンがかからないと聞いていたので、それも考えて積極的に乗りました。トライアルラウンドに続いて勝ててうれしいです。

第2戦1着 小林凌大騎手(JRA)

道中では上位人気の馬の後ろにうまくつけることができました。2周目の向正面では外に出せなさそうなポジションになったので内を回りましたが、その場所は通っても大丈夫だろうという感じがありました。最後は横に大きく広がったので、外に出せなかったことが逆によかったのかもしれません。

第3戦1着 小林凌大騎手(JRA)

反応が鈍いタイプと聞いていて、4コーナーで逃げていた馬に並ぶまで時間がかかりましたが、併せ馬の形になってからは最後まで頑張ってくれました。第2戦に続いて内を突いたのもよかったです。でも60ポイントはまさかという感じですね。JRAはこれまで総合2位が最高成績なので、明日も頑張りたいです。