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ヤングジョッキーズシリーズ FR 中京

小林凌大騎手がJRA騎手として初優勝
  2着2回の兵庫・大山龍太郎騎手が2位

2022ヤングジョッキーズシリーズの最終戦は、土曜日の中京競馬場が舞台。前日の名古屋競馬場とはうって変わって、最高気温が7度という寒さのなかで実施された。

その観客には赤いリボンを付けた人が多数。今年は出場騎手の家族などのために、JRAが騎手ひとりあたり4名分の観覧席を用意していた。地元愛知から浅野晧大騎手の両親はもちろん、加藤聡一騎手や沖田明子調教師などが来場。中京競馬場の乗馬苑に通っていた野畑凌騎手(川崎)の母親も来ていた。佐賀からの応援団も前日に続いて姿を見せ、騎手紹介式のあとのスタンド前では話の輪が広がっていた。

騎手紹介式のあとは、ときおり雨が降る空模様。第1戦は芝2000メートルの1勝クラスで、2走前の同クラスで僅差2着だった馬に騎乗する小林凌大騎手(JRA)が単勝2.1倍の1番人気に支持された。2番人気は木間塚龍馬騎手(船橋)が4.5倍で、野畑騎手が7.5倍、及川烈騎手(浦和)が9.2倍と続いた。

しかし上位人気に推された地方所属の3名のなかで、JRAでの騎乗経験があるのは木間塚騎手だけ。伏兵多数で騎手の半数が不慣れという一戦は、川端海翼騎手(JRA)の大逃げで始まった。

そのスピードは衰えず、2コーナーでは先頭から最後方まで20馬身以上はあろうかという縦長。2番手には及川騎手がつけて、3番手は大木天翔騎手(大井)。そのあとは少し離れて永野猛蔵騎手(JRA)などが続いた。

ただ、川端騎手が作った前半1000メートルは59秒1というハイペース。中団につけていた1番人気の小林騎手が差し切って勝利。4番手から2着に入った永野騎手も、うまく流れに乗ったという騎乗だった。

一方、2番人気の木間塚騎手と3番人気の野畑騎手は、2コーナーでは最後方に近い位置。そこからしぶとく差を詰めてきたが、野畑騎手が6着で木間塚騎手が7着。及川騎手は逃げ馬とともに失速して10着だった。

そんななか、単勝127.4倍の13番人気馬で3着に粘った大木騎手の騎乗には光るものがあった。「速いペースではないと思いましたし、勝てるかもというくらいでしたが、最後の直線の坂はきつかったです。でも初めての芝は楽しかった」と満足そう。続く4着も15番人気馬(単勝194.1倍)で離れた4番手追走から粘った浅野騎手。「前に行ってくれという注文通りの競馬ができたと思います」と話した。

その結果を喜んでいたのが浅野騎手の父。「パドックでは野畑騎手の馬が良さそうと思ったんですが」と言いつつも笑顔があふれた。また複雑な表情で見ていたのは川崎の佐藤博紀調教師。所属する野畑騎手の奮闘を願って第2戦のパドックに足を運ぶと、先輩の中越琉世騎手や、野畑騎手と同期の小林捺花騎手などの姿があった。騎乗馬にまたがったところで川崎からの熱い声援を受けた野畑騎手は、笑いをこらえきれないまま地下馬道に向かっていった。

第2戦はダート1400メートルの2勝クラス。今年の優勝者はこの時点で90ポイントを獲得した小林騎手で確定していたが、表彰台に上がれる権利はまだ残っている。ただ、第2戦は出走馬に力量差がある組み合わせ。3番人気馬に騎乗した泉谷楓真騎手(JRA)が好位追走から抜け出して4馬身差で勝利をおさめた。

そのなかで目立ったのが1番人気馬に騎乗した大山龍太郎騎手(兵庫)。2着と3着が、先行争いをした川端騎手、永島まなみ騎手(JRA)の順で決したかと思われたところ、大山騎手が馬場の真ん中を通って一気に伸び、川端騎手をクビ差交わして2着に上がった。

その姿に大喜びしていたのが大山騎手の祖父。レース直後に佐賀の応援団のひとりが得点を計算して、大山騎手が49ポイントで2位と判明すると「これはすぐに帰れないですな」と笑顔になった。

3位は44ポイントで永野騎手。浅野騎手は第2戦の着順によっては2位の可能性があったが16着で5位。「あそこで引いたらダメだろう」と、浅野騎手の父は苦笑いしていた。

それにしても小林騎手は4戦のうち3戦で勝利を挙げ、ファイナルラウンドでは過去最高の91点を獲得。もっとも目立つ成績を残した。2位の大山騎手は第2戦が終わった直後に「反省点が多くて、2位でもあまりうれしくないです」と話したが、祖父が喜んでいたことを伝えると「パドックではみんなの顔がよく見えて、その人たちのためにも頑張ろうという気持ちになりました。1位が(得点的に)抜けていたので、2位でも良かったのかな」と気を取り直していた。

取材・文浅野靖典

写真岡田友貴(いちかんぽ)

Comment

総合優勝 小林凌大騎手(JRA)

トライアルラウンドで2勝、そしてファイナルラウンドで3勝できて、馬には感謝しかないですね。今日の1戦目は前が止まることを予想して、馬のペースを守って最後は芝がきれいなところにうまく出せました。JRAの所属騎手で初めての優勝が僕であったことを、とてもうれしく思います。

総合2位 大山龍太郎騎手(兵庫)

最初から最後まで2着が多くて、悔しい気持ちのほうが強いです。自分が取りたい位置や進路が取れないことが多くて、もっと予習しておけばよかったというのが反省点です。でも今日の第2戦では自分らしい乗りかたができたと思います。このシリーズは戸惑うこともありましたが、とても勉強になりました。

第3戦1着 永野猛蔵騎手(JRA)

悔しさが残るレースもあるんですが、表彰台に上がれたことをとてもうれしく思います。今日の第1戦は気合が入っている騎手が多いというなかでしたが、馬のペースを守って走らせることができました。これからも常に、騎乗馬にとってベストな形でレースができるように頑張ります。