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第68回東京大賞典GI

末脚勝負で直線鮮やかに抜け出す
  ダート転向重賞初挑戦でGI制覇

昨年の東京大賞典GIはオメガパフュームが4連覇を達成。それを最後に種牡馬入りするとの報道が出たものの現役続行を選んで5連覇を目指したが、11月6日のみやこステークスGIIIでの3着を最後に引退。昨年2着のクリンチャーも12月8日の名古屋グランプリJpnIIで現役を退くことになった。

それもあって、今年の出走馬14頭のなかで昨年に続く出走となった馬はゼロ。東京大賞典GIの経験があるのも一昨年の2着馬カジノフォンテンだけというメンバー構成を見て、1月3日に川崎競馬場で行われる報知オールスターカップから回ってきた馬もいた。

そのような顔ぶれなら、今年の帝王賞JpnIを制したメイショウハリオに人気が集まるのは当然で、その単勝オッズは2.3倍。2番人気にはダートに転じて4戦3勝のウシュバテソーロが4.3倍と支持を集め、今年のみやこステークスGIIIを11番人気で制したサンライズホープが5.2倍で3番人気。今年のジャパンダートダービーJpnIの勝ち馬ノットゥルノが7.1倍で続いた。

ただ、出走した14頭で今年の秋以降に、逃げ先行で勝利を挙げたのはライトウォーリア、アトミックフォース、ラッキードリームだけ。

ゲートが開くと大外枠のラッキードリームが好スタートを決めたが、内枠の各馬も先手を取りに行き、スタートから200メートルあたりでショウナンナデシコが先頭に立ち、カジノフォンテンが少し離れた2番手。直後をノットゥルノとアトミックフォースが進む形で隊列が定まった。

その流れは明らかに遅いと感じるもので、最初の600メートルが37秒3。同じく良馬場だった昨年が35秒2だから、その遅さは際立っていた。その後もペースは上がらず、1000メートルの通過タイムは昨年より2秒0も遅い63秒5だった。

ただ、瞬発力勝負になった一昨年に計時された、前半1000メートルの64秒9よりは2コーナーあたりで流れが緩まなかった形。それでも向正面の中ほどで後方3番手にいたリンゾウチャネルが勝負をかけて動き出した。すると同じような位置にいたサンライズホープが内側から馬体を併せて上昇して、3コーナー手前で先頭に並んだ。そのあたりからメイショウハリオやウシュバテソーロなども動き出し、最後の直線の入口では粘り込みを図るショウナンナデシコをサンライズホープが追い、そこにメイショウハリオとウシュバテソーロが加わってきた。

そのなかでひときわ目立つ勢いを見せたのがウシュバテソーロ。残り200メートルあたりで先頭に立ち、2着に1馬身3/4の差をつけて、重賞初挑戦でのGIタイトル獲得となった。

2着には先行して4コーナーまで脚を溜めていたノットゥルノ。メイショウハリオは伸び脚ひと息で、2着から2馬身半の差で3着となった。

向正面でレースを動かしたリンゾウチャネルの安藤洋一騎手は、結果は13着でも一発を狙った騎乗を終えてサバサバとした表情。逆に同馬を追いかける選択をしたサンライズホープの幸英明騎手は「ペースが遅くて、まくっていった馬についていったのが裏目に出ました」と残念そう。対してメイショウハリオの濱中俊騎手は「まくってくる馬をやりすごして、最後の直線でもいい手応えがありましたが、相手のほうが上だったかな」と振り返った。

そうなると、ノットゥルノの2着は追い出しを我慢した武豊騎手の好判断がもたらしたものといえそう。それをウシュバテソーロは上回ったのだから、今後の活躍が楽しみになる。

ただ、管理する高木登調教師は「夏に弱いので……」と思案顔。確かにウシュバテソーロは6月から9月までの間には3着が1回あるだけだ。東京大賞典GIはサウジアラビアやドバイにつながる扉でもあるが、そこへの挑戦は厳しいのかもしれない。ただ、この先にもダートのビッグレースはいくつもある。新たな王者がどういった蹄跡を刻んでいくのか、楽しみにしたい。

取材・文浅野靖典

写真いちかんぽ(早川範雄、築田純)

Comment

横山和生騎手

ある程度のポジションは欲しいと考えていたので、(後方からの追い込みという)いつもとは違う形になりました。ペースが少し遅かったですが、最後の直線では勝ったときと同じ雰囲気だったので、あとは後ろから来ないでくれという気持ちでした。ダートでこの成績なので、これからも順調にいってほしいです。

高木登調教師

ダートで底を見せていない点と、今の勢いと調子の良さなら、と考えて挑戦することにしました。道中ではスローペースで折り合いに苦労しているように見えましたが、最後は伸びてくれると思っていました。それでも最後は力が入りましたね。このあとは馬の様子を見て、予定を決めるつもりです。