web furlong ウエブハロン

地方競馬のオンライン情報誌ウェブハロンPresented by National Association of Racing

Copyright(C) 1998-NAR.All Rights Reserved.

第16回東京シンデレラマイル

抜群の脚色で直線突き抜ける
  3歳二冠馬が古馬初対戦で圧倒

南関東の牝馬三冠では、今年のスピーディキックで4年連続二冠馬が誕生。2019年トーセンガーネット、20年アクアリーブル、21年ケラススヴィアは、三冠目の関東オークスJpnIIではいずれも2着もしくは3着に好走し、惜しくも三冠は逃したとはいえ、JRA勢と互角の能力は見せた。しかしその3頭ともが、二冠目の東京プリンセス賞のあと勝ち星がないまま引退。3歳春の時点でのトップレベルの戦いは、それほど消耗が激しいものなのかもしれない。

スピーディキックも関東オークスJpnIIでは1番人気に支持されるも3着に敗れていたが、秋初戦となった戸塚記念では牡馬相手に3馬身差の完勝。単勝1.2倍の断然人気に支持されたロジータ記念も当然のように6馬身差の圧勝。そして今回、古馬初対戦となる東京シンデレラマイルでも単勝1.3倍という圧倒的な支持を受けた。

対抗勢力と目されたのは、牝馬オープンの準重賞・ネモフィラ賞から東京シンデレラマイルトライアルを連勝して臨んできたセパヌイールで単勝4.6倍。そしてこのレース3連覇がかかるダノンレジーナが6.7倍。以下は単勝20倍以上で、3頭に期待が集まった。

スタートしての1コーナーでは前4頭が競り合う形となって、先頭を取りきったのは、その4頭では最内4番枠のダノンレジーナ。セパヌイール、スピーディキックは、離れた5番手の集団を追走した。

向正面では縦長となって、中団の内目を進んでいたスピーディキックだったが、3コーナー過ぎで外に持ち出されると一気に進出。4コーナーでは「来たぞ!来たぞ!外からスピーディキック」という実況とともに抜群の脚色で前をとらえにかかる姿がビジョンに映し出されると、ファンからワッと歓声が上がった。

直線を向いても先頭はダノンレジーナだったが、スピーディキックは並ぶ間もなく交わし去ると、あっという間に後続を置き去りにした。道中後方を追走していたトップザビルも直線大外からの伸びが目立ったが、スピーディキックはこれに3馬身半差をつけての完勝。当レース16回の歴史で、3歳馬は14年ノットオーソリティ以来2頭目の勝利となった。

一方セパヌイールは、4コーナーラチ沿いから勝ち馬と同じようなタイミングで追い出され、直線では先行勢を楽に交わしたものの、2着トップザビルに1馬身差の3着。「1コーナーまで理想的な流れだったんですけど、道中で動かされたのと、勝ち馬のキレが想像以上でした」と矢野貴之騎手。直線失速して9着だったダノンレジーナはこれで引退、繁殖入りとなる。

スピーディキックが、過去3年の二冠牝馬と異なるのは、3歳初戦が一冠目の浦和・桜花賞だったこと。管理する藤原智行調教師は、「ダメにしたくないというのが一番。目標のレースを決めるのではなく、2カ月くらいの間隔で使えるレースを選んでいく」という。

近年、中央競馬でも3歳になってステップレースを使わずクラシック直行という馬の活躍が目立っているが、調教技術の発達した現在、素質馬はできるだけ消耗は少なく、ビッグタイトルを狙うというのが主流となってきているようだ。

明けて4歳のスピーディキックは、中央挑戦も視野にあるという。

取材・文 斎藤修

写真 岡田友貴(いちかんぽ)

Comment

御神本訓史騎手

いいスタートを切って道中もリラックスして走っていたんですけど、古馬とは初めてだったので、この馬のペースと、気分を重視しながら追走しました。矢野騎手の馬(セパヌイール)の手応えがあまりよくなかったので、3コーナーから切り替えて外に出したら抜群の切れ味で、来年が楽しみになりました。

藤原智行調教師

輸送したあと発汗もなく、今回は一番落ちついている感じで、ずいぶん大人になったのかなと思います。古馬との戦いで、道中どういうポジションになるか予想がつかなかったんですけど、うまくスタートも出て中団くらいにはつけたので、あとはスピーディキックの力を出せればと思って見ていました。