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第46回東京2歳優駿牝馬

一気に他馬を置き去り4馬身差
  2着ボヌールバローズがGDJ優勝

2歳牝馬の一戦ということもあり、もともと力比較が難しかったこのレースだが、近年はその傾向が顕著になってきた。ホッカイドウからの遠征、転入や、全国的な体系整備だけでなく、南関東においても2歳牝馬の特別戦が認知され、これまでのような画一的なローテーションではない馬が増えてきたのが、その一因となっている。

今年もそれを裏付けるように、上位人気は割れ加減。3.2倍の1番人気に推されたのは、11月のデビュー以来2戦2勝、重賞初挑戦のアレナル(大井)。4.5倍でホッカイドウからの転入2戦目を迎えるメイドイットマム(船橋)が続き、3番人気には5.0倍で転入初戦のスギノプリンセス(川崎)となった。例年ならローレル賞を勝った川崎のマカゼ(5番人気、11.1倍)がこの中に入ってきても不思議ではなく、スギノプリンセスもブロッサムカップ勝ちの実績を見れば、もう少し人気になってもいいはず。それだけ多彩なメンバーが顔をそろえたということであり、一筋縄ではいかない雰囲気が漂っていた。

先手を奪ったのは、前走で笠松のラブミーチャン記念を勝ったボヌールバローズ(大井)。その外にエイシンレア(浦和)がつけたが、前半3ハロンは37秒6とやや遅めのペース。そんな流れをインの5、6番手でじっくりためていたのがメイドイットマムだった。向正面の半ば過ぎで軽く外に持ち出して1頭をかわすと、再度インに潜り込んで4番手まで進出。4コーナーでは先頭を走るボヌールバローズの直後につけた。

そして迎えた大井内回りの4コーナー出口。定石どおりに馬群が広がったところで、メイドイットマムの前後左右に大きなスペースができた。鞍上の本橋孝太騎手が外へ進路をとり、左ステッキを入れると、メイドイットマムは一気に脚を伸ばして他馬を置き去りにした。つけた着差は4馬身。圧倒的な走りで2歳女王の座に就いた。

ホッカイドウ在籍時はJRA認定フレッシュチャレンジの1勝止まりだったが、エーデルワイス賞JpnIIIでも5着に食い込むなど、随所で力を見せていた。前走の特別戦で1500メートルをクリアできたのが大きく、走り慣れた右回りで才能が爆発。本橋騎手も「最後は必死だったので、こんなに着差がついていると思わなかったですね」と、圧巻の勝ちっぷりに目を丸くした。

管理する石井勝男調教師は2008年のシアンモア記念(ノムラリューオー)以来、14年ぶりの重賞制覇で、南関東のタイトルは初めて。「やっと勝てましたね。輸送でも落ち着きがあったし、成長が感じられました」と目元に笑みを浮かべる。メイドイットマムは、今後はいったんリフレッシュ放牧に出し、浦和のユングフラウ賞に向かう予定。仕上がり次第で桜花賞(浦和)に直行する可能性も口にした。

2着にはボヌールバローズが逃げ粘った。笠松遠征からのローテーションで、この馬も力比較の難しい1頭だったが、10番人気を覆して能力の高さを証明。笹川翼騎手は「スタートが良かったので逃げました。4コーナーでは勝てると思ったけど、最後は決め手の差が出ましたね」と肩を落としたが、追い上げてきたサーフズアップ(船橋)の追撃をハナ差でしのぎ切り、見どころ十分の走りを見せた。この2着によりグランダム・ジャパンのポイントも加算。合計30ポイントで総合優勝を果たした。

一方、1番人気に推されたアレナルは、中団から伸び切れず5着。矢野貴之騎手は「11月デビューですからね。現状ある力は出せたと思うし、いい経験になったと思います」とキャリアの差を敗因に挙げた。まだまだ成長途上であることは言うまでもなく、強敵にもまれた経験は先々に生きるはず。この一戦だけで見限ることはできない。

取材・文大貫師男

写真宮原政典(いちかんぽ)

Comment

本橋孝太騎手

インにはこだわっておらず、理想は2列目、最悪でも3列目と思っていました。スタートも決めてくれたおかげでうまく運ぶことができたし、3コーナーで抜群の反応をしてくれたので、直線は伸びるだろうと思っていました。距離が延びても良さそうですし、まだまだ楽しみが広がる馬だと思います。

石井勝男調教師

今年は重賞で2着続きでしたが、12月31日に勝つことができてうれしいです。もう1列後ろの想定でしたが、馬の調子が良かったので、いい位置につけることができました。あそこまで弾けるとは、正直なところ驚いています。南関の重賞を勝たせていただいたので、来年も積み重ねていきたいですね。