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2022ヤングジョッキーズシリーズ総括


クローズアップ

2023.01.06 (金)

ファイナルの舞台は愛知
 栄冠は初めてJRA騎手に

コロナで無観客開催が始まったのが2020年2月末のこと。あれから2年以上が経過し、入場人員の上限が設定されている競馬場もあるが、どこの競馬場でも多くのファンを迎えて開催ができるようになった。

中央の若手騎手にとっては、地方競馬での条件交流レースなども貴重な騎乗機会だが、コロナ禍の制限のもとではその機会も奪われ、しかしようやくその制限も解除された。それゆえ今年のヤングジョッキーズシリーズ・トライアルラウンド(TR)の後半では、そうした条件交流などで地方コースの経験を重ねてシリーズ参戦という騎手も増えてきていた。

2017年に始まり6年目を迎えたこのシリーズ。TR出場騎手は地方38名、JRA24名で、過去最多。東西ともJRA騎手より地方騎手のほうが人数が多いという状況で、20年以降はTRの各レースはJRA騎手より地方騎手が2名多いメンバー構成で争われれている。

さらに今回は、TRに出場した地方騎手が昨年の東西各14名から、東西各19名と一気に増えたことで、ポイントの対象となる最低限の4レースのみしか騎乗機会が得られない騎手も少なくなかった。

JRA水沼騎手・川端騎手が初勝利

TRは、2019年までは東5場、西6場で行われ、20年はコロナウイルスの蔓延によって実施されない競馬場もあり、また21年は笠松競馬が開催自粛。今年初めて、東西各6場、計12場でファイナル進出が争われた。

地方競馬では近年、南関東からデビューする騎手が多く、そのため今回のTR地方東日本は出場19名中、17名が南関東所属。その中で、東日本1位となったのは、地方東日本では唯一2勝を挙げた及川烈騎手(浦和)。今年4月のデビューで、地元南関東では苦戦したが、6月から笠松での期間限定騎乗で勝ち星を伸ばし、その経験が生かされたと思われる。東日本の最終戦となった地元・浦和第2戦で勝利すると、「久しぶりに浦和で乗って、こんなにうまくいったのでびっくりです」というコメントから成長がうかがえる。そして野畑凌騎手(川崎)が地元川崎で5・1着と健闘し、今年デビューの新人が1位、2位となった。

印象的だったのは大木天翔騎手(大井)。昨年は怪我のため不出場。1年2カ月ぶりに復帰したのが9月8日のこと。その2日前に行われた地元大井のTRには騎乗できず、船橋で1・5着、浦和では1戦のみの騎乗で3着。計3戦のみの騎乗で4位に食い込みFR進出となった。

ちなみに地方東日本のポイントでは、1位の及川騎手は78ポイントで抜けていたが、2位野畑騎手が56ポイント。そのあとは55ポイントで4人が並び、「上位の着順を得た回数の多い順に順位を決定します」という規定によって2名ずつが明暗を分けた。

地方西日本は、大山龍太郎騎手(兵庫)が佐賀で2・4着、地元園田で2・2着と、1着がなくとも断然の72ポイントを獲得してトップ通過。55ポイントで2位の金山昇馬騎手も勝ち星がなかった。ただ西日本では地方騎手の成績が悪かったわけではなく、全12戦で地方・JRAで6勝ずつと星を分けた。3位になった浅野皓大騎手(愛知)は、高知では2戦とも10着だったが、地元名古屋の1・2着で逆転。4位の加茂飛翔騎手(佐賀)は地元佐賀第2戦での勝利のほかは、5着1回、7着2回。というように、地方騎手は勝利を挙げた騎手でもそのほかの着順がいまひとつという騎手が多かった。

JRAでは、このTRでの勝利がデビュー以来の初勝利という騎手が東西それぞれ1名ずつ、FR進出を決めた。

東日本では、水沼元輝騎手が大井第2戦で初勝利。その5日後の中山でもJRA初勝利を挙げたシーンは印象的だった。水沼騎手はその後も3着2回、4着1回という成績で72ポイントをマークし、JRA東日本で1位。JRA東日本では唯一、2勝を挙げた小林凌大騎手が71ポイントで2位。今年デビューの新人では、水沼騎手ともうひとり、船橋第2戦を10番人気で勝利した佐々木大輔騎手が4位でFR進出となった。

西日本でデビュー以来の初勝利となったのは川端海翼騎手。自身のTR6戦目にして最終騎乗となった園田第2戦を7番人気で勝利。5位とはわずか1ポイント差の4位でFR進出となった。

その西日本では、佐賀、笠松で1・7・3・2着という成績で71ポイントの永島まなみ騎手が1位となり、デビューした昨年に続いて2年連続でFR進出。2位の泉谷楓真騎手は金沢、園田で3・2・1・10着。1位と2位は、7着か10着かという差だった。新人では、角田大河騎手が3位、前述の川端騎手が4位となった。

3勝の小林騎手が優勝、地方騎手も健闘

地方・JRA各8名によって争われるファイナルラウンド(FR)は、初の名古屋、中京が舞台。名古屋競馬場はフルゲート12頭のため、園田競馬場が舞台となった2020年同様、3レースが組まれ、各騎手はそのうち2レースに騎乗した。

今年4月に移転・オープンした新・名古屋競馬場は、レースハイライトでも触れられていたように、ラチ沿いの砂が深く内の数メートルを空けてレースが展開する。そのコース選択が明暗を分けた。それは騎乗技術の差だけではなく、運・不運という要素も大きかったように思われる。

名古屋第1戦は、1番人気に支持された水沼騎手が逃げ切り勝ち。第2戦は4コーナーで馬群がずらっと横に広がったところ小林騎手が内から抜け出した。第3戦でも小林騎手が好位から4コーナーで先頭に立って連勝を決めた。

そして中京第1戦の芝2000メートル戦は、川端騎手の大逃げで隊列は超縦長。そんな難しい展開でも、中団を追走した1番人気の小林騎手は落ち着いていた。4コーナーでもまだ前とは離れた10番手あたりから直線外に持ち出しての差し切り。これで名古屋から3連勝として、最終戦を待たずに総合優勝を決めた。

第2戦のダート1400メートル戦は、好位につけた泉谷騎手が直線楽な手応えのまま抜け出して完勝となった。

FRでは過去5年、地方の騎手が優勝していたが、今回は小林騎手が3勝を挙げたほか、すべて1着はJRA騎手。とはいえ地方騎手も見せ場がなかったわけでない。名古屋第1戦では、ゴール前で唯一勝ち馬を追い詰めて3/4馬身差まで迫った大山騎手が2着。第2戦の2000m戦では地元の浅野騎手が最後方追走からじっくり進め、徐々に位置取りを上げて2着。第3戦は逃げた野畑騎手が半馬身差で2着に粘った。

中京第1戦では、13番人気の大木騎手が前とは離れた3番手から直線半ば過ぎで先頭に抜け出す場面があって3着。第2戦では、1番人気の大山騎手が4コーナーを12番手で回ると直線大外を追い込み2着に入った。

FRでも2着2回だった大山騎手が2位。名古屋第1戦3着、中京第1戦2着の永野猛蔵騎手が3位となった。

FRのJRA場は、昨年までJRA開催最終日か、有馬記念前日の土曜日で、いずれにしてもGIのホープフルステークスと同日に行われていた。しかし今年は中京が舞台になったこともあり、12月第3週の土曜日に設定された。中山ではGIIIのターコイズステークスが行われていたが、GI開催と同日よりも注目度はアップしたと思われる。

斎藤修

写真いちかんぽ