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第25回黒船賞JpnIII

直線突き放し人気に応える
  成長途上もグレード4勝目

黒船賞JpnIIIはかねてから“出世レース”と言われてきた。たとえば兵庫のイグナイターは、昨年の黒船賞JpnIIIでダートグレード初制覇。かきつばた記念JpnIII(名古屋)も勝利し、マイルチャンピオンシップ南部杯JpnI(盛岡)やJBCスプリントJpnI(盛岡)でも好走を続け、NARグランプリ2022の年度代表馬に輝いた。

黒船賞JpnIIIは“リピーターの活躍が目立つレース”でもある。サクセスエナジー、ラプタス、イグナイターという3頭の黒船賞馬に加えて、昨年の2着馬ヘリオスもリピーター枠に該当する。

一方、ダートグレードを3勝しているシャマルや、JRAのオープン特別を2連勝中のケイアイドリーは高知初参戦。高知特有の深い馬場に対応できるか否かは、極めて重要なファクターとなる。

それでもシャマルは単勝2.6倍の1番人気に支持された。2番人気のイグナイターは3.0倍、3番人気のケイアイドリーは4.9倍。4番人気がヘリオスで5.8倍。5番人気がラプタスで8.8倍。拮抗したオッズが、歴代屈指の好メンバーが揃ったことを物語っていた。

逃げを打ったのは、ケイアイドリー&藤岡康太騎手。2番手がヘリオス&武豊騎手。サクセスエナジー&松山弘平騎手は3番手、イグナイター&田中学騎手が4番手を進む。シャマル&川田将雅騎手は内の5番手を追走する。

4コーナー、ケイアイドリーの脚色に陰りが見えた。そこですかさず、シャマルが内を突いて先頭に躍り出る。外からヘリオスが追いかける。イグナイターも内で懸命に食らいつく。

しかしシャマルは後続を突き放して快勝。ヘリオスが3馬身差の2着、イグナイターが3/4馬身差の3着に入った。

シャマルにとって、昨年の東京スプリントJpnIII(大井)、サマーチャンピオンJpnIII(佐賀)、テレ玉杯オーバルスプリントJpnIII(浦和)に続くダートグレード4勝目。まずまず脚抜きのよい不良馬場ではあったとはいえ、高知特有の深い馬場をクリア。しかも、シャマルを管理する松下武士調教師も、3度目のレース騎乗となった川田騎手も、「まだ良化途上」と口を揃える。シャマルはまだ5歳、今後の活躍を予感させる快勝劇だった。

「シャマルは今年、よりいいパフォーマンスを発揮してくれるだろうと思いますので、今後またこの馬が走るときに、楽しんでもらえたらと思っています」(川田騎手)

ヘリオスは2年連続の2着。武騎手はこう振り返る。

「外枠に入ったことで組み立てやすかったので、思い通りのレースはできました。馬場は高知らしい深さでしたが、ヘリオスはどこの競馬場でも走ってくれますね。いつも自分の力を出してくれます」

イグナイターは連覇を逃すも、3着は確保した。田中騎手はこう振り返る。

「スタートの一歩目から躓いてしまい、外の馬と接触してしまって、位置取りが後ろになってしまいました。勝負所でも外に出せそうで出せなかったので………悔しいです」

高知期待のガルボマンボは6着。5着ラプタスとの着差は1馬身。林謙佑騎手は言う。

「もうちょっとで5着が取れたんですけどね。ガルボマンボにとっては距離が短かったんですけど、すごく頑張ってくれました。長い距離なら、もっといい勝負ができると思います」

まだ4歳のガルボマンボにとって、強豪と戦った経験はかけがえのない糧となるだろう。

勝ったシャマルはもちろん、敗れた馬達の走りも明るい未来を感じさせる。そんな高知の大一番だった。

取材・文 井上オークス

写真 桂伸也(いちかんぽ)

Comment

川田将雅騎手

雰囲気よく4コーナーまで来ることができましたので、早めにセーフティリードをとってしまおうと、内から行くことを選択しました。レース前に『砂を被ることも今後のためにいい勉強になるのではないか』と話していましたが、結果としてそういう形の競馬になり、とても学びのあるレースになりました。

松下武士調教師

久しぶりに内枠を引いて心配していましたが、川田騎手の好騎乗もあり上手にクリアしてくれました。まだゆっくりと良化している段階でこの勝ち方をしてくれましたから、次が楽しみですね。今後レースを選択する上で、賞金を加算できたことも大きかったです。かしわ記念(船橋)を視野に入れています。