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第68回ダイオライト記念JpnII

川田騎手の判断がズバリ
  9馬身差で初タイトル

昨年11月からオーストラリア産の砂が導入された船橋競馬場。その性質について、当初は手探りだったが、どんな状況でも時計のかかるタフな馬場になりやすいことが見えてきた。加えて、内ラチ沿いが重くなりやすい傾向も顕著に出ている。そんな舞台で行われる2400メートルの長距離戦。タフなスタミナ比べに14頭が集った。

単勝1番人気に推されたのはJRAのグロリアムンディ。宝塚記念とチャンピオンズカップの両GIはともに12着に敗れたが、JpnIIのメンバーなら一枚上と目された。最内枠に入ったことで立ち回りに不安もあったが、地方のダートグレードで的確な騎乗を見せる川田将雅騎手が手綱をとることも後押しした。

スタート直後からスペースを見つけながら徐々に外へ進路を取るグロリアムンディと川田騎手。その間にJRAのメイショウフンジンやテリオスベル、船橋のキャッスルトップなどが先行争いを演じ、2400メートル戦にしては落ち着かない展開となった。

その一歩後ろの7番手で折り合いをつけたグロリアムンディは、2周目の向正面で進出を開始。団子状態となっていた先行勢をどうさばくか注目が集まったが、川田騎手はガラッとあいた内を選択すると、直線の入口で一気に先頭へ。そのままグロリアムンディは最後まで脚を伸ばし、9馬身差で重賞初制覇を飾った。

3~4コーナーで内を突いて位置取りを上げる戦法は、この開催でも何頭かが試していたが、ことごとく結果が出ておらず、やはり内ラチ沿いは重いという評価だった。とはいえ、距離のロスを最小限にして馬群をさばくには有効な手段。馬の余力と、重い馬場を走ることによるパワーロスを天秤にかけ、最良の結果に導いた川田騎手の判断は見事だった。

離れた2着にはテリオスベルが入線。これまでと同様、先頭を奪うまでに時間を要したが、それでも最後までしぶとく粘り、3着のメイショウフンジン以下を封じた。江田照男騎手は「強引な競馬になりましたし、ハナに立ってからも、だいぶつつかれましたね。それでもバテずに頑張ってくれました」と評価。このタフな馬場でも踏ん張り通したように、持ち前のスタミナは相当。引き続き牝馬路線はもちろん、牡馬相手の中~長距離でも好勝負を演じてくれるに違いない。

3着のメイショウフンジンは、昨年のマーキュリーカップJpnIII(7着)以来の地方参戦でメドの立つ走りを見せた。酒井学騎手が「自分の形で競馬ができましたし、力をつけていますね」と話したように、リズム良く先行できればダートグレードでも力は互角。小回りコースに替わればタイトル獲得のチャンスもある。

地方勢では船橋のエルデュクラージュが4着。先団を追走して、最後の直線でもテリオスベルとメイショウフンジンにしぶとく食い下がった。「状態は良かったですし、この馬場も問題なかったです。でも、最後は前を交わしたかったですね」と本田正重騎手。今年で9歳だが、ダートグレード級の力はまだまだ持ち合わせている。今回のようにリズム良く先行できれば、タイトル獲得が可能だ。

一方、2021年のJBCクラシックJpnIを制したミューチャリーは、右寛跛行により競走を中止。大事には至らなかったが、これを最後に引退することが管理する矢野義幸調教師より明らかにされた。地方所属馬としてただ一頭、JBCクラシックJpnIの称号を手にした稀代の名馬。これまでの奮闘と軌跡を称えたい。

取材・文大貫師男

写真国分智(いちかんぽ)

Comment

川田将雅騎手

走れていた頃と、結果を出すことができなかったときの差というものも話に聞いてまして、返し馬で乗ったときに、これならば大丈夫だろうなという感触を得ましたので、なんの不安もなくレースに向かっていくことができました。ここからこの馬らしく歩んでいけたらという思いです。

大久保龍志調教師

いいときの勢いは感じられなかったのですが、自分で身体を作ってきたんでしょうね。まだバラバラの走りをすることもありますが、この馬場自体は合っていると感じていましたし、レースの中盤で大丈夫だろうと思いました。今後はダートの中~長距離を中心にローテーションを考えます。