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「鉄人」佐々木竹見 7153勝の足跡(第5回)


クローズアップ

2023.3.28 (火)

NARグランプリ2022
 特別賞受賞記念企画

20回目の佐々木竹見カップジョッキーズグランプリ

NARグランプリ2022では4度目の特別賞を受賞した佐々木竹見。

2001年の現役引退から月日は流れているが、81歳になった今も矍鑠(かくしゃく)と壇上に上がった。

1度目の特別賞はNARグランプリが始まった第1回の1990年。騎手として地方競馬発展へ貢献してきたことが認められ、大井の高橋三郎騎手、オグリキャップと共に受賞した。

2度目は7000勝を達成した1998年に。

3度目は引退を発表した2000年に受賞している。

4度目となる今回は、現役引退後における後進の指導等の長年にわたる競馬界への貢献や、『佐々木竹見カップジョッキーズグランプリ』が今年1月に節目となる20回目を迎えたことによる受賞だった。

『佐々木竹見カップジョッキーズグランプリ』は中央の東西、地方競馬全国それぞれのリーディングジョッキーが集まって川崎競馬場を舞台に覇を競うジョッキーの祭典。2018年に破られるまで日本人騎手最多勝記録の7153勝(うち中央2勝)を挙げた功績を讃え、引退の翌年度から始まった。ジョッキーたちが地元のリーディングを目指す励みにもなっている。新型コロナウィルスの影響により一昨年は南関東所属のみ、昨年は中止となっていた。

1月31日に実施された第20回の優勝者は初出場だった高知の宮川実騎手。第2位は金沢の吉原寛人騎手。第3位はJRA美浦の戸崎圭太騎手で決まった。

「こうして長く続けてくれている川崎競馬場や尽力してくれる関係者には感謝しかない。今年は宮川実騎手が優勝したでしょ。奥さんの真衣ちゃんは教養センターで指導した生徒のひとりだし、子供が生まれて、賞金の使い道をミルクとおむつ代って言ってたね。なんだかこっちまで嬉しくなったよ」と佐々木は笑顔を見せた。

騎乗姿勢にこだわる理由

引退した直後には地方競馬全国協会参与に就任し、約10年間、那須の地方競馬教養センターで騎手候補生に騎乗技術を指導していたが、「自分が教えた生徒ではなくても、乗り方で気になることがあれば指摘せずにはいられない。競馬界に対する責任みたいなものかな」と佐々木。

引退してからの生活も現役当時と同じ午前4時に起床し、週に何度か自転車に乗って多摩川の河川敷にある川崎競馬の調教馬場に向かう。

「気づいたことを指摘して次にレースを見た時に修正されていれば、嬉しいし張り合いになってる。家に戻ってひと息入れたあとは競馬観戦。中央や南関東のレースはほとんど見ているよ」と言う。

佐々木が1960年に騎手デビューした当時は中央、地方共にアブミを長くし腰を落として乗る『天神乗り』が主流だった。

「その頃の南関東で活躍していた須田茂さん、荒山徳一さん。川崎では大和田明さん、佐々木吉郷さんもみんな天神乗り。中央競馬を見ていて保田隆芳さんや野平祐ちゃんが始めたアメリカンスタイルの騎乗を見て、自分でもやってみようと思った。鏡を見ながらいろいろ研究したんだ。ミナトフブキで勝った大井記念(1962年)が『モンキー乗り』で勝った初めての重賞だったね」

今では当たり前になった『モンキー乗り』だが、少なくとも南関東で初めてこのスタイルを取り入れたのは佐々木。その効果もあってか、1964年から落馬事故で大怪我を負うまで15年連続して南関東リーディングを誇った。

「姿勢にこだわるのは自分なりに研究してきたからだと思う。馬乗りはこれで満足っていうのはないから。肘を馬の首に添わせ、馬に逆らわずにふわっと乗ること。返し馬で馬の特性を感じ取ろうとする意識も大事だね」

先行して直線いったんは交わされておいて最後にまた伸びてくる。ペースを読むのが上手い佐々木に対して後輩ジョッキーからは「竹見さんの死んだふり」と言われていたという。

インタビューの最後に佐々木がこう口にした。

「先日の佐々木竹見カップで誘導馬の女性が自分の勝負服を着て馬上にいる姿を見て改めて思ったんだが、できればまた馬に乗ってみたい。誘導馬に乗って歩かせるのではなく、レースの格好をして1400mのスタート辺りからキャンターくらいで流して走るのをやってみたいよ。実は2、3年くらい前から考えていたんだ。佐々木竹見カップのパドックのあとにでもどうかな。やるとなったら3カ月くらい前から乗り運動が必要だけどね。体型はまったく変わっていないから勝負服もズボンも入るよ」。

夢を語っているようには思えなかった。

傘寿を過ぎて尚、挑戦しようとする前向きな気持ち、競馬に対する情熱は今も変わらなく熱い。(敬称略)

中川明美 

写真 いちかんぽ