第23回留守杯日高賞

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第23回留守杯日高賞

スローの逃げで直線突き放す
  地元名手が重賞初制覇に導く

留守杯日高賞がグランダム・ジャパン3歳シーズンへ指定されたのがシリーズ初年の2010年。以降、川崎3勝、北海道、岩手各2勝、大井、浦和、船橋、愛知、笠松、金沢各1勝。地方全国交流にふさわしく、各地区から優勝馬が誕生した。

昨年は船橋代表・グラーツィアが10馬身差で圧勝。当時、3歳牝馬路線を独走したスピーディキックにポイントは離されたが、シリーズ総合2位。留守杯日高賞1着のポイントも後押しした。

今年の遠征馬は5頭。すべて南関東所属で、過去2勝の北海道からはなし。開催日が昨年、一昨年より1カ月早まった影響もあったか。昨年も北海道からの参戦はなく、一概には言えないが、今シーズンのホッカイドウ競馬のスタートは4月19日。仮に来年以降も開催時期が同様であれば、遠征馬の動向も変化していくに違いない。

迎え撃つ岩手勢も牝馬、いや牡馬も含めて現3歳ナンバーワンのミニアチュールは今回、出走を見送った。消極的な選択ではなく牡馬相手のクラシックを目指すため。留守杯日高賞トライアル・あやめ賞、ダイヤモンドカップトライアル・スプリングカップを完勝したが、早々と一冠目・ダイヤモンドカップ出走を表明。

また昨年度の岩手2歳最優秀馬フジラプンツェルは伏竜ステークス11着後、岩手へ里帰りしたが、こちらもダイヤモンドカップに合わせて調整。岩手3歳トップ2が不在であれば、なおさら留守杯日高賞は遠征馬優位が動かなくなった。

案の定、予想どおりの結果となった。1着から5着まで南関東勢が独占。上位3着までも浦和・桜花賞出走馬が確保した。


レースを振り返ってみたい。主導権を握ったのはワイズゴールドだった。「いくつかの戦法を考えていたが、ゲートの出方次第では逃げようと思っていた」(山本聡哉騎手)。その外2番手にキャッツライズがつけた。フークエンジェルは中団インをキープし、間に1頭を置いてラピスアダマンスが外目を追走した。

前半600メートル38秒7。ワイズゴールドはスローに落として気分良く逃げる。それを見てフークエンジェル、ラピスアダマンスは向正面から早めにスパートをかけた。キャッツライズも馬体を併せてプレッシャーをかけるとワイズゴールドの手応えが一瞬、怪しくなったが、3~4コーナーをクリアすると直線は突き放す一方。2着キャッツライズに4馬身差をつけてゴールした。

上がり3ハロン37秒6。前後して同じ水沢1600メートルで行われた第9レース(B1級)の上がりが40秒2、第11レース(B1級)の上がりが40秒6。ワイズゴールドに驚異的な上がりを駆使されては、後続がどんどん離されていくのは当然のことだった。

ワイズゴールドはこの勝利で15ポイントを追加。前走浦和・桜花賞の2ポイントと合わせて計17ポイント。暫定首位に立った。「この勝利でトップに立ったんですね。それならば次走は東京プリンセス賞、のじぎく賞の両にらみで決めたいと思います」と管理する市村誠調教師。

鞍上・山本聡哉騎手は今回の勝利で重賞3連勝。岩手競馬が新シーズンに入り、スプリングカップ(ミニアチュール)、赤松杯(グローリーグローリ)と重賞をオールゲット。昨シーズンは216勝の岩手所属騎手年間最多勝の大記録を打ち立てたが、今年度はさらに凄みを増している。

実は10日、山本兄弟(政聡騎手、聡哉騎手、聡紀騎手=船橋)の父が急逝した。今回の勝利は旅立った父への弔いにもなったに違いない。

取材・文 松尾康司

写真 佐藤到(いちかんぽ)

Comment

山本聡哉騎手

ペースを落としすぎて後ろからプレッシャーをかけられましたが、3~4コーナーをうまくクリアーしてくれましたから直線でいけると思いました。レース前にコーナーは動かないと聞いていたので、そこだけを気をつけました。返し馬の雰囲気も良かったし、勝ててホッとした。次も頑張ってほしいと思います。

市村誠調教師

地元のトップジョッキーなので指示は出していません。この馬はどんな競馬にも対応できるタイプですからね。手応えの割に渋太くてバテないのがいいところですし、折り合いも問題ない。今後、一回り大きくなってパワーがつくようになれば、もっと伸びると思います。次走も楽しみにしています。