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第25回かきつばた記念JpnIII

好タイムの一騎打ちを制す
  重賞初制覇でさらなる高みへ

昨年は大型連休に加え、競馬場移転後初のダートグレードということもあって、大賑わいだった名古屋競馬場。駐車場から出るのに1時間以上かかった人もいたが、今年はそれに比べると連休中日でカレンダー上は平日ということもあって人出は落ち着いた。とはいえ、やはりJRAから有力馬を迎えての一戦には開門直後から多くのファンが集まり、芝生エリアでくつろぐ姿も見られた。

ダート界は息長く活躍する馬が多い。2歳ダートグレード・兵庫ジュニアグランプリJpnIIの2019年勝ち馬テイエムサウスダン(JRA)、20年勝ち馬デュアリスト(JRA)、そして21年全日本2歳優駿JpnIをレースレコードで勝ったドライスタウト(JRA)が古馬となってここに出走。

そのドライスタウトが単勝1.7倍の1番人気に推された。対して、2番人気のウィルソンテソーロ(JRA)は3歳未勝利戦から4連勝で今年1月にオープン入りしたばかりの新興勢力。昨年2着で、各地のダートグレードで好走を続けるヘリオスまで3頭が抜けた人気で、トップハンデ61キロを背負うテイエムサウスダン(JRA)や、距離延長が鍵のデュアリスト(JRA)は単勝10倍を超えた。

揃ったスタートから押し出されるように先頭に立ったのはデュアリスト。外にヘリオスがつけ、その後ろにドライスタウト、ウィルソンテソーロと続いた。レースが動いたのは向正面に入ってほどなく。前走、この地で東海桜花賞を勝ったルーチェドーロ(川崎)が中団から一気にスパートをかけ、3コーナーでは先頭に並びかける勢いで迫った。

しかし、JRA勢も応戦してペースは上がり、直線入口ではドライスタウトとウィルソンテソーロのマッチレースの様相となった。戸崎圭太騎手と川田将雅騎手のトップジョッキー2人は、この日の外伸び馬場を把握し、直線は馬場の五分所まで出しての大接戦で、馬体をピタリと併せたままゴール。大歓声は興奮交じりのどよめきに変わり、ビジョンにウィルソンテソーロがわずかに前に出てゴールしているシーンが映し出されると、再び歓声が上がった。

勝ちタイムは1分31秒1。1500メートル戦ながら、1400メートル並みのタイムが出たことで、地元の岡部誠騎手は「速すぎるよ」と祝福を込めて川田騎手に声をかけた。それだけ速いタイムでは3着ヘリオスは3馬身離れ、積極的に動いた4着ルーチェドーロはさらに6馬身離れてのゴールというのは仕方ないだろう。

惜しくもハナ差で勝利を逃したドライスタウトは「4コーナーで手応えはありましたけど、マークされて2.5キロ差のハンデ分もあったかなと思います」と戸崎騎手。初めての右回りとなった昨年の兵庫チャンピオンシップJpnIIは出遅れて4着とあって適性判断ができなかったが、2回目の今回、熱戦を演じての結果に右回りも対応できることを示した。

4着ルーチェドーロの櫻井光輔騎手はヤングジョッキーズシリーズの二代目チャンピオン。着実にステップアップし、先の東海桜花賞で自身初の重賞制覇を果たしたことは自信にもなったという。「溜めるよりも惰性でいい脚を使いたくて、早めに先頭へ並びかけるイメージでした。3コーナーでは夢を見ました」と、成長した若武者は悔しさの中にもやりきった充足感を見せた。

勝ったウィルソンテソーロはまだ4歳で、これがキャリア9戦目。父キタサンブラック譲りのスラリとした馬体でデビューから3戦は芝だったが、3歳未勝利戦が終了する1週前にダートに転向し、大差勝ち。これが大きな転機となり、そこから4連勝でオープン入りを果たすと、名古屋城ステークス5着を経て、ここに駒を進めたのだった。

初年度産駒のイクイノックスがドバイシーマクラシックGIを勝ち、2世代目のソールオリエンスも皐月賞GIを勝つなど今を時めく種牡馬キタサンブラックだが、産駒によるダート重賞制覇はJRA・地方通してこれが初めて。管理する小手川準調教師も重賞初制覇となった。

「まだ未完成なところがこの馬のいいところ」と小手川調教師が話すウィルソンテソーロ。「川田騎手も距離は問題ないと話していて、オーナーからは『勝てば帝王賞へ』と聞いていました」。1600~1800メートルで連勝街道を歩んだ馬は、弥富でのタイトルを手に2000メートルでさらなる高みを目指す。

取材・文大恵陽子

写真早川範雄(いちかんぽ)

Comment

川田将雅騎手

とてもいい馬の依頼をいただき、結果を出すことができてホッとしています。直線は外だというのを見て聞いて感じていましたので、勝負所から外に進路を取れるように、しっかり動きながらも、渋太くドライスタウトも差し返すような雰囲気で、熱い競馬ができたのではないかと思います。

小手川準調教師

前の厩舎から癖や状態について丁寧に引継ぎを受けたので、レースまで調整がしやすかったです。これだけの素質を持った馬でチャンスを与えていただき、重賞を勝たせないといけないと思っていました。まだ繊細で、優しい牝馬の表情をしているので、もっと逞しさがつけばさらに良くなってくると思います。