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第35回かしわ記念JpnI

マイルの舞台でも圧巻の末脚
  帝王賞連覇へ弾みつける勝利

JRAからの出走馬でGI/JpnIを制しているのはメイショウハリオ(帝王賞)と、ヴァレーデラルナ(JBCレディスクラシック)の2頭。このメンバー構成を考えれば、昨年のNARグランプリ年度代表馬のイグナイター(兵庫)、フェブラリーステークスGIで6着と力を示したスピーディキック(浦和)を擁する地方勢にもチャンスがあると見られていた。

しかし、結果はメイショウハリオが実力を誇示して勝利。JRA勢が5着までを占め、6着のスピーディキック、7着のイグナイターともに勝ち馬に1秒3差をつけられるという、厳しい現実を突きつけられた。


船橋のスマイルウィが競走除外となり13頭立て。最内枠のヴァレーデラルナと、2年前の覇者カジノフォンテンが激しい逃げ争いを演じ、道中はよどみない流れで進んだ。メイショウハリオは五分のスタートを切ると、10頭が形成した先行集団の最後方につけた。

3コーナーの手前で馬群が凝縮。外めに持ち出したメイショウハリオは、まくり気味に集団を交わしにかかり、直線で持ち前の末脚を爆発させた。先に抜け出していたハヤブサナンデクンを捕らえると、懸命に食い下がるタガノビューティーを振り切り、クビ差で2度目のJpnI制覇を飾った。メンバー最速となる後半3ハロン37秒2の末脚は圧巻だった。

帝王賞JpnI制覇、東京大賞典GI・3着の実績からも中距離がベストの印象があるメイショウハリオだが、前走のフェブラリーステークスGIでは出遅れを喫しながら3着。後半3ハロン35秒8の末脚を見ても、スタートさえまともならマイルでも十分に戦える印象があった。それを証明した今回の一戦。濱中俊騎手も「ここでは一番強いと思っていたし、この馬の持ち味を発揮できるよう、いろいろと考えて乗りました。また大きなレースを一緒に勝ててうれしいですね」と、ともにつかんだ2つ目のJpnIタイトルを喜んだ。

タガノビューティーは昨年のかきつばた記念JpnIII(4着)以来となる地方参戦で2着。4コーナーで少し進路が狭くなる場面もあったが、直線で外を伸びたメイショウハリオに食い下がり、最後までしっかりと脚を伸ばした。石橋脩騎手は「ブリンカーを着けたことで、いい位置につけることができましたけど、勝ち馬の切れがすごかったですね。うまくいったと思ったのですが……」と話したが、この馬自身も後半3ハロンは勝ち馬とほぼ互角の37秒3。その脚質からも小回りコースは微妙だが、直線の長い舞台なら展開次第でチャンスが巡ってくる。

3着にはGI/JpnI初挑戦のハヤブサナンデクンが入線。中、長距離を中心に使われてきたが、2度目のマイルで3着に食い込み、地力の高さを示した。津村明秀騎手は「4コーナーの手応えは十分でした。マイルの経験は少なかったですが、距離の融通が利くし、7歳でも力をつけていますね」と成長力を口にする。よどみない流れを好位で踏ん張った内容は着順以上に評価でき、小回り向きの先行力があるのも強み。地方を舞台にさらなる飛躍を遂げる可能性が高い。

地方勢ではスピーディキックの6着が最高。前走のフェブラリーステークスGIでは直線で進路が狭くなる不利がありながら6着と健闘しただけに、このメンバーでも4番人気に支持された。ただ、道中で外に持ち出せなかったロスが響き、上位勢に水を開けられてフィニッシュ。御神本訓史騎手も「内枠で“はまって”しまいましたね。最後は伸びてきたけど、終始包まれて思い通りの競馬ができませんでした」と唇をかんだ。3コーナー付近で馬群が密集したかたちになったことが不利に働いた。ばらける展開になれば結果も違ったかもしれない。

イグナイターは終始外を回らされての7着で、「船橋のマイルをこなし切れなかった感じですね。ただ、厳しい競馬でも太刀打ちできましたし、小回りなら」と笹川翼騎手。展開的に厳しい競馬を強いられたのは確かで、この一戦だけで評価は落とせない。

勝ったメイショウハリオとしては、帝王賞JpnI連覇へ向けて弾みがつく一戦。国内で蓄えた実力を武器に、海外帰りの強豪たちと熱戦を繰り広げてくれるに違いない。

取材・文大貫師男

写真国分智(いちかんぽ)

Comment

濱中俊騎手

前半に慌てさせると末脚に影響すると思ったので、リズムを整えることを中心に据えていました。少し反応が鈍い面もあるので、向正面でポジションを上げていきました。先頭に立ったところで気を抜きましたが、内から他馬が来たことが刺激になって、最後はこれなら交わされないだろうという脚いろでした。

岡田稲男調教師

直線が短いので早めに行きましたけど、底力を感じさせる走りでしたね。状態自体は前走のほうが良かったのですが、いいスタートが切れて、実力を出せるレース運びができたと思います。次走は帝王賞へ向かうことになるかと思いますが、このあとの馬の体調を見て決めるつもりです。