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第68回羽田盃

破格のタイムで逃げ切る
  目指すは無敗のダービー馬

5月6日に大井のマンダリンヒーローがアメリカ・ケンタッキーダービーGIに出走し、その挑戦と走りに胸が熱くなったばかり。そして今度は、同世代の馬たちによるクラシックの戦いが始まる。ダート体系の整備により南関東所属馬による戦いは今年が最後。一冠目の羽田盃には、浦和・小久保智厩舎が5頭出しと、なんとしてもここを勝ちたいという意気込みが感じられた。その小久保厩舎の筆頭格で、マンダリンヒーローを雲取賞で破ったヒーローコールが単勝1.4倍と断然の支持を集めた。近年の混戦ムードとは違い、今年は一強に近い雰囲気だったのだが……。

レース後の検量前は「凄すぎる……」という声が多数。周囲を唸らせる驚愕のパフォーマンスを見せたのは4番人気のミックファイアだった。

ポリゴンウェイヴが外から先手を主張し、ミックファイアは2番手でレースを進めた。ヒーローコールが好位の外を追走し、2番人気のサベージはスタートで出遅れて後方からとなった。3コーナーあたりからヒーローコールが追い出され、前との差を詰めると、サベージも上がってきた。

しかし、その人気馬たちをしり目にミックファイアは抜群の手ごたえで先頭に立ち、直線に入るとぐんぐん突き放し独走。2着のヒーローコールに6馬身の差をつけ、余裕のゴールイン。初コンビの御神本訓史騎手はゴール直後にグッとガッツポーズを作った。2着から1馬身半差の3着にはサベージが入った。

無傷の4連勝、重賞初挑戦で一冠目を制覇したミックファイア。「びっくりしました」(御神本騎手)。「チャンスはあると思っていたけどこんな勝ち方をするとは!」(渡邉和雄調教師)と陣営も目を丸くするほどだった。

しかし、戦前はレースに出走できるか分からないほどの状況だったという。デビュー3連勝した後、裂蹄を発症。落ち着いたかと思いきや再び痛みが出て雲取賞を断念。春は全休という選択肢もあったが、この馬の素質の高さを信じる陣営はクラシックを諦められなかった。そして脚元の負担を考え外厩のミッドウェイファームに移し、ウッドチップの坂路での調整に賭けた。その思いが通じてか、なんとか出走に間に合ったのだ。「既成勢力を全部負かせるのはこの馬しかいない」という渡邉調教師の思いが、まさにその通りとなった。

タイム面から見てもミックファイアの走りが破格だったことがわかる。勝ちタイム1分50秒9は羽田盃のレコードを更新。さらには、1800メートルの古馬重賞、ブリリアントカップや、勝島王冠の過去と比べても最も速いタイムなのだ。この馬が本当の力を発揮できた時、どれだけの強さを見せるのか楽しみで仕方がない。しかしながら、現状では爪の不安との戦いだ。「状態さえ整えば胸を張って東京ダービーに出走します」と渡邉調教師は力を込めた。

ヒーローコールの森泰斗騎手は悔しそうな表情をしていたが「サベージの追撃を振り切ったことは評価できるし、距離が延びるのは絶対にプラス。次は逆転したいと思います」とコメント。出遅れが響いてしまったサベージについては「スタートが全て。今日の馬場傾向からは致命的でした。ただ成長はうかがえたしこの経験を次に活かしたいです」と石崎駿騎手は振り返った。

新星ミックファイアの登場で、一気に形勢が変わった南関東クラシック戦線。6月7日に行われる東京ダービーではどんな戦いを繰り広げるのだろうか。

取材・文 秋田奈津子

写真 早川範雄(いちかんぽ)、NAR

Comment

御神本訓史騎手

マイナス体重でしたがいい状態で仕上がっていました。この馬のペースを守りながら追走して、直線はどれくらい伸びるかなと思っていたら抜群の弾け方をしてくれて素質の高さを感じました。距離には課題がありそうですが、馬のポテンシャルと乗り方でカバーできれば東京ダービーも見えてくると思います。

渡邉和雄調教師

2歳の時からクラシックの主役を張れる馬だと思っていました。これまでの3勝全て逃げ切りでしたが、御神本騎手とは馬の気分を損なわないように進めようと話しました。今日は体重が想像より減っていたので不安もあったがこの強さを見たら吹き飛びましたね。無敗で東京ダービー馬にしてあげたいです。