第37回東京プリンセス賞

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第37回東京プリンセス賞

好位で折り合いゴール前差し切る
  御神本騎手は連夜の重賞制覇

終わってみれば単勝の上位人気3頭による決着で、3連複の配当は620円。勝ったサーフズアップはユングフラウ賞制覇を含め、ここまでの7戦全てで3着以内の好成績だった。一見すると順当な結果なのだが、単勝1.4倍のメイドイットマムが3着に敗れたことは、波乱の印象を強く残した。

桜花賞を制して南関東牝馬二冠に挑んだメイドイットマム。距離延長に不安はなく、持ち前のパワフルな末脚は直線の長い大井1800メートル向き。ホッカイドウ競馬でデビューし、東京2歳優駿牝馬を勝った実績からも右回りに不安はなく、死角は見当たらなかった。

一方、サーフズアップは距離に不安があり、陣営も折り合いを鍵に挙げていた。3番人気に推されたボヌールバローズにしても東京2歳優駿牝馬で決定的な4馬身差をつけられていただけに、序列はできあがっていたように見えた。

しかし、レースは走ってみなければ分からないもの。

ポーチュラカがよどみないペースで逃げ、ボヌールバローズがその後ろ。サーフズアップは1~2コーナーで少し行きたがるようなそぶりを見せたが、向正面に入って砂をかぶると3番手で折り合った。最内枠のメイドイットマムもその一角につけていたが、終始他馬に囲まれる窮屈な位置に押し込められていた。

直線でボヌールバローズが抜け出し、メイドイットマムとサーフズアップも脚を伸ばしてくる。しかしボヌールバローズはソラを使い、いったん外へヨレ、さらに内へ切れ込む。その後ろで急な進路変更を強いられたサーフズアップだったが、器用な立ち回りを見せるとゴール手前で抜け出し、1馬身1/4差で2度目のタイトル制覇を果たした。メイドイットマムは伸び切れず、2着ボヌールバローズから1馬身差の3着だった。

サーフズアップ鞍上の御神本訓史騎手は、羽田盃(ミックファイア)に続く連夜の重賞制覇。「向正面で砂をかぶせて折り合いがついたし、最後も伸びてくれる馬なので信じて追いました」と振り返り、山下貴之調教師も「うまく折り合いをつけてくれたので、向正面では大丈夫だと思いました」と勝因を口にする。砂をかぶらせるために向正面で内へ寄せた御神本騎手の手綱操作。何気ない動きだったが、それがこのレースのゆくえを決定づけるキーポイントとなった。

今後は東京ダービー、関東オークスJpnII、休養の3択とのこと。今回の勝利でグランダム・ジャパンの総合4位タイに浮上しただけに、関東オークスJpnIIに出走してくればポイント争いでも注目の存在となる。

惜しかったのはボヌールバローズ。強気のレース運びから直線を向いて抜け出し、勝利を手中に収めたかのように見えた。「レース運びは完璧でした。でも、最後の直線で1頭になったところでソラを使ってしまって……」と笹川翼騎手。ここへの経験を積むために、あえて桜花賞ではなく牡馬相手の大井1800メートル戦を使うローテーション。そうした思惑も含め、全てがかみ合ったかのようなレース運びだったが、最後に若さが出てしまった。ただ、実力は十分に証明できた内容で、今後の成長次第でタイトルの積み重ねが期待できる。

一方、終始かみ合わなかったのがメイドイットマム。直線でもじわじわと差を詰めたが、3着に終わった。「終始ストレスがかかっていたし、最後も外に出せませんでした」と本橋孝太騎手が話したように、最内枠から包まれる形になり、直線の攻防でも進路が狭くなる場面があった。3歳牝馬には酷な展開となったが、それで3着なら悪くなく、本橋騎手も「今後につながる競馬にはなったと思います」と前を向く。少しでもかみ合うところがあったなら、結果も違っていただろう。今後の巻き返しに期待したい。

取材・文大貫師男

写真築田純(いちかんぽ)

Comment

御神本訓史騎手

スタートは悪くないので、出たところで勝負しようと思っていました。ボヌールバローズが前にいたので、いいところに収まったかなと思いましたね。デビューした時から優秀な成績で走ってくれて、器用な馬なので左回りでも問題ないですし、強い馬と戦ってどれくらいやれるのか楽しみにしています。

山下貴之調教師

前半に砂をかぶらない位置になってしまったので、折り合いや距離を心配しましたが、うまく折り合ってくれたので、向正面では大丈夫かなと思いました。3歳牝馬の限定戦なので、この距離でも結果を出せたとも思いますが、成長することで適性も変わって、対応できるようになるかもしれませんね。