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2023JCS ファーストステージ

第1戦は初出場騎手のワンツー
  福原騎手が1位でファイナルへ

地方競馬の騎手(平地)およそ250人の頂点を決める戦いが、今年も始まった。地方競馬ジョッキーズチャンピオンシップ(JCS)は、今年も昨年に続いて2ステージ・4レースにおけるポイント制での開催。ファーストステージの開催地・盛岡競馬場には、全国の競馬場からトップジョッキー12名が集った。

100万円の優勝賞金と、地方競馬ナンバーワン・ジョッキーとしての名誉だけでなく、現在日本における唯一の国際騎手招待競走であるワールドオールスタージョッキーズ(WASJ)への出場権(優勝者が地方競馬代表候補騎手としてJRAに推薦される)がかかるJCSにおける、出場騎手のモチベーションの持ち方は様々だ。

コロナ禍での開催中止などもあって4年ぶりの出場となった地元・山本聡哉騎手(岩手)は戦前、「地元ということより、久しぶりの参加なので、また(トップジョッキーの)みんなで集まってレースをするのがとても楽しみです」と本シリーズに向けての気持ちを話した。原則として前年4月1日から本年3月31日までの所属場での勝利数第1位の騎手が出場出来るJCSは、日々一つひとつのレースが、その出場へ向けて1年という長い時間をかけた壮大な“予選”。山本騎手自身、昨年は僅差で出場を逸していただけに、言葉にはシリーズ出場の喜びと、自身の活躍への期待感がにじんでいた。

一方、WASJへの出場を目標として語る騎手も多い。昨年のシリーズ優勝者・岡部誠騎手(愛知)はWASJを振り返って「競馬に対する異なる考えに触れられて、自分の競馬の姿勢としてもとても刺激になりました。また行きたいと思える場」と話し、改めて活躍への意欲を示した。また、JCSには2度目の出場となる福原杏騎手(浦和)は、前日に競走馬セールの見学のためWASJの開催地であるJRA札幌競馬場を訪れたとのこと。そこで目にしたWASJ関連の展示物を見て、出場への強い憧れを持って盛岡へ入って来たそうだ。

今回が初出場となるのは3名。そのうち落合玄太騎手(北海道)は「札幌に行けるように頑張ります」とシンプルに抱負を語り、渡邊竜也騎手(笠松)は「昨年岡部さんが(WASJに)行ったのを見て、自分も行きたいと思っていました。優勝すれば行けるんですね。頑張ります」とモチベーションを高めていた。

第1戦はダート1200メートル。好スタートを切った落合騎手を制して、矢野貴之騎手(大井)が果敢にハナに立ち奮戦、しかしそれを直線で楽々と交わした落合騎手が後続を寄せ付けぬ圧倒的なレース振りで勝利を手にした。

外を回って追い上げた宮川実騎手(高知)が2着となり、シリーズ初出場の騎手でワンツー決着。宮川騎手は、中団になった位置取りを「もう少し攻めのレースをしても良かったかも」と振り返りながらも、「いいポイントが獲れたので次も頑張る」と話し、活躍した手応えを次のレースに向けての意欲へ繋げていた。

勝ち馬チベリウスを担当するのは、元々落合騎手と地方競馬教養センター騎手課程96期の同期でともに騎手を目指しながら、健康上の理由で騎手にはなれなかった村上朝陽厩務員。勝利の後、馬とともに引き上げてきた落合騎手とグータッチを交わし、笑顔で喜びを分かち合っていたシーンはとても印象的だった。

第2戦はダート1600メートル。第1戦で差して見せ場を作った宮川騎手が、ここでは「思い切ったレースをしようと思った」と意識してハナを奪う。人気に推されていた青柳正義騎手(金沢)や福原騎手らが追いかける展開に自ずとペースは上がり、馬群が縦に伸びてばらける厳しいレースとなった。勝負所の4コーナーで2番手にいた青柳騎手が前を交わしにかかると、福原騎手もそれに応じて直後から進出。直線に入り激しく続いた両者の一騎打ちは、福原騎手が青柳騎手を競り落とし半馬身差で決着した。

青柳騎手は「自信を持って抜け出したのですが、ちょっと早かったのかも知れませんね」と残念そうに語ったが、この騎乗振りも人気馬ゆえの、また勝ちたい気持ちが募るこのシリーズゆえのものだろう。

もっと残念そうだったのが、後方から追い上げて3着だった吉村智洋騎手(兵庫)。実績的に勝利のチャンスがありそうな馬だっただけに、「スタートでなんぼか遅れているので……」と敗因を語る表情は苦渋に満ちていた。しかし最後には「次(ファイナルステージ)は地元なので。なんとかなるでしょう」と逆転を期しつつ、盛岡競馬場を後にした。

このファーストステージ。2戦続けて活躍した騎手がおらずポイントが割れ、多くの騎手にまだ優勝のチャンスが残されていそうだ。その優勝が決まる注目のファイナルステージは、7月6日に園田競馬場で行われる。

取材・文坂田博昭

写真佐藤到(いちかんぽ)、NAR

Comment

第1戦1着/ファーストステージ2位 落合玄太騎手(北海道)

馬の力が抜けていたかなと思います。人気にもなっていた馬なので、ホッとしました。(年上のトップ騎手相手でも)緊張はしていませんでした。勝てて自信にも繋がります。今回はいい馬が当たってラッキーでした。同期(の村上朝陽厩務員)と一緒に勝てて良かったです。

第2戦1着/ファーストステージ1位 福原杏騎手(浦和)

素直に嬉しいです。馬のお陰で勝たせてもらい、感謝しています。相手は青柳騎手の馬だと思いマークする形でレースを進めました。最後の直線は替わるか替わらないかヒヤヒヤしましたが、2着になりたくないという気持ちで追いました。このまま、次のファイナルステージも頑張っていきたいです。