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第53回東海ダービー

内枠から逃げて後続を振り切る
  無敗のまま念願のダービー制覇

名古屋競馬場が移転して2年目の東海ダービーは、昨年より100メートル距離が延長され、この舞台では最長距離となる2100メートルでの争い。

デビューからここまで7戦7勝で断然人気となったセブンカラーズが、2着に3馬身差をつけて逃げ切り勝ち。と書くと、いともたやすく無敗でのダービー制覇を成し遂げたようだが、誰もが勝ちたいレースだけに、事はそう簡単ではなかった。

まずは冒頭でも触れた距離。東海一冠目の駿蹄賞に出走した馬は2000メートルを、笠松の特別戦・若鮎賞から駒を進めた馬は1900メートルをそれぞれ経験しているが、2歳時から東海ダービーを目標としてローテーションを組み立ててきたセブンカラーズは十分な間隔をとるため4月20日の東海クイーンカップ(1700メートル)からの参戦。400メートルの距離延長となると“やってみなければわからない”未知の距離。

もうひとつは枠順。ラチ沿いが使えた3月ごろには内枠の逃げ・先行有利ということもあったが、この開催ではラチ沿い4、5頭分を空けてレースが展開され、直線は馬場の真ん中を差してくる馬が目立つような状況。当然外目の枠のほうがレースを進めやすいが、セブンカラーズは2番枠。

果たしてセブンカラーズは、山田祥雄騎手が手綱をしごいてハナを主張した。「2番枠だから行くしかない。馬場の真ん中のいいところを通ってこい」(川西毅調教師)という作戦。ぴたりと2番手でマークしたのが2番人気のリストン。セブンカラーズは単勝1.2倍の断然人気だが、前走駿蹄賞を制し、3歳になって重賞3勝と力をつけたリストンも3.3倍。3番人気以下は、14倍、27倍、あとは60倍以上と離れ、負かすなら二冠制覇のかかるリストンと思われた。「ダービーに出るからには勝ちに行く競馬をさせますよ」(荒巻透調教師)というコメントも出ていた。

3コーナー手前からリストンとの差を広げにかかったセブンカラーズだが、3~4コーナー中間で早くも鞍上のムチが飛んだ。するとリストンに替わって3番人気のマロンアイスが内から差を詰めてきた。

直線を向いて、セブンカラーズには後続を突き放すというほどの勢いはなく、しかし混戦の2番手集団にも余力のある馬はいなかった。

ゴール前では脚が上がりながらも逃げ切ったセブンカラーズの上り3ハロンは41秒8。いわばバテ比べというレースとなって、ペースアップした3コーナーで脚を溜めていたツミキヒトツが2番手争いから抜け出したものの3馬身差。そこから1馬身差で3着だったリストンの丸野勝虎騎手は「惨敗ですね。思ったとおりのレースはできましたが、距離も長かったかもしれません」。一旦は2番手に上がるも4着だったマロンアイスの加藤聡一騎手は「一瞬色気を持って早めに動いたぶん、脚が上がってしまいました」と。どちらも“勝ちたい”という強い気持ちがあっての結果だった。

「この1カ月ほとんど眠れてなかった」とホッとした表情を見せたのは、セブンカラーズの川西調教師。勝って当たり前の馬を実際にダービーで勝たせるのは、それほどのプレッシャーなのだろう。このあと夏は休養し、次は「西日本ダービーあたりかな」と言う一方で、「距離は1600から1800くらい」という適性も含め、今後の目標を検討していくようだ。

取材・文斎藤修

写真築田純(いちかんぽ)

Comment

山田祥雄騎手

無敗ということで、かなりプレッシャーはありました。道中は無理なく行けたので、もっと楽に勝てるかなと思ったんですけど、3コーナーくらいから手応えがなくなって、距離が長いのかなとは思いました。完全に脚が上がっていたので、頼むから残ってくれ、という感じでした。

川西毅調教師

前に馬を置いたほうがいい馬なので、前回(東海クイーンカップ)のように外枠から2、3番手が理想だったんですけど、2番枠では何かあったときに対応できないので逃げるしかない。不本意でしたけど、勝ててよかった。(東海ダービーは6勝目だが)生え抜きは初めてなので、ほんとうによかった。