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第31回東北優駿

距離不安を克服し突き放す
  転入後6連勝で二冠制覇

ダービーへ到るストーリーは数知れずある。規模はそれぞれ違っても『ダービー』はホースマンが目指す最高峰。4年前、岩手ダービーがダイヤモンドカップから東北優駿へ変更された。かつて東北優駿(東北ダービー)は新潟、上山、岩手の三県持ち回りで行われた名物レースだった。

東北優駿を前にして、友人からメールが来た。個性派で名を馳せ、現在は川崎競馬場できゅう務員に従事している岩手競馬の元ジョッキー・佐々木陸男さんから「東北優駿など、三県交流が岩手のレベルをあげた」と言われました、と。

同感だった。インフラも整備されていない時代、高速道路などなく、遠征自体が過酷だった。だから優勝した時は格別の喜び。間違いなく三県交流が岩手競馬を底上げさせた。東北優駿(岩手ダービー)はそのマインドを継承し、名称を復活させた。

今年の東北優駿への道を、有力各馬1頭ずつ紹介してみたい。

まずはミニアチュール。北海道2勝から昨年12月に転入。小柄な牝馬ながら、非凡なレースセンスで初戦を7馬身差で圧勝。以降、金杯、冬期休催が明けてあやめ賞、スプリングカップを連勝。牝馬交流・留守杯日高賞をスキップし、牡馬相手のクラシック一冠目・ダイヤモンドカップへエントリー。勝利を誰もが疑わなかったが、初の左回りとバンケット(坂)にとまどった。なんとかリッキーナイトの追撃をしのいだが、わずか0秒1差。岩手入り後、初めて苦戦を強いられた。佐藤祐司調教師は「左回りもあったが、今後は距離が課題になるかもしれない。適性を考えると東北優駿の一択ではなくなった」

リッキーナイトは北海道4戦2着1回から昨年11月に転入。3戦2勝、2着1回の成績を収め、南関東へ移籍したが、2戦して8、7着に終わり再転入。スプリングカップ、ダイヤモンドカップで連続2着。しかしダイヤモンドカップではメンバー最速の上がりを披露してミニアチュールに肉薄した。課題はテンションが上がること。入れ込みが激しく、パドックでも鼻ねじをかけなければならないほどだった。

ロッソナブアは2012年の岩手年度代表馬に選ばれたロッソコルサの弟。門別1100メートル・2歳新馬戦(フレッシュチャレンジ)を圧勝し、2戦目3着から南関東へ転籍。2連勝を飾り、以降は2戦連続2着。今回のトレードは東北優駿狙い。単勝1番人気に支持された。

スノーパトロールは中央未勝利ながら東京ダート1600メートルで2着1回の経験で転入。あやめ賞4着からスプリングカップ3着。ダイヤモンドカップも3着だったが、輸送のない地元盛岡開催の影響だったのか、馬体重プラス19キロ。その直後からテンコートレセンで鍛え直して雪辱に燃えた。

各陣営がそれぞれの思いを胸にゲートが開いた。先手を奪ったのはピラヴロス。デビューは遅かったが、無敗3連勝。果敢にハナを主張した。2番手にロッソナブア、3番手外にミニアチュール。4番手インにリッキーナイトがつけたが、スローに落とされて折り合いに苦労した。その外にスノーパトロール。

3コーナーでピラヴロスが一杯となり、ロッソナブアは手綱をしごいて先頭。しかし遅れずミニアチュールが追走し、直線入口で先頭に立つと、あとは後続を突き放して4馬身差でゴール。内をついたリッキーナイトが2着を確保した。

レース後、ミニアチュール=山本政聡騎手はウイニングラン。ゴール前にいたファンは拍手と歓声で祝福した。決して多いとは言えなかったが、ファンとウイナーが一体となって“ダービーデー”の喜びを分かち合った。

取材・文松尾康司

写真佐藤到(いちかんぽ)

Comment

山本政聡騎手

騎乗依頼は1週間前。正直、プレッシャーを感じましたが、強豪転入馬を意識しながらミニアチュールの持ち味を最大限に引き出せるよう心がけました。2000メートルは力を要求される距離。ロッソナブアの手応えが怪しかったので早めに交わしましたが、小柄な牝馬でも最後まで頑張ってくれました。

佐藤祐司調教師

今回は体重回復を優先しましたが、手を抜くことなく3本の追い切りをしっかり消化してプラス10キロでしたからね。納得のいく仕上がりで臨むことができました。三冠の期待が高まっているでしょうが、当面の目標はひまわり賞(オークス)。以降についてはオークスを使ってから考えます。