見応えのある一戦だった。結果的には層の厚さに優るJRA勢が上位を占める形になったが、勝負どころでの激しい攻防や、0秒3差で上位4頭がフィニッシュしたゴール前、グランダム・ジャパンのポイント争いなど、様々な要素が2分20秒に凝縮。混戦模様の下馬評通り、熱いレースが展開された。

2.6倍の1番人気に推されたのは3戦2勝、兵庫チャンピオンシップJpnII・3着のメイショウオーロラ（JRA）。ダート2戦2勝のフェブランシェが2.9倍、軽快なスピードがあるパライバトルマリンが4.2倍でこれに続く。東京プリンセス賞を勝った船橋のサーフズアップが8.3倍で、地方勢最上位となる4番人気に支持された。核となる馬がいないとなれば、それぞれの陣営とジョッキーの思惑が絡み合い、得てしてレースそのものが面白くなる。

時計のかかる稍重馬場を舞台に13頭がスタート。大外枠のフェブランシェが逃げ、JRA勢が好位を固めたが、メイドイットマム（船橋）、コアリオ（大井）、サーフズアップもこの一角につけて1周目のスタンド前を通過。向正面に入ると兵庫のマルグリッドも先行集団に取りつき、JRA勢と地方勢ががっぷり四つのまま勝負どころの3～4コーナーを迎えた。

ここで手応え良く先頭に躍り出たのがパライバトルマリン。内で粘るフェブランシェを競り落とすと、代わって内を伸びてきたクレメダンジュ（JRA）、外で食い下がるメイショウオーロラを振り切り、1馬身差で初タイトルを手にした。

前向きに走るパライバトルマリンにとって、今回の課題は距離延長。戸崎圭太騎手は「追い切りに乗せてもらったときに、距離に不安を感じましたが、道中はゆったりと、上手に走ってくれましたね」とパートナーをねぎらう。一方で、管理する林徹調教師は「ジョッキーのおかげです。完璧に折り合ってくれて、素晴らしいレース運びを見せてくれました」と鞍上に最敬礼。そつのない騎乗は、大井所属時代からの戸崎騎手の代名詞だが、初物づくしのなかで課題を克服したパライバトルマリンの素質の高さも見逃せない。双方のパフォーマンスがかみ合って、3歳女王の座を射止めた形だ。

クレメダンジュがうまくさばいて2着。脚質的に小回りコースへの対応が鍵だったが、先行集団で流れに乗ると、最後の直線で内を突いて脚を伸ばした。和田竜二騎手は「いいスタートが切れて流れに乗れました。一戦ごとに力をつけていますね」と着実な成長を口にする。こうした立ち回りができれば、地方の馬場での活躍が見込めるだけに、展開次第でチャンスが巡ってきそうだ。

1番人気のメイショウオーロラは直線で伸び切れず3着だったが、「落ち着いて走ってくれました」と横山典弘騎手。敗れたとはいえ、初ナイターに対応したことは大きく、活躍の場はさらに広がった。今後もあらゆる条件で力を発揮するに違いない。

メイドイットマムが4着に食い込み、地方勢の最先着。勝負どころで置かれかけたが、直線で盛り返し、3着のメイショウオーロラにハナ差まで迫った。「4コーナーの手前でズブい面を見せました。あそこで踏ん張れていれば……」と本橋孝太騎手は無念の表情だったが、後半3ハロンはメンバー最速。昨年のNARグランプリ2歳最優秀牝馬として存在感を示した。

1ポイント差での決着となったグランダム・ジャパン3歳シーズンの結果は、しぶとく5着に入ったマルグリッドに軍配が上がった。最終戦5着の5ポイント、地方馬内2位の10ポイントを加算して、計36ポイントを獲得。このレースで22ポイントを獲得したメイドイットマムを振り切る形で、第14代女王に輝いた。手綱をとった今野忠成騎手も「周囲や左回りを気にして、もたれて走っていました。でも、利口ですし、楽しみな馬。またこっち（南関東）へ使いに来てほしいですね」と能力を評価する。今後も全国レベルでの活躍が期待できそうだ。