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第24回兵庫ダービー

先手をとってライバルを完封
  10年ぶり牝馬がダービー制す

戦前より二強ムードが色濃かった。昨年、兵庫県競馬の最優秀2歳馬に選ばれたスマイルミーシャと、兵庫三冠の一冠目・菊水賞を勝ったベラジオソノダラブ。2頭はこれまで2度の直接対決で1勝1敗と五分の戦いを演じていた。

ファンからの支持もそれを表すように2頭が抜けた人気。ただ、1番人気が牝馬のスマイルミーシャで1.8倍だったことは地元記者もやや驚いていた。過去23回の兵庫ダービーで牝馬の優勝は3回のみ。2013年ユメノアトサキ以降、遠ざかっているが、スマイルミーシャはレースセンスが非常に高く、前走・のじぎく賞はハイペースだったとはいえ菊水賞よりも0秒7速いタイムで圧勝しており、期待が寄せられた。

1番人気が予想された菊水賞馬は2.4倍の2番人気。そのベラジオソノダラブを管理する坂本和也調教師は騎手時代、ユメノアトサキで制しており、ここを勝てば騎手と調教師という異なる立場で“兵庫ダービー・ダブル制覇”という初の記録もついてくる状況だった。

この二強対決は、スタートから約15秒で決着がついた、と表現しても過言ではないかもしれない。

両陣営とも「相手より前で競馬をしたい」と話す中、抜群のスタートダッシュを見せたのはオキザリスレディー。外枠から内にキレ込みながら進路を取った。6番枠のスマイルミーシャはオキザリスレディーの出方一つで内で包まれる可能性があったが、吉村智洋騎手は一歩目から激しいアクションで先行する構えを見せ、外からベラジオソノダラブが来る気配を感じるともう一押しして2番手を取った。これにより、オキザリスレディーが逃げて2番手外にスマイルミーシャ、さらに外の3番手にベラジオソノダラブという隊列になった。

そうなれば、いくら実力上位のベラジオソノダラブでも2頭分外を終始回らされることになり、不利な状況。2周目向正面で前を捉えにかかるが、1馬身前にいたスマイルミーシャもほぼ同時にスパートを開始。2頭の差は縮まることなく、3馬身差でスマイルミーシャが優勝。2着ベラジオソノダラブ、3着にグロリアドーロが追い込んだ。

ゴール後、1コーナーの特設カメラに向かってポーズを決めた吉村騎手は「(所属の)飯田良弘調教師が初めてダービーを勝ちました」と、主戦を務める厩舎とのタッグでダービー制覇を遂げられたことを喜んだ。

その飯田調教師はレース前は普段通り、というよりいつも以上に明るく振る舞っているように見えたが、「内心は穏やかじゃなかった」ようで、レース後はやや放心状態の表情だった。それだけ人気を背負って兵庫ダービーに臨むということは大きな責任と重圧がのしかかっていたのだろう。「一生に一度の特別な舞台を勝てて、嬉しいです」と喜んだ。

なお、“チーム・スマイルミーシャ”は吉村騎手が2回目、さらには松野真一オーナーも一昨年のスマイルサルファーに続き2回目の兵庫ダービー制覇という、すごいメンバーでもあった。

2着ベラジオソノダラブの田中学騎手は「理想は2番手外だったんですけど……」と、枠と展開を悔やんだが、スタートからの名手同士の真っ向勝負は、二強対決を白熱させた。

取材・文大恵陽子

写真桂伸也(いちかんぽ)

Comment

吉村智洋騎手

2~3番手に控えて負けた菊水賞のような競馬はしたくなくて、スタートだけは、と自分に気合いを入れて出していきました。枠順が出た時からマッチレースになると思っていて、相手よりも前のインで競馬をしたかったです。ここからなら凌げると思うタイミングで仕掛けました。まだのびしろがある馬です。

飯田良弘調教師

2歳時はパドックでもイレ込むことがありましたが、今日は落ち着き、状態も良かったです。カイ食いの細さがあるので、前走から間隔がありじっくり調整できたことも良かったです。調整の難しさのある馬で、この後はオーナーと相談して決めたいと思いますが、1870メートルをこなし選択肢も広がりました。