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第51回高知優駿

南関東の実績馬に大差圧勝
  14年ぶり高知三冠への期待

想像以上の強さと、衝撃の末脚だった。第51回高知優駿は単勝1.3倍の1番人気に応えてユメノホノオが優勝。大一番で、2着に2秒1もの差をつけての圧勝だった。

7連勝中のユメノホノオには戦前から高い期待が寄せられていた。極端に砂を嫌がるタイプで、7連勝はいずれも大外からひとまくり。後方から脚を伸ばす同馬にとって、距離が1900メートルに延びることは好材料だった。

その一強ムードを崩したのはポリゴンウェイヴ(浦和)。6年前に高知優駿が地方全国交流となって以降、初めて南関東で重賞を勝った馬が出走してきた。ニューイヤーカップ(浦和1500メートル)、クラウンカップ(川崎1600メートル)を逃げ・先行で勝っており、距離延長をこなせれば、ユメノホノオと好勝負を演じるのでは、と注目された。

また、タイガーチャージ(大井)も確実な末脚を持っており、JBC2歳優駿JpnIIIや京浜盃などでそのポテンシャルが垣間見られた。地元のデステージョは黒潮皐月賞で4コーナーからユメノホノオと激しい追い比べでアタマ差まで食い下がった馬。これらの馬にも期待が寄せられた。

レースはユメノホノオが大きく出遅れ、逃げるポリゴンウェイヴとの差は10馬身以上あったが、2コーナーを回るとエンジンが掛かるといういつもの勝ちパターン。相手も追い出して後続を離しにかかったが、あっという間に3コーナー過ぎで先頭に躍り出るとスタンドからはワッと拍手と歓声が起き、あとは後続を突き放す一方だった。

これにはポリゴンウェイヴの落合玄太騎手も「3コーナーで脚が違いました」と相手を称えるしかなく、大差をつけられての2着。しかしながら、「1頭になるとハミを噛まなくて、1~2コーナーではふわっとしてしまいました。交わされてからももう1回追いかけようとしていました」と、目標ができると勝負根性を見せた。

3着には序盤は後方に置かれ、1コーナーで早くもムチが入っていたデステージョ。「湿った砂が塊で飛んできたのが痛くて気になったのか、終始走りに集中しきれないままでした。久しぶりの分もあったかもしれません」と宮川実騎手は不完全燃焼の表情だった。

好位から運んだタイガーチャージは4着で、笹川翼騎手は「初めての遠征でも落ち着いていましたけど、不慣れな小回りのコーナーで1、2着馬に遅れを取ってしまいました」。また5着ハチキンムスメの上田将司騎手は「このメンバーでよくがんばりました」と話した。

ダービーの大舞台で、ユメノホノオの上がり600メートル39秒8は次点のデステージョより1秒8も速い。スパートを開始したのは残り900メートル付近のため、そこからのタイムはさらに突出しているものと思われる。ところが、田中守調教師は「出遅れて最後方だし、逃げ馬は楽そうだったし、焦ったよ(苦笑)」と内心はドキドキだったよう。

その舞台裏を吉原寛人騎手はこう説明した。

「前走のゲートが悪かったので、今日は初めて尾持ちをしたのですが、中で固まってしまい、出遅れました。砂を被る時間が長かった分、ハミを取るまでに時間がかかって、1周目4コーナーですでにムチを入れていました。1~2コーナーは厩舎への帰り道になるからか、馬も止めようとするんですけど、2コーナーを回ったらさすがに観念して、いつも通りハミを取って伸びてくれました」

爆発的な強さと紙一重の気性的な難しさを抱えながらも、力を発揮することができた。グランシング以来14年ぶりの高知三冠馬の誕生へ、夢は燃え上がる。

取材・文大恵陽子

写真桂伸也(いちかんぽ)

Comment

吉原寛人騎手

メリハリをつける競馬を教えてきて、大一番を勝ててホッとしています。向正面から上がっていく時は周りの馬が止まって見えるほどで、乗っていても鳥肌が立ちました。今日は初めて目一杯追いました。重たい馬場でこのタイムを出せて、古馬重賞でも通用する馬だと思います。

田中守調教師

他地区の馬との力関係が分かりませんでしたが、状態はここ3走では一番良かったです。スタートが出ないのでドキドキしながら見ていましたが、2コーナーからの脚を見て「すごいわ」と思いました。気性的に輸送は難しいと思うので、年内は地元に専念して、黒潮菊花賞を目標にしています。