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第25回ジャパンダートダービーJpnI

JRA相手でも直線突き抜ける
  史上2頭目無敗の南関東三冠

「みかもと!みかもと!」と大観衆の御神本コールが場内に響き渡る。その御神本訓史騎手を背に、改めてファンの前に姿を見せたのがこのレースの主役ミックファイアだ。

1999年から実施されてきたジャパンダートダービーは全日本的なダート競走の体系整備により今年が最後。その区切りの年に、大井生え抜きで無敗の南関東三冠馬が誕生した。2001年トーシンブリザード(当時は四冠)以来、史上2頭目の快挙だ。

戦前、「東京ダービーは負けられなかったので緊張していましたが、今回は挑戦者の立場ですし、緊張とワクワクという楽しみな気持ちです」と話していた渡邉和雄調教師。レース後の様子は東京ダービー後の安堵の表情とは異なり、とても晴れやかな笑顔。それは御神本騎手も同様だった。

今年もJRAの強豪が集結した中、ミックファイアは単勝2.0倍の1番人気に支持された。2番人気は3連勝中のユティタムで3.1倍、3番人気は兵庫チャンピオンシップJpnIIを圧勝したミトノオーで3.7倍と三つ巴の様相。地方馬が1番人気に推されたのは、2014年、惜しくも三冠に手が届かなかったハッピースプリント以来だ。

羽田盃も東京ダービーも、パドックでは頭を上下に振りテンションの高かったミックファイアだが、その2戦と比べると今回は素人目にも落ち着いて見えた。「今日は装鞍所でも落ち着いていて、今までにない活気あふれるお行儀の良いパドックでした」(渡邉調教師)と、精神面での成長をうかがわせる周回で、万全の態勢でレースを迎えた。

ミトノオーが先手を取りペースを握ると、向正面では縦長の展開。2番手にテーオーリカード、直後にオマツリオトコとユティタムが続き、ミックファイアはこのJRA4頭を見るポジジョンでレースを進めた。

3~4コーナーでミトノオーが差を広げると、ミックファイアもユティタムの外から追い上げを開始。直線残り200メートルあたりでユティタムを交わし、100メートルを切ってミトノオーを捉えるとそのまま突き放した。約15,000人の大歓声がスタンドに響き渡り、御神本騎手は力強いガッツポーズを披露した。

中団追走から直線で末脚を伸ばした6番人気のキリンジが2馬身半差の2着、クビ差の3着にミトノオーが入った。

キリンジの藤岡佑介騎手は「大井の2000メートルは合うだろうと話していましたし、返し馬で状態の良さを感じました。まだ若さが残る中で良い競馬ができました」とコメント。ミトノオーの武豊騎手は「前半かかってしまいました。ペースは良かったと思いますが、力んだ分スタミナがなくなりました。前向きすぎるのは今後の課題ですが、能力のある馬ですよ」と振り返った。

羽田盃、東京ダービーはいずれもレースレコードの圧勝劇だったミックファイア。しかし、ハイレベルのJRA勢はやはり簡単ではなかった。「前の方につけたかったが、内と外からのプレッシャーがかなりきつくて思いのほか後ろになりました。けれど馬が気持ちを切らさず最後まで走ってくれました」と御神本騎手。

「かなり厳しい競馬でこれまでで一番不安な気持ちで見ていました。4コーナー回った時は厳しいかと思いましたが、御神本騎手が最後までしっかり動かしてくれましたね。今までで一番強い内容でした!」と渡邉調教師は力を込めた。

蹄の不安がありここまでの道のりは決して楽ではなかったが、馬の力を信じた陣営の思いと、それに応えたミックファイアの走りはまさに人馬一体。記録にも記憶にも残る衝撃的な三冠制覇だった。

この後は休養に入り、秋からは古馬との戦いが待っている。「無敗の三冠馬に恥じないレース選択をしてあげたいと思っています。地元大井で行われるJBCクラシック、結果しだいではJRAのチャンピオンズカップにも挑戦したいとオーナーと話しています」と渡邉調教師。さらなる高みへ向けてミックファイアの道は続く。

歴史に残る三冠馬誕生で幕を閉じた今年の南関東クラシックは、競馬の面白さ、奥深さを改めて実感するレースでもあった。そして来年からは新たなステージに入る。地方・中央のダート3歳戦線にはどんなドラマが待っているのか楽しみだ。

取材・文秋田奈津子

写真早川範雄(いちかんぽ)

Comment

御神本訓史騎手

最高です!パドックから返し馬にかけて落ち着いていたし雰囲気はとても良かったです。この2走とはペースが違ったので手ごたえはあまり良くありませんでしたが、馬の気持ちが強かったですね。JRAの超一流馬相手にこのような強い競馬で勝ち切ってくれて今後に繋がる光がかなり見えてきたと思います。

渡邉和雄調教師

調整が今までで一番上手くいき馬体も羽田盃とは別馬のようになっていました。残り数十メートルで替わるなと思った瞬間は本当に嬉しかったです。この厳しい競馬を勝ち切るのは、能力とレースセンス、そして心肺機能の高さがあるからです。まだ伸びしろも十分ですし秋にはもっと強い姿をお見せします。