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第27回マーキュリーカップJpnIII

人気にこたえ4馬身差圧勝
  秋の大舞台へ視界良好

2016年、メイセイオペラが韓国済州島で死去したことを受け、マーキュリーカップJpnIIIは“メイセイオペラ追悼レース”の名称で実施。翌年から『メイセイオペラ記念』の副称が付記され、現在に至っている。

1998年、メイセイオペラは帝王賞GI・3着から帰郷後、第2回マーキュリーカップGIIIへエントリー。圧倒的な1番人気に応え、7馬身差で圧勝。直線を向いて鞍上・菅原勲騎手が後ろを振り向いて確認したのは、JRA勢の強さを誰よりも知っていたから。後に南部杯、フェブラリーステークス、帝王賞とGIを3勝するまで出世した礎(いしずえ)をこのレースで築いた。

メイセイオペラのエピソード、秘話をどれほど伝えたかな、とふと考えた。おそらく半分もないと思う。ダービーグランプリGIを前にして、馬房内で前頭骨を骨折。その報を聞いて水沢へ駆けつけると厩の奥で鼻血をにじませながら、痛さにじっと耐えていたメイセイオペラを思い出す。いつか、タイミングが合えば紹介したいが、お蔵入りでもそれはそれでいい。

さて本題。今年のマーキュリーカップJpnIIIは見どころ満載だった。前年の1~3着馬がすべて出走。優勝したバーデンヴァイラーはこのレースが初重賞制覇。レース後のインタビューで齋藤崇史調教師が「偉大な姉(マルシュロレーヌ)に少しでも近づけたかな、と思います」と語ったのが印象的だった。マーキュリーカップJpnIIIはリピーターの活躍が多いことでも定評がある。バーデンヴァイラーは史上4頭目の2連覇を目指した。

テリオスベルは昨年2着。重賞初挑戦だったが、向正面からロングスパートを敢行。最後の最後でバーデンヴァイラーに交わされたが、クビ差2着に粘った。

ヴァケーションは昨年、岩手入り。シアンモア記念で見事復活し、一條記念みちのく大賞典3着からこのレース3着に健闘した。今年はみちのく大賞典馬の箔をつけて挑戦した。

しかし、この3頭よりも注目を集めたのが単勝1番人気に支持されたウィルソンテソーロだった。デビュー4戦目からダートへシフトして覚醒。4連勝を飾り、一気にオープン入りを果たした。名古屋城ステークスは5着に敗れたが、続くかきつばた記念JpnIIIではJpnI(全日本2歳優駿)ホース・ドライスタウトとの叩き合いを制して快勝。ドライスタウトの土俵(1500メートル)での勝利だったから、なおさら価値があった。

父は今を時めくキタサンブラック。イクイノックス、ソールオリエンスなど数々の強豪を送り出し、先日のセレクトセールでも高額落札馬が続出。当然のようにウィルソンテソーロの動向にも注目が集まった。

逃げたのは大外メイショウフンジンだったが、例によってテリオスベルが手綱をしごいてハナを主張。2コーナー手前で先頭に立ち、4コーナーでも3馬身のリード。

一方、ウィルソンテソーロは前半「リズムを優先」(川田将雅騎手)させ、満を持して3ハロン標識から徐々にスパート。残り200メートルでテリオスベルを捕らえると、一瞬のうちに4馬身差をつけてゴールに入った。

ダート競馬でこの切れにはしびれてしまった。「今後についてはオーナーと相談して決めたい」と小手川準調教師は慎重に語ったが、川田騎手は「もう少し上のステージで戦えるよう準備ができたら」とコメント。おそらく秋のビッグレースも視界に入ったに違いない。

取材・文松尾康司

写真佐藤到(いちかんぽ)、NAR

Comment

川田将雅騎手

無事にいい内容で勝つことができて何よりです。中間の暑さがどこまで影響するか。あとは2000メートルをどれだけの内容で走れるかに重きを置きましたが、どちらもこなしてくれてホッとしました。前回、初めて騎乗してとてもいい馬だなと思いましたが、今回は中身的にダート馬としてしっかりしてきました。

小手川準調教師

前回、川田君に乗ってもらって褒めてくれたので、自信を持つことができましたし、しっかり仕上げることができました。ダートでも切れ味を発揮できるのがこの馬の武器。今後についてはオーナーと相談して決めたいと思いますが、2000メートルも坂もこなしてくれましたからね。この先の夢が広がりました。