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ヤングジョッキーズシリーズ TR 高知

佐賀に続きJRA騎手が2連勝
 濱騎手が地元に戻って健闘

「1年のほとんどが重か不良」「砂が深くて乾かない」とファンの間で囁かれてきた高知競馬場。ところが、この2年ほどは馬場が早く乾くようになり、前週の月曜日に12ミリの降水を観測したが、ヤングジョッキーズシリーズ(YJS)当日は稍重。馬が駆けるたびに砂埃が舞った。

今年3月にデビューし、両親が笠松の元騎手という田口貫太騎手(JRA)は、第1レースでエキストラ騎乗。高知初騎乗で勝利を挙げたが、「これまで乗った地方の競馬場よりも砂が深くて、返し馬から馬の走りが違いました」と驚いた。そうなると、深い馬場に慣れた地元騎手に有利かと思われたが、第1戦、第2戦と連勝したのは松本大輝騎手(JRA)だった。

第1戦は、兵庫で期間限定騎乗中のため約3カ月ぶりに地元でのレースとなる濱尚美騎手(高知)による逃げ。その外に泉谷楓真騎手(JRA)がつけ、松本騎手はそれらを見る4番手で運んだ。直線を向いても濱騎手が粘れそうな手応えだったが、一完歩ずつ着実に迫ったグランチェイサーと松本騎手がアタマ差で勝利を手にした。ゴール寸前で差し切ったのには松本騎手の戦略があり、気難しさを抱える馬のため「最後に交わせるよう、余力を残しながら運びました」と、末脚を逆算。

対して濱騎手は「悔しい。ホントに悔しいです。勝てていましたよね」と地団駄を踏んだ。とはいえ、過去4年のトライアルラウンド(TR)では3着と5着が1回ずつあるのみで、これほどまでの見せ場を作れたのは初めて。そこには、期間限定騎乗中の所属先である新子雅司調教師から騎乗フォームや追い方などの指導を受けた成果が出ているのだろう。

3着には長尾翼玖騎手(兵庫)が勢いよく伸びてきたが「道中で全然進んでいかなくて、位置取りが後ろすぎました」と、前半の競馬が響いたよう。そこへ明るい表情でやってきたのは4着・岡遼太郎騎手(高知)。騎乗馬は逃げ・先行タイプだが、「スタミナ不足の馬なので、4コーナーからだけ追おうと思っていました」と、普段とは正反対の戦法を取ることで、上位へと持ってきた。これには宮川浩一調教師も「上手く乗った!」と褒め、12ポイントを獲得できた。

第2戦はスタートダッシュの速いデロリスと松本騎手が逃げ、前半400メートルは第1戦より0秒4遅いペース。そうなると前有利で、松本騎手が逃げ切って2連勝を果たした。

上位3頭は道中の位置取り順で決着し、1馬身半差2着は勝ち馬の直後にピタリとつけた加藤翔馬騎手(金沢)。父・加藤和義調教師も見守る中でのレースだったが、「地元と違って馬場が重たいですね。もう少し相手にプレッシャーをかけにいけばよかったかもしれません」とのこと。3コーナーでは並びかけに行ったが、勝った松本騎手は「それに付き合わず、ワンテンポ遅らせて仕掛けました」と話しており、松本騎手が一つ上手だった。

3着・岡騎手は「ゲートを出てフラフラしていたので、ムチを入れて前に行った方が集中力が上がるかなと考えて、勝ちに行きました」という中での敗戦で、第1戦とは対照的に悔しさを滲ませた。

すると、加茂飛翔騎手(佐賀)が「めっちゃ締めてくるやん」と、無念そうな表情でやって来た。加茂騎手が話す場面は1周目ゴールから1コーナーにかけてで、岡騎手が内の加茂騎手を砂の深いインにじわっと押し込めたのだ。馬同士の間隔がかなり広く見えた第1戦とは対照的に、第2戦のこの2人は鐙がぶつかりそうなほどタイトな間隔で1コーナーを回っており、互いに譲れぬポジション争いをしていたことが窺える。加茂騎手の馬は深い砂に体力を奪われ、3コーナー手前で失速して12着。7月9日に地方通算101勝目を挙げ今年が最後のYJSなのだが、TR佐賀では惜しい2着があり、次こそはと勝利を熱望していた。

2連勝を決め、JRA西日本暫定1位タイの松本騎手はこの日、第1レースから最終第11レース・一発逆転ファイナルレースまで、YJSのほか計5鞍に騎乗。その全ての騎乗馬を用意してくれた雑賀正光調教師からは「馬場状態についてもたくさん教えていただき、自信に繋がって落ち着いて乗れました」と松本騎手は感謝。雑賀調教師もYJS第2戦勝利後は「やったな!」とホクホクの笑顔で祝福にかけつけた。

西日本2つめのTRが終わり、地方の暫定1位はこの日2着、5着でまとめ30ポイントの濱騎手。2位は加藤騎手で28ポイントだが、こちらは次のTR金沢で戦いを終える予定だ。対して8位12ポイントの浅野皓大騎手(愛知)はまだ3戦(予定)を残しており、6月に重賞初制覇を果たした勢いに乗りたいところ。長江慶悟騎手(笠松)や、「普段のレースより展開が読みづらくて難しい」と初出場で苦戦ぎみだった阿部基嗣騎手(高知)らにもまだまだチャンスはある。

取材・文大恵陽子

写真桂伸也(いちかんぽ)

Comment

第1戦/第2戦1着 松本大輝騎手(JRA)

TR佐賀では同期の小沢大仁が2勝していたので、追いつけて嬉しいです。YJSはペースが速くなって前に行った馬の共倒れが多いので、第2戦はできるだけペースを落とそうと思い、追い出しも最後まで待つ競馬ができました。初めての高知騎乗で、エキストラ騎乗も含めいい経験ができました。