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ヤングジョッキーズシリーズTR 盛岡

今年3人目の2戦2勝
  地方は大木騎手が健闘

盛岡競馬場でのヤングジョッキーズシリーズのトライアルラウンドは、真夏の太陽が照りつけるなかでの開催。当日の盛岡市の最高気温は33度で、山のなかにある盛岡競馬場といえどもレース中に屋外に出てくる人はまばら。それでも第7レース後に行われた騎手紹介式には熱心なファンがウイナーズサークルの周囲に集まってきた。

出場予定は地方が8名でJRAが6名。しかし大井の木澤奨騎手が疾病のため、騎乗予定だった馬には第1戦が塚本涼人騎手、第2戦は関本玲花騎手と、減量騎手を卒業した2名の若手に騎手変更となった(ポイント対象外)。

盛岡競馬場は日曜日から気温が高い状況が続いて、高松亮騎手によると「インコースと逃げ先行タイプが有利」というコンディション。検量室前でレースを見ていた木間塚龍馬騎手(船橋)は「第1戦はペースが速くなると思うんですが、馬場を考えると後ろからでは届かないですよね」と思案していた。

ただこの日、南関東の騎手は事前に1回ずつの騎乗機会が用意されていて、木間塚騎手は第4レースで3着に入っていた。一方、地元岩手の佐々木志音騎手を除けば、南関東以外から参戦となる若杉朝飛騎手(北海道)とJRA騎手は、第1戦がこの日の初騎乗となる。

その点では南関東所属騎手が有利。ダート1200メートルで実施される第1戦のゲートが開くと、最内枠から大木天翔騎手(大井)が好スタートを切り、続いて仲原大生騎手(大井)、佐々木志音騎手も逃げ争いに参加。そこにJRAの永野猛蔵騎手も加わった流れは速かったようで、最後の直線に入ったところで仲原騎手が失速。大木騎手の騎乗馬も脚が上がってきたところ、3番手を追走していた永野騎手が残り200メートルあたりで先頭に立って押し切った。

勝ったタニマサベーカは、担当厩務員がレース前に「この馬はJRAにいたとき、永野騎手が乗ったことがあるんですよ」と話していた。その期待どおりの結果になったことで、検量室前で愛馬を出迎えて大喜び。永野騎手も30ポイントの獲得に笑顔で記念写真におさまっていた。

7馬身差の2着は、馬群の外を回って伸びてきた塚本騎手。出遅れたものの最後の直線で差を詰め3着に入った小林美駒騎手(JRA)は「ゲートに課題があると聞いていたので気を付けていたんですが……。でも返し馬の雰囲気も道中の手ごたえもよくて、最後はよく伸びてくれました」と話した。

逃げた大木騎手は4着。「過去の成績的にも行くしかないと考えて逃げましたが、後ろから来られてきつい競馬になってしまいました」とサバサバと話し、5着に入った原優介騎手(JRA)は前残りの流れでよく伸びてくれましたが、もう少し前の位置を取れていたなら、という思いはあります」と次のレースを見据えた。

それにしても5着以内の馬は、逃げ先行か追い込みで、中団に構えた馬たちがいまひとつだったというのは、普段のレースではあまり見られない形。これもヤングジョッキーズシリーズらしいといえるのかもしれない。

第2戦は直後の第11レース。第1戦を振り返る時間は少なく、参加騎手は準備をして、騎乗馬にまたがって本馬場へと向かっていった。

続く舞台はダート1600メートル。2走前までに逃げたことがあるのは4頭で、ゲートが開くとそのうちの3頭が好スタートを切って、永野騎手がハナを取った。差なく追走した佐々木志音騎手は4コーナーあたりで失速。流れが「速かったです」と3番手から一旦は並びかけた大木騎手は第1戦に続いて粘り込みを図ったが、永野騎手が最後の直線で独走。2着の大木騎手に9馬身もの差をつけた。

勝ったガマンは盛岡で6戦6勝の成績だったが、前走は逃げられずに大敗していた。永野騎手は「前走の騎手から聞いた話と、乗った時に感じた砂をかぶらないほうがよさそうという点を考えて、スタートから出していきました」と笑顔。差のある2着に敗れた大木騎手は「あれだけ離されたらしょうがないですね。でもポイント的にはまあまあかな」と、2年連続のファイナルに向けて手ごたえを感じたようだった。

3着には菅原涼太騎手(大井)が入り、4着には原騎手。「本当はもう少し前に行きたかったんですが、逃げた馬についていったらどうなっていたか。でも2戦とも掲示板に載れたのはよかったと思います」と、東京から応援に来た両親の前で上々の結果を見せた。

対照的に、5着の仲原騎手は納得がいかぬという表情で「最後はインコースから差を詰めましたが、もったいない競馬をしたなあと思います」とコメント。しかし最低人気馬での5着だから価値がある。そして仲原騎手は盛岡が今年のヤングジョッキーズシリーズの初戦。地方東日本地区の上位4人に入る可能性は十分にある。

今年のトライアルラウンド盛岡でもっとも目立ったのは、間違いなく永野騎手。1人だけで臨んだ表彰式のあと、集まったファンの要望に最後まで応えていた。そして検量エリアに戻ったところで「新幹線まであまり時間がないんですが、砂をまったくかぶっていないのでシャワーなしで帰ります」と笑った。


取材・文浅野靖典

写真佐藤到(いちかんぽ)

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第1戦/第2戦1着 永野猛蔵騎手(JRA)

第1戦は馬のリズムを大事にしながら進めましたが、4コーナーで少し反抗するようなところがあったので、そこは動くようにと促していきました。2戦目は4コーナーでも手ごたえがあって、これなら大丈夫だろうという感触でした。2頭ともチャンスがありそうだったので、うまく勝つことができてよかったです。