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第57回黒潮盃

米国帰りのライバルを振り切り
  春二冠とも2着の悔しさ晴らす

今年の3歳秋のチャンピオンシップは13日の佐賀・ロータスクラウン賞からスタート。その2戦目となる今回は、レース前から話題満載の一戦となった。米国のサンタアニタダービーGIで2着、ケンタッキーダービーGIにも出走(12着)した大井のマンダリンヒーローが帰国初戦を迎え、金沢の無敗牝馬ショウガタップリが初の他地区遠征、羽田盃と東京ダービーで2着のヒーローコール(浦和)が秋の巻き返しを期して参戦。ダービーグランプリを頂点とした今後の3歳路線を見ていくうえで、大きなターニングポイントとなることが予想された。

レースは的場文男騎手が手綱をとる浦和のウインドフレイバーが先導。マンダリンヒーローとヒーローコールがこれに続き、その後ろにショウガタップリがつける。前半の3ハロンは37秒8。時計が速い今の馬場としてはスローペースで進んだ。

ウインドフレイバーの的場騎手が余裕の手応えで逃げるなか、ヒーローコールの森泰斗騎手、マンダリンヒーローのライアン・クアトロ騎手は終始手綱を動かしながら追走。最後の直線でも差は詰まらず、的場騎手の最年長重賞勝利記録の奪還も頭をよぎる展開となった。しかし、残り100メートルでヒーローコールが先頭に立つと、さらに加速。外から迫るマンダリンヒーローを振り切り、1馬身3/4差で3度目のタイトル制覇を飾った。

結果的には2月の雲取賞と同じ1、2着。しかし、その後の過程を考えてみると、ヒーローコールにとっては大きな意味合いを持つ勝利だった。主役を演じるはずだった春の悔しさを晴らしただけでなく、別定58キロを背負いながら力でねじ伏せる貫録の勝ち方。好位で立ち回る本来の競馬ができたことも大きく、前走のサンタアニタトロフィー(10着)で古馬の厳しい流れを経験したことがこの勝利につながった。復権へ向け、大きな一歩を踏み出したといえる。

マンダリンヒーローにとっても、この2着は大きい。日本の競馬界全体で見れば、海外遠征は当たり前の風潮になっているが、厩舎サイドにとっては初物づくし。予想以上の長旅となった帰途から立て直しを図り、出国前と同様のパフォーマンスを見せたことは、馬自身のタフな精神力と陣営の努力の賜物だろう。「今回は勝ち馬が強かったことは認めざるを得ないけど、今後も活躍できるだけの素質がある」とクアトロ騎手。良化必至の今後に注目だ。

ショウガタップリは6着。道中は終始他馬に囲まれ、3コーナーでは両サイドから挟まれる不利があった。小柄な牝馬にとっては厳しい展開だったが、それでも4コーナーで外に持ち出すと懸命な追い上げを見せた。吉原寛人騎手も「これを次に生かせれば」と前を向くだけに、さらなる飛躍を期待したい。

見せ場を作って3着に粘ったウインドフレイバーと的場騎手を含め、今回の一戦は非常に見応えがあった。秋へ、全国へ、そして打倒ミックファイアへ向けて、それぞれの戦いが始まっている。

取材・文大貫師男

写真築田純(いちかんぽ)

Comment

森泰斗騎手

ミックファイア不在のここは負けられないですね。前走のようなもまれこむ形だと力を出しきれないので、いいポジションを取れたと思いました。後ろからのマンダリンヒーローを警戒しつつ、的場さんの馬と併せて集中させました。まだ気持ちに余裕がある馬なので、伸びしろもあると思います。

小久保智調教師

前めにつけてほしいと思っていましたが、うまく先行できたので大丈夫だろうと思って見ていました。暑いなかでもよく餌を食べてくれていたので、馬体重が7キロ増えてくれたのだと思います。予定通りいけば、次走は戸塚記念。歯痒いレースが続きましたが、今後は勝ち続けられるように頑張ります。