長かった夏も終わりを迎えようとしている。ヤングジョッキーズシリーズ（YJS）トライアルラウンド（TR）金沢の翌日は二十四節気の処暑で、暦の上では厳しい暑さの峠も越えた頃となる。しかしながら、日中はまだまだ気温30度超えの真夏日。鷲頭虎太騎手（JRA）が「調教で日焼けしました」と話せば、今村聖奈騎手（JRA）も「日焼けした肌が痛いです」と、文字通り肌で夏を感じていた。

この日が今年のYJS初戦となるのは先述の2人と永島まなみ騎手（JRA）、古川奈穂騎手（JRA）。地方からは8月18日に地方通算100勝を達成した深澤杏花騎手（笠松）、今年デビューの松本一心騎手（笠松）と大畑彗悟騎手（愛知）がYJS初戦を迎えた。なお、兼子千央騎手（金沢）が怪我のため、濱尚美騎手（高知）が1鞍から2鞍に、騎乗予定のなかった合林海斗騎手（佐賀）が1鞍騎乗へと変更となったのだが、これが濱騎手にとっては大きな追い風となった。

第1戦は前走を1秒2差で圧勝して昇級初戦の馬に騎乗する小沢大仁騎手（JRA）が1番人気。しかしながら、逃げ・先行タイプが多く、レースは前半から入れ替わり立ち替わりの展開となった。

まず先手を取ったのは内から好スタートを決めた濱騎手。そのまま逃げるかと思われたところ、外から山田義貴騎手（佐賀）が交わしにかかり、2コーナーではさらに山本屋太三騎手（兵庫）も先行争いに加わった。濱騎手はそこで控えたが、そうなると逃げた山田騎手と2番手の山本屋騎手は厳しくなるもの。それらを見る位置につけた大畑騎手とレモンが直線半ばで抜け出すと、ゴール直前で内外から迫られ4頭ひと固まりになりながらもアタマ差しのいで1着でゴールした。小沢騎手は外から詰め寄るも2着で、内をロスなく運んだ古川騎手がクビ差3着、写真判定のハナ差4着に濱騎手だった。

10番人気で勝利を手にした大畑騎手は、「ゴールした時は勝ったか分からなくて、『勝っててくれ』と願うだけでした」とフレッシュな笑顔を見せた。対して、2～4着の3人は僅差なだけに3～4コーナーでの進路取りで明暗が分かれた。小沢騎手は「前の馬が外に出て、思ったより外を回らされました。YJSだし、内を狙ってもよかったかも」と話せば、濱騎手も「もっと綺麗に回っていれば、着順が1つ変わっていたかも」と唇を噛んだ。対して、古川騎手は「内は深いと聞いていましたが、向正面で外に他馬がいたのでロスなく運びました」という判断がプラスに働いた。

3連単は25万6930円の波乱だったのだが、第2戦はさらに1桁大きい大波乱となった。その立役者は単勝最下位人気の濱騎手とマノンルージュ。合林騎手と古川騎手が後続を5馬身以上離して逃げる展開を後方に控えると、直線で力強く抜け出して2馬身半差で勝った。すると、「マジか！」と喜びながら飛んできたのは昨年金沢リーディングの青柳正義騎手。「自厩舎の馬で、メンバー的に厳しいと思っていましたが、よかったです。ペースが落ち着くと掛かってしまい最後に脚がなくなるんですけど、ハイペースになったので後方でじっとしていられましたね」とのこと。濱騎手も過去4回のYJSではほとんど見せ場を作れなかったが、念願のYJS初勝利を挙げることができた。

2着は今村聖奈騎手で、4コーナーでは勝ち馬と併せる場面もあったが「内外の差もありましたし、外に張っていましたが、真面目な性格で馬が頑張ってくれました」。3着にはここでも9番人気と人気薄だった大畑騎手、古川騎手が4着で第1戦に続き掲示板を確保した。

3連単は266万1760円。YJS創設当初こそハイペースのレースが多かったものの、近年は比較的ペースが落ち着き想定外の展開になることは少なくなっていたが、TR金沢では今年デビューの騎手が各レース12名中4名も参加したことで、大波乱を呼び起こした。

順位は濱騎手が地方西日本1位をキープ。あと2戦の騎乗予定を残しながらも72ポイントまで伸ばし、ファイナル進出がクッキリと見えてきたと言えるだろう。2位に1着・3着の大畑騎手で45ポイント。JRAではTR佐賀で2連勝を決めた小沢騎手が2着・10着で合計81ポイントとして首位をキープしている。

地方・JRAともに西日本は特定の騎手の活躍が目立つが、TRはまだ3場残されている。