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第27回黒潮菊花賞

出遅れも早め先頭で完勝
  底知れぬ強さで高知三冠

7月の大井・ジャパンダートダービーJpnIでは強力な中央勢を破って南関東に三冠馬が誕生したが、高知でも型破りな三冠馬が誕生した。南関東の三冠馬がミック“ファイア”なら、高知の三冠馬はユメノ“ホノオ”。今年の3歳世代は東の“火”と西の“炎”の独壇場となった。

中央馬を破ったミックファイアは既に世代トップの能力を証明済みだが、対するユメノホノオは高知でしか走っておらず、未知数の部分は多いが、多くの名馬に騎乗してきた吉原寛人騎手が、そのポテンシャルを高く評価しており、今後の活躍に注目が集まる。

ユメノホノオの単勝オッズは最終的には1.1倍も、発売段階のほとんどの時間は元返しの1.0倍だった。黒潮菊花賞と同距離の高知優駿で2秒1差の圧勝だったことを思えば、そうなるのも当然だった。2番人気は黒潮皐月賞でアタマ差2着、高知優駿は3着のデステージョで6.0倍。今回は、主戦の宮川実騎手がJRA札幌のワールドオールスタージョッキーズに出場のため、永森大智騎手が代打を務めた。3番人気以下は10倍以上で、色濃く1強ムードを示していた。

スタートではユメノホノオが大きく出遅れた。高知優駿でも出遅れたが、今回はそれ以上。田中守調教師が「他の馬が出てから、一瞬間を置いて出た。あまりに出るのが遅かったので、他の馬と一緒に出たのかと思った」と振り返るほどだった。発馬シーンの映像を見直しても、ゲートからわずかに首ほど出たところしか、確認できなかった。大本命馬の大出遅れに場内はどよめいた。

1周目の直線で中団まで盛り返したユメノホノオは、いつも通り、向正面で一気に進出、3コーナーでは先頭に躍り出る。追いすがったのは序盤から手綱を押して積極策を取っていたデステージョ1頭だけ。直線もセーフティリードを保ったまま、1馬身半差で14年ぶり4頭目の高知三冠馬が誕生した。

2着デステージョの永森騎手は「思った競馬はできた。ただ、相手が強すぎました」と勝ち馬の強さを称えた。

大出遅れで冷や冷やさせながらも、終わってみれば早め先頭から危なげない勝利。型破りなヒーローを吉原騎手は「高知優駿以上に出遅れてしまい、リズムを作りきれなかったが、状態が良かったので、馬に任せて進めた。本当に強かった。馬に感謝してます」とねぎらった。

同騎手はハッピースプリント(南関東二冠、ジャパンダートダービーJpnIでハナ差2着)やミューチャリー(JBCクラシックJpnI・1着)など地方競馬のトップホースの背中を知っている。それらの名馬と比べた上で「同等、もしくは、それ以上のものはある。こんな馬には、そう出会えない」と断言した。

2021年北海道セプテンバーセールで275万円(税込)の落札馬が高知三冠を制し、収得賞金は7196万円となった。今後の予定について、田中調教師は「ゲートで注意を受けたり、課題も多いので、遠征はまだ先。次走も様子を見てから」と慎重に構える。だだし、それも大きな期待の裏返しではある。

いずれはミックファイアとの“火”と“炎”の三冠馬対決。さらには、中央馬との腕比べなど、高知が生んだニューヒーローの未来絵図は無限に広がる。

取材・文松浦渉

写真桂伸也(いちかんぽ)

Comment

吉原寛人騎手

ゲートの悪さは血統面の影響もあるかもしれない。普段から返し馬の時に気合が入らない面があるが、今回は反応したので大丈夫と思った。この暑さなので、高知優駿より状態が良くなるのは難しいと思っていたが、維持できていて、状態は良かった。本当に強い馬です。

田中守調教師

前にゲートで立ち上がってから尻尾を持つようにしていたけど、高知優駿も今回も、それが裏目に出たかも。次は持たない方がいいかな。向正面で上がっていった時には大丈夫とは思ったけど、それまでに脚を使ってるんで、2着馬が迫ってきた時には、ちょっと心配したね。