web furlong ウエブハロン

地方競馬のオンライン情報誌ウェブハロンPresented by National Association of Racing

Copyright(C) 1998-NAR.All Rights Reserved.

第44回王冠賞

一気の仕掛けで他馬を圧倒
  強さ信じた騎乗で三冠達成

ホッカイドウ競馬が“3歳三冠賞”、いわゆる三冠ボーナスを最初に設けたのが2016年。この年の主役は、前年の北海道2歳優駿JpnIIIで2着に健闘したスティールキングだった。内回り1600メートルで行われる北斗盃が、中距離馬にとって最も難関と言われるが、同僚のジャストフォファンを直線で捕らえ、難なく一冠目を手にした。距離延長の北海優駿は、北斗盃上位馬に対してさらに着差を広げ、三冠は確実と思われた。しかし、不良馬場で行われた王冠賞は、ジャストフォファンの逃げ脚が鈍ることなく、追いかけていったスティールキングの方の脚が上がってしまい、4馬身差の完敗。惜しくも三冠を逃した。

「スティールキングで取り逃した悔しさは、今でも強く残っています」と、角川秀樹調教師。二冠では完敗だった僚馬ジャストフォファンが逃げ切ったことは、厩舎にとってワンツーを決めても勝負の厳しさを改めて感じさせられるシーンでもあった。その後、17年のベンテンコゾウ、22年のシルトプレの三冠を阻止したのは、角川厩舎を代表する逃げ馬のスーパーステションとエンリルだった。

北海優駿と王冠賞は、たった1ハロンの違いしかない。北海優駿を勝てば、ほぼ同じメンバーとなる王冠賞も勝てる算段は立つ。「北海優駿と王冠賞は、微妙にローテーションが組みづらい間隔になっているのが、意外と三冠を難しくさせているかもしれません。ひと叩きするには中途半端だし、ぶっつけで向かうには調教スケジュールを組むのも苦労する面はあります」(角川調教師)

19年にリンゾウチャネルが三冠を達成した時、五十嵐冬樹騎手はレース後のインタビューで涙を流した。決して万全の状態ではなかっただけに、後続の追撃を振り切って勝利したリンゾウチャネルの頑張りに、胸を打たれた。昨年のシルトプレは、北海優駿の疲れが取れるまでに時間を要し、やはり完調手前で三冠に挑んだ結果、エンリルの2着に敗れた。ボーナス創設後、三冠すべてに良い状態で挑めたのは、21年のラッキードリームしかいない。

今年三冠がかかったベルピットも、北海優駿の後、挫跖を発症していた。「早い段階でわかったので、王冠賞に直行で行く判断もできたので、割り切って調整していくことはできたと思います」(角川調教師)

ディーエスエールが逃げ、その直後にベルピット。そして二冠とも2着だったニシケンボブが早くも2コーナーで並びかける。人気2頭は行きたがる面を見せていたが、向正面に入ってディーエスエールがラップを上げたところで折り合いをつけた。前半5ハロンのレースラップは、12.8-12.0-12.3-12.2-12.5=61秒8。3コーナー手前で13秒1とラップが緩むところはあったが、ディーエスエールの脚色が鈍った3コーナーでベルピットは一気にチャージを掛けた。後半3ハロンは12.8-13.5-14.0=40秒3と、最後は一杯になったが、2着ニシケンボブに5馬身差をつけて勝利。ベルピットの力を信じた桑村真明騎手の騎乗ぶりに三冠への思いを感じる。

ボーナス創設後では3頭目の三冠馬となった。リンゾウチャネルは南関東、ラッキードリームは兵庫で今もなお活躍。ホッカイドウ競馬の三冠は、全国屈指の体系であることを証明している。ベルピットはこの後、ダービーグランプリに向かう。

「今回という訳ではありませんが、強い馬に乗った時は、強い(と信じる)乗り方をすれば良いんじゃないか、と桑村騎手に話したことがあります」と、角川調教師はレース前の騎手の心構えを弟子に伝えている。三冠への騎乗のみならず、南関東三冠を達成したミックファイアという厚い壁に対しても、強気のレースで盛岡を熱くして欲しい。

取材・文古谷剛彦

写真浅野一行(いちかんぽ)

Comment

桑村真明騎手

無事に三冠を達成できて、心からホッとしています。北海優駿が前半引っ掛かったものの、馬に助けられて勝たせてもらった面がありました。前走を踏まえ、よほどのことがない限り勝てるだろうと、自信を持って挑みました。最後は一杯一杯で内にモタれていましたが、よく凌いでくれました。

角川秀樹調教師

昨年の競馬が終わった後から三冠を意識していたので、無事に達成できてホッとしています。前走後は挫跖がありましたが、間隔があったことで万全に近い状態へ持っていくことができました。心肺機能が素晴らしく、強い馬との対戦でも良い勝負はできると思います。この後は、ダービーグランプリへ向かいます。