web furlong ウエブハロン

地方競馬のオンライン情報誌ウェブハロンPresented by National Association of Racing

Copyright(C) 1998-NAR.All Rights Reserved.

第6回園田オータムトロフィー

ダービー馬が迎えた秋初戦
  直線突き放し5馬身差圧勝

2023年。各地の3歳三冠路線が大いに盛り上がった。南関東ミックファイア、高知ユメノホノオ、北海道ベルピットが三冠を制した。牝馬のダービー馬も4頭現れたが、石川ダービー馬のショウガタップリは南関東(大井)の黒潮盃に挑み6着に敗れた。岩手の二冠馬ミニアチュールも不来方賞で4着に敗れた。無傷8連勝で東海ダービーを制したセブンカラーズは脚部不安のため休養に入っている。

牝馬のダービー馬の残り1頭が兵庫ダービーを勝ち、秋初戦を園田オータムトロフィーで迎えるスマイルミーシャだ。ダービーを制した3頭の牝馬のその後の結果を見ると、不安要素にも思えるが、パドックで落ち着いて堂々と周回する姿は、そんなもの関係ないと言わんばかり。ダービー後も、放牧に出さず、飯田良弘調教師自らが騎乗して調整し、抜かりなく夏を過ごした。それもあって単勝は1.1倍。断然の1番人気だった。

2番人気は一冠目の菊水賞でスマイルミーシャを破り、兵庫ダービーは2着のベラジオソノダラブで単勝は4.4倍。ただし、放牧先から帰厩後2週間ほどで日が浅く、急仕上げは否めなかった。3番人気以下は20倍以上で、ファンは牝馬のダービー馬に全幅の信頼を寄せていた。

ゲートが開くと、意外にもハナを奪ったのは、田中学騎手のスネークアイズ。外の2番手にスマイルミーシャがつけ、逃げると思われたベラジオソノダラブは内の3番手で折り合いを欠き、竹村達也騎手が立ち上がるシーンも見られた。

スマイルミーシャが満を持して抜け出したのは4コーナー手前。逃げ粘るスネークアイズに並びかけ、鞍上のゴーサインに反応。一瞬で後続との差を広げ、ゴールでは5馬身差をつける文句なしの完勝だった。

2着は道中5番手待機で外から伸びた3番人気マルグリッド。「直線勝負は予定通り。このメンバーで勝ち切るには展開の助けが必要ですね」と下原理騎手。3着はベラジオソノダラブ。急仕上げで折り合いを欠きながらのこの結果は、底力をアピールした。竹村騎手は「ハナに行くつもりで押したので掛かってしまった。これを使ってよくなれば」と悔しさをにじませた。

スマイルミーシャを重賞4勝目へと導き、区切りとなる自身の地方通算3200勝を重賞の舞台で決めた吉村智洋騎手は「理想の展開だった。ただ、暑さがこたえているのか、抜け出す時はもっとズキュンと抜け出すのに、いつものパフォーマンスじゃなかった」と完勝劇にも冷静に振り返った。

飯田調教師も「見ていて安心の勝ちっぷり。2着と5馬身も差はあったが、春から実力伯仲だったベラジオソノダラブは急仕上げだったし、今回の差が実力とは思っていない」と勝って兜の緒を締めた。今後については、牝馬の古馬中距離路線への挑戦を表明した。その初戦となる次走は10月27日の兵庫クイーンカップ(園田1870メートル)を予定している。

今年は大豊作と言われる地方競馬の3歳馬。3頭の三冠馬同様、秋初戦を快勝した牝馬の兵庫ダービー馬にも今後、大いに注目が集まる。

取材・文松浦渉

写真桂伸也(いちかんぽ)、NAR

Comment

吉村智洋騎手

パドックも返し馬も落ち着いていたし、道中もリラックスして走っていた。どこでゴーサインを出すかだけでしたね。暑さもこたえているはずだけど、それでも勝ってしまう、えらい馬だなと思います。まだまだ伸び盛りの勢いのある3歳ですし、牝馬で馬格もありますし、先々楽しみです。

飯田良弘調教師

いくらかスローだったが、折り合っていたし、しまいも伸びた。以前より大人しい感じがするのは、精神面の成長と夏の暑さがこたえていることの両方かな。3歳重賞(を使うの)は今回が最後。次からは牝馬の古馬中距離路線で。牝馬で中距離路線を歩める馬はそんなにいないと思いますので。