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第31回青藍賞

断然人気にこたえ逃げ切る
  連勝復活で再び南部杯へ

“ゴールデンヒーラーが青藍賞2連覇を果たし、マイルチャンピオンシップ南部杯へ向けて視界良好!”

キャッチコピー的にはこうなるだろう。2着のリュウノゾロに7馬身差をつけ、鮮やかな逃げ切りを決めた。1分39秒3は水沢1600メートルで行われた青藍賞で史上3番目に速いタイム(水沢・青藍賞レコードはマイネベリンダの1分39秒1)。すべて順風満帆かのように見えるが、ビューチフルドリーマーカップ・レースハイライトでも報告したとおり、ゴールデンヒーラーはフェアリーカップ圧勝まで崖っぷちに立たされていた。

昨年秋から今年、青藍賞までのゴールデンヒーラーを時系列で振り返ってみたい。金沢・読売レディス杯3着から青藍賞へ臨み、2馬身半差で完勝。この結果から盛岡マイル適性が高いと踏んでマイルチャンピオンシップ南部杯JpnIへ挑戦。さすがに相手が強く10番人気に甘んじたが、メンバー最速タイの上がりを使って5着。岩手所属馬がマイルチャンピオンシップ南部杯JpnIで入着を確保したのは2004年ウツミジョーダン(5着)以来の快挙だった。

続いて盛岡で行われたJBCレディスクラシックJpnIへ向かったが、直前に脚部不安が発生して無念の出走取消。その後は生まれ故郷の北海道へ移動して休養に入った。

水沢へ帰郷したのは今年2月。ちょうど岩手競馬アワードの時期と重なり、表彰式会場で渡辺正彦厩務員に近況を聞くと「一回り大きくなって戻ってきました。華奢だった体もふっくらして、今シーズンが楽しみです」

春の目標をシアンモア記念に置き、短距離重賞・栗駒賞から始動。休み明けをまったく問題にせず、4コーナー先頭から2着に2馬身差でゴール。幸先のいいスタートを切った。

ただ、山本聡哉騎手がインタビューを終えた雑談の中で気になる発言をした。「いつもゴーサインを出すと素直に反応したが、今回は反発するところがあった」

会心のレースでなかったのは表情で分かったが、場の雰囲気を考えて突っ込んでは聞かなかった。

予期せぬことには伏線があることが多い。予兆と言い換えてもいいかもしれない。1番人気に支持されたシアンモア記念だったが、逃げ一杯で6着。地元同士の戦いで初めて掲示板外に沈んだが、2番手で徹底マークの戦法に出たヴァケーションも7着に沈み、共倒れが敗因かとも思った。

さらに追い打ちをかけたのが一條記念みちのく大賞典だった。ヴァケーションが8馬身差で逃げ切ったのに対し、ゴールデンヒーラーは“らしさ”の片りんすら見せず8着に終わった。

冒頭と重複するが、牝馬準重賞・フェアリーカップは佐藤祐司調教師が「引退も選択肢に入っていた」と語った一戦。山本聡哉騎手が担当医にお願いし、手術の日を遅らせたのはゴールデンヒーラーに騎乗したいがためだった。

ゴールデンヒーラーはそこから2連勝で立ち直った。今回の鞍上は兄・山本政聡騎手。プレッシャーが相当あったようだが、正攻法で見事勝利に導いた。昨年のマイルチャンピオンシップ南部杯JpnI・5着も山本政聡騎手だった。目指すのは昨年の再現。いや、ファンも関係者もそれ以上を夢見ている。

取材・文松尾康司

写真佐藤到(いちかんぽ)

Comment

山本政聡騎手

レース前は2、3番手を考えていましたが、出脚が良かったのでそのまま行かせました。残り800メートルからペースが上がって厳しい競馬。後続もそうでしたが、自分の馬も直線で脚が上がったので、もうひと踏ん張りしてくれとハミをかけ直しました。持っている力が大きく、しっかり勝ち切ってくれました。

佐藤祐司調教師

今回は負けられないメンバーでしたが、先週、ミニアチュールで三冠を狙って4着に敗れた直後でしたからね。負の連鎖が起こらないか心配でしたが、勝ってくれてホッとしました。今日の勝利は大きいと思います。次走は昨年と同じく南部杯へ直行する予定。今年もいい競馬を期待します。