早め先頭から直線独走
強気の攻めで他馬を圧倒
3歳秋のチャンピオンシップの南関東所属馬による戸塚記念。ファイナルのダービーグランプリに出走を予定している三冠馬ミックファイアは不在だが、南関東の精鋭たちが川崎競馬場に集結した。
羽田盃&東京ダービーともに2着のヒーローコール、アメリカに遠征しサンタアニタダービー2着のマンダリンヒーロー。さらに、東京ダービー3着ナンセイホワイトの3頭が単勝一桁台の支持を集めた。
終わってみれば、1番人気ヒーローコールの強さにはただただ驚くばかりだった。2着のマンダリンヒーローに6馬身差。黒潮盃からの連勝で、4つ目のタイトルを手にした。
ヒーローコールは、逃げたローアヴァンフレアをぴたりと2番手でマーク。コンビを組む森泰斗騎手は「逃げ馬が作ってくれたペースもちょうど良くて、今日の馬場傾向を考えても、この馬にとってベストポジションが取れました。最後に離して勝った要因でもあると思います」と振り返る。
強気な競馬は小久保智調教師の指示通り。2周目の2コーナーで先頭に立つと、3コーナーの勝負どころで後続を引き離し、直線では独走となった。ゴール後に、森騎手としては珍しい大きなガッツポーズ。「ミックファイアと再戦するまでは負けちゃいけないんだということを、馬に伝えながら追いました」
ヒーローコールは川崎コースとの相性も抜群で、これで6戦5勝だ。2歳時は4連勝で鎌倉記念を制すると、唯一敗れた全日本2歳優駿JpnIでも地方馬最先着の4着。
NARグランプリ2歳最優秀牡馬を受賞した際の主戦騎手は、先日他界した左海誠二調教師だった。「誠二さんがあんなことになってから最初のレースだったので、最後は複雑な思いで追いました。今日は別格の強さで、誠二さんの後押しもあったんじゃないかなと思っています」。口取り撮影で馬場へ入る際、ヒーローコールの馬上から右腕をあげて天を仰いだ森騎手。「『誠二さん、やったよ』って伝えました」
ヒーローコールの次走は未定だが、いずれ実現するであろうミックファイアとの再戦が今から待ち遠しい。
なお、2着のマンダリンヒーローも3着タイガーチャージに5馬身差をつけた。初騎乗となった自厩舎の安藤洋一騎手は「デビュー前から追い切りには跨らせてもらっているので、どのくらいの脚を使えるか自信はありました。道中はすごくリラックスして走れて脚は使えると思いましたが……。最低限イメージしたレースはできましたが、逆転するには全体的な流れが遅くて厳しかったです」とコメント。
地方所属馬として初めてアメリカに遠征し、ケンタッキーダービーにも挑戦。新しい道を切り開いたマンダリンヒーローは、帰国後も高いレベルで走り続けている。今後のプランも楽しみだ。
取材・文高橋華代子
写真築田純(いちかんぽ)
森泰斗騎手
前走時より間隔もありましたし、馬の体調もすごく良さそうだったので、負けられないという気持ちで緊張しました。間隔を空けずにコンスタントに使われながらも力をつけていて、これも小久保厩舎流ですね。この成長曲線のまま秋を迎えて、来年になってさらに力をつけていって欲しいと思います。