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ヤングジョッキーズシリーズTR 船橋

1着2着の大木騎手が地方トップ
  JRAは第2戦3着の横山騎手が首位

ヤングジョッキーズシリーズ(YJS)も東日本はいよいよ最後のトライアルラウンド(TR)を迎えた。しかし地方・JRAともに上位は僅差で、一発逆転が起きてもおかしくない状況。それを表すかのように、落ち着きなく検量室付近を歩き回っていたのが野畑凌騎手(川崎)だ。自身のTR騎乗は全て終了し、地方東日本で暫定2位。船橋の結果次第でファイナル進出の可否が決まるとあって、騎乗の合間にYJSの行方が気になって仕方なかったようだ。

第1戦は先行して好成績の馬に騎乗の木間塚龍馬騎手(船橋)と水沼元輝騎手(JRA)が単勝3倍台で人気を分け合う形。その2頭がスタートから前に付けようとする中、4番人気・秋山稔樹騎手(JRA)が内から先手を取った。3頭は半馬身~1馬身ほどの差でレースを引っ張り、4番手以降はやや間を空けての追走となった。

この形では逃げ馬にとっては息が入りづらかったのか、秋山騎手は3コーナーで後退。代わって木間塚騎手が脚色よく抜け出そうとしたところ、内で踏ん張っていた水沼騎手が直線を向いて先頭へ。しかし後方から大外を飛んできた大木天翔騎手(大井)が最後の数完歩でクビ差だけ前に出て差し切り勝ち。

2着に水沼騎手、2馬身半差の3着には中団から脚を伸ばした仲原大生騎手(大井)、4着に新原周馬騎手(川崎)、5着は単勝253.9倍の石田拓郎騎手(JRA)だった。

「すみません」と表情を崩して悔しがったのは水沼騎手。「残り200メートルでもまだ先頭だったんですけど」というのだから、悔しいのも仕方ないだろう。後続に飲まれて8着だった木間塚騎手も「内がガッツリ空いていたので、3番手外じゃなくて逃げ馬の後ろでよかったかもしれません」と反省。対して3着・仲原騎手は「ゴールの瞬間『うっ!』と声が出ちゃいました」と、気合いで写真判定の3着をもぎ取った。「今年が最後のYJSだから、ファイナルに行きたいです。次は何着までに入れば可能性がありますか?」とポイントを確認。新原騎手も同様に確認していると、地元の調教師たちからは「1着だよ」と激励され、木間塚騎手は見学の野畑騎手から「がんばってくれ。次、人気馬だろ?」と励まされた。

しかしながら、この時点で野畑騎手が暫定4位で木間塚騎手は8位。木間塚騎手が第2戦で5着以内だと、野畑騎手は5位以下に転落することを意味しており、各々複雑な心境を抱えながら第2戦へと向かった。

第2戦は外から大木騎手が勢いよくハナに立ち、2番手外に佐藤翔馬騎手(JRA)、直後のインに新原騎手がつけた。直線を迎えてもなお大木騎手は約1馬身のリードを保ったままで、2連勝なるかと思われたが、佐藤騎手が手前を替えてグイッとひと伸びを見せ、クビ差で勝利を収めた。2着に大木騎手、2馬身差の3着に横山琉人騎手(JRA)、クビ差4着に新原騎手、さらに3馬身離れた5着に水沼騎手だった。

「楽に行こうと思ったんですけど引っ掛かってしまって、2着は馬の能力です」と話した大木騎手だが、第1戦の勝利が大きな後押しとなり、第1戦前の暫定8位から逆転の地方東日本1位でTRをフィニッシュ。昨年に続いてファイナル進出となる見込みだ。4着・新原騎手も「直線で外に出せなかったのは痛いですが、4着を獲れてよかったです」との言葉通り、3位に入った。さらに誰よりも安堵の表情を浮かべたのは野畑騎手。全馬入線直後から「残ったんじゃないですか?」と胸を撫でおろし、「他力本願で、乗っていない僕が一番緊張していました」と4位死守の心境を話すと、同じ川崎所属の新原騎手と「JRAで1戦ずつ勝ちましょう」と誓い合った。また、2位はすでに騎乗を終えた菅原涼太騎手(大井)だった。

JRA東日本では第2戦6着でポイントを加算できた秋山稔樹騎手(JRA)が第1戦前の4位を守り、「よっしゃ!よかったあ」と両手を上げた。同3着の横山騎手はトップに躍り出てのTR通過。2位は佐々木大輔騎手(JRA)、3位・永野猛蔵騎手(JRA)だった。

対して、あと一歩でファイナル進出圏内を逃した木間塚騎手は「今日は第1レースから勝たせてもらって、行けるかなと思ったんですけど」と意気消沈。佐々木志音騎手(岩手)や所蛍騎手(船橋)といった今年デビュー組は見せ場を作れなかったが、この経験を糧に来年の飛躍を誓った。

残す西日本最後のTR笠松で逆転劇は起こるだろうか。


取材・文大恵陽子

写真国分智(いちかんぽ)

Comment

第1戦1着 大木天翔騎手(大井)

少し出遅れましたが、最後は「頑張ってくれ」という思いで追っていて、馬の能力で差し切ってくれました。このTR次第でファイナルに行けるか決まると思っていたので、結果を残せて嬉しいです。昨年もTR船橋で勝ってファイナルに行けて、縁のある競馬場です。ファイナルでは昨年以上の成績を残したいです。

第2戦1着 佐藤翔馬騎手(JRA)

砂を被ると良くない馬だと聞き、番手で思い描いた通りのレースができました。3~4コーナーで少し手応えが怪しくなりましたが、手前を替えてもうひと伸びしてくれました。今年は生まれ育った川崎競馬場でのファイナルということもあって、行きたい思いは強かったので、悔しいです。来年頑張ります。