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第36回ダービーグランプリ

歴史を重ね最後のグランプリ
  無敗の世代最強馬が名を刻む

ダート競走の体系整備にともない、長きにわたって地方競馬を盛り上げてきたダービーグランプリが、第36回の今回で終止符を打つ。全国のダービー馬が対戦するダービーとして1986年に始まり、96年からは中央も含めた3歳ダートチャンピオン決定戦に。その後、岩手競馬の財政危機による休止もあったが、2010年には再び地方全国交流として復活。17年から始まった“3歳秋のチャンピオンシップ”ではファイナルの役目を担ったが、そのシリーズも7年目の今年で役目を終える。

最後のダービーグランプリは7頭立てという史上最少頭数となったが、地方全国交流としては最高のメンバーといえるもの。しかしやはりといおうか、無敗のままジャパンダートダービーJpnIを制したミックファイアの実績が断然。単勝は1.0倍で推移していたが、最終的には1.1倍となった。

1番枠に入って逃げると思われた北海道のベルピットが出遅れた。ハナをとったのは好ダッシュを見せたミックファイア。「少頭数だしハナに行くパターンあるんじゃないかと御神本騎手と話してしていた」(渡邉和雄調教師)という想定内だ。向正面に入るとマンダリンヒーローがぴたりと直後でマーク。ベルピットは外に持ち出して5番手。サベージは6頭ほぼ一団の後方から10馬身ほども離れた位置を進んだが、大井では多頭数縦長の後方を追走していたことを考えれば、それも定位置といえた。

3コーナー、マンダリンヒーローの吉原寛人騎手が勝負に出た。ミックファイアをとらえにかかり、4コーナーでは頭か首ほど前に出ると、ミックファイアの御神本訓史騎手も手綱を動かしはじめた。直線を向くと、2頭が馬体を併せての追い比べ。しかし直線上り坂でミックファイアがじわじわと前に出ると、マンダリンヒーローに1馬身半差をつけてのゴール。内に切り替えたベルピットも迫って半馬身差で3着。直線、持ち味の末脚を発揮したサベージが外から一気に迫り、さらに半馬身差で4着に入った。

南関東無敗の三冠馬を慌てさせる見せ場をつくったマンダリンヒーローは、「ミックファイアを交わす勢いで行って、首ぐらい出たんですけど、坂を上がったあたりから脚色が変わって、負けて悔しいですけど、勝負にいっての結果なので悔いはないです」と吉原騎手。

早くからミックファイアとも勝負できると角川秀樹調教師が強気だったベルピットだが、「スタート(の出遅れ)がすべてです」(桑村真明騎手)と悔しい3着。

「(道中)かなり離されましたが、この馬のリズムでは走れていて、最後はすごくいい脚を使ってくれましたが、休み明けで7割くらいの仕上がりだったので、そのぶんかな」というサベージの石崎駿騎手。レースの上り(=ミックファイアの上り)3ハロンが36秒7のところ、35秒8という末脚は、あらためて広いコースの長い直線で可能性を感じさせるものだった。

勝ったミックファイアの渡邉調教師は、「秋初戦でメンバーも揃っていましたし、正直(休み明けで)馬に余裕もあったので、勝ててほっとしています。次から古馬との対戦で課題も見えたので、よかったと思います」という次走予定は、地元大井開催となるJBCクラシックJpnI。

ダート体系が大きく変わろうとする最後の年、最後の南関東三冠馬が、ダービーグランプリの最後の勝ち馬としてもその名を刻んだ。

取材・文斎藤修

写真佐藤到(いちかんぽ)

Comment

御神本訓史騎手

長距離輸送に初コースと左回り、課題はたくさんあって、すごくプレッシャーもありました。ジャパンダートダービーと比べてデキは7割5分。成長した分なのか休み明けの分なのか余裕のある走りで、なんとか勝ち切ってくれてよかったです。古馬の壁は厚いと思うので、もっと成長していければと思います。

渡邉和雄調教師

輸送でもプラス体重で出したかったんですけど(3キロ減)、着いてからカイバを食べず、そのあたり課題も見つかりました。マンダリンヒーローの吉原騎手が勝ちに行く競馬をしてきて、一瞬、あれ?(勝たれるのか)と思ったんですけど、なんとか振り切ってくれて、心臓によくないレースでした。