今年ほど、多士済々のメンバーがそろったマイルチャンピオンシップ南部杯JpnIも珍しい。2020年はモズアスコット、ゴールドドリームなどGI/JpnIホース6頭と豪華な顔ぶれだったが、今回の有力各馬はほぼ別路線を歩み、しかも休み明けがずらり。ファンは馬券検討に頭を悩ませたに違いない。かく言う私も出走予定馬の段階で目移りし、コメントを調べて迷い、最終チェックのパドックでも答え（当たり外れは別です）を出せないままレースに臨んだ。

結果、発売金額はマイルチャンピオンシップ南部杯JpnIレコードの21億7093万2700円（JRA開催だった11年を除く）。1日の発売金額もJBC開催を除くレコードを記録した。

レモンポップは今年のフェブラリーステークスGIを完勝。12戦8勝、2着3回。3着以下はドバイゴールデンシャヒーンGI（10着）のみ。国内では連対パーフェクトを続けている。

カフェファラオは2年連続でフェブラリーステークスGIを制し、昨年のマイルチャンピオンシップ南部杯JpnIの覇者。安田記念GIから直行は昨年と同様のステップ。

ジオグリフは昨年の皐月賞馬。JRAクラシックホースの岩手遠征は、エリザベス女王杯馬ホクトベガ（1996年マイルチャンピオンシップ南部杯1着）、皐月賞馬イシノサンデー（96年ダービーグランプリ1着）、そして桜花賞馬キョウエイマーチ（99年マイルチャンピオンシップ南部杯GI・2着）以来、史上4頭目。

イグナイターは昨年、黒船賞JpnIII、かきつばた記念JpnIIIを制し、ほかのダートグレードでも好走。NARグランプリ年度代表馬を受賞。今年もさきたま杯JpnIIを優勝し健在を誇示した。

以上4頭が1番人気から4番人気。最終的にレモンポップが単勝1.5倍と人気が集中した。

時折り霧雨が降る中、好ダッシュを決めたレモンポップが馬なりで先頭に立った。2番手にイグナイター、外め3番手にジオグリフ、4番手インにカフェファラオで、間にレディバグ、外にソリストサンダー。

前半3ハロン36秒7、対して上がり3ハロン34秒7。逃げたレモンポップがスローに落とし、4コーナーまで持ったまま。直線を向いてゴーサインを出すと後続を離す一方。2着イグナイターに大差をつけて圧勝した。2着馬に2秒0差はマイルチャンピオンシップ南部杯JpnIでの最大着差。まさにレモンポップの独壇場となった。

坂井瑠星騎手は「レモンポップが栗東滞在中、調教で乗って良くなっていくのを感じましたし、今日の返し馬でもフェブラリーステークスと同様、いい状態だったと思います」。今回の最大不安点はドバイ遠征以来、6カ月半ぶりの実戦だったが、坂路を求めて栗東で乗り込んだ効果は絶大。「強いのは知っていましたから、いっしょにレースを楽しんでいました」と坂井騎手は続けた。レモンポップはフェブラリーステークスGIに続いてマイルチャンピオンシップ南部杯JpnIも制し、ダート最強マイラーの座を固めた。

兵庫のイグナイターが2着に粘った。昨年はカフェファラオに0秒2差4着だったが、今年は連対を確保。「さきたま杯と同じくらいか、それ以上の仕上がり。ここまで来たらジーワンを獲らせてあげたい」と笹川翼騎手。次走はJBCスプリントJpnIの可能性が高い。

3着はレディバグ。「スタートはスムーズでしたが、二の脚が遅い馬なので、出して行って競馬をしました」（酒井学騎手）。GI/JpnI初挑戦で7番人気3着なら上々だった。

4着タガノビューティーはスタート直後に脚を滑らせたのが痛かったが、直線大外から伸びてきた。

カフェファラオは5着。「内枠で競馬がしづらいなと思っていましたが、そういう形になりました。大きなチャンスをもらいましたが、うまく扶助できなくて悔しいです」（高松亮騎手）

昨年5着に健闘した地元岩手のゴールデンヒーラーは7着だった。「もう少し馬場が渋った方がいいですね。今日はパワーを要求されました。3～4コーナーまではいい雰囲気でしたけど……」（山本政聡騎手）