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ヤングジョッキーズシリーズTR 笠松

笠松でJRA田口騎手が躍進
  高知からファイナルへ2名

ヤングジョッキーズシリーズ(YJS)のトライアルラウンド(TR)もついにここ笠松競馬場で最終戦を迎えた。地方37名、JRA25名が出場した今年のYJS。地方西日本はファイナル進出の当落線上にいる4位・山本屋太三騎手(兵庫)や3位・岡遼太郎騎手(高知)はすでに騎乗を終えており、5位・長尾翼玖騎手(兵庫)などTR笠松騎乗組がどこまでポイントを伸ばすかが注目された。

なお、第5レースで故障馬が発生。その対応に時間を要したため、レース後に行われる予定だった紹介式は中止となり、マスコミ向けの集合写真撮影のみとなった。

第1戦は小沢大仁騎手(JRA)のアウトストラーダが出走取消となり9頭立て。しかしながら、単勝オッズ10倍以下が6頭もいる大混戦で、降級馬や休み明けの馬など、たしかに力比較の難しいメンバー構成だった。

そういった要素もあってか、基本的に逃げ・先行有利な笠松において、勝ったのは序盤を中団うしろで運んだ田口貫太騎手(JRA)。好スタートから先手を取った今村聖奈騎手(JRA)が3コーナー付近で後退するのと入れ替わって泉谷楓真騎手(JRA)が先頭に立ち、4コーナーではその外に浅野皓大騎手(愛知)、深澤杏花騎手(笠松)、田口騎手、松本一心騎手(笠松)と5頭が横並び。そのなかから抜け出した田口騎手は、ゴール前では流す余裕さえあり4馬身差をつけての完勝だった。

2~4着は写真判定の末、2着に3~4コーナーをロスなく6番手で回った長尾騎手。開口一番に「これでファイナルに行けますよね?」と、ピースサインを作って喜んだ。「TR園田第2戦でのハナ差2着が本当に悔しくて、毎日レース映像を見返しては反省していました」と、ようやく気持ちが晴れたよう。

そして、ハナ、ハナ差で3着・長江慶悟騎手(笠松)、4着・青海大樹騎手(佐賀)、さらに半馬身差で5着・松本騎手もファイナルに望みを繋げた。しかし、彼ら3名が最終戦の第2戦で求められるのは勝利の一択。青海騎手は「佐賀の騎手はほぼ毎年ファイナルに出場していますから、途絶えさせたくないです。佐賀のためにも頑張らないと」と、2020年から3年連続でファイナルに出場し、21年には飛田愛斗騎手が総合優勝している佐賀競馬の看板を背負い最終戦へと向かった。

長江騎手はハナ差で2着20ポイントの高得点を逃してしまったが、「仕方ないです。最終戦は展開次第でチャンスがあると思うので、力を出しきります」と胸に闘志を秘めた。

対して、ファイナルへの希望が消えてしまったのは深澤騎手。1番人気に推されてはいたが、降級馬が複数いたことに加えて約3カ月ぶりとあって、最後は息切れしてしまった。

そうして迎えたTR最終戦の第2戦。単勝2.3倍の1番人気に推されたのは第1戦を勝った田口騎手だった。笠松は両親が騎手として活躍し、自身の初勝利を飾った縁の地でもある。ファンも笠松出身のJRA騎手への期待もあったことだろう。

レースはその田口騎手が引っ張った。深澤騎手や、是が非でも勝ちたい青海騎手はスタート直後に挟まれて後方から。2番手にいた山田義貴騎手(佐賀)が4コーナーで先頭に並びかけると、直線ではリードを広げて3馬身差で勝った。

この瞬間、青海騎手、長江騎手、松本騎手のファイナルへの可能性は消滅したのだが、山田騎手はそれをしっかり把握していた様子。その上で、「僕自身は勝ってもファイナルには行けないことは分かっていたんですけど、他のジョッキーに意地悪をしようかな、と」と負けん気たっぷり。もちろんレースは真っ向勝負だからファイナルへの忖度など不要で、むしろ逆境をバネに勝利を手繰り寄せたと言える。

3/4馬身差3着には最後方から今村騎手が追い込み、4着に泉谷騎手、5着は小沢騎手だった。

これにより、地方西日本は笠松第1戦終了後から上位に順位変動はなく、1位・濱尚美騎手(高知)、2位・長尾騎手、3位・大畑彗悟騎手(愛知)、4位・岡騎手でファイナル進出者が決定。JRA西日本は田口騎手が5位から順位を上げトップ4入り。1位・松本大輝騎手、2位・小沢騎手、3位・角田大和騎手、4位・田口騎手となった。

今年のファイナルは12月14日に初開催となる川崎競馬場で、16日には2年ぶりのJRA中山競馬場で行われる。


取材・文大恵陽子

写真岡田友貴(いちかんぽ)

Comment

第1戦1着 田口貫太騎手(JRA)

道中も終始いい手応えで、直線で突き抜けて馬が強かったです。笠松は地元で、初勝利もYJS勝利も挙げさせてもらって、いい思い出があります。笠松の方からも「おめでとう」と声をかけていただきました。デビューから半年が経ち、トレーナーと日々乗り方の研究をしています。ファイナルでも頑張ります。

第2戦1着 山田義貴騎手(佐賀)

「出たなりで溜めてほしい」との指示でしたが、予想以上にゲートを出たので前で運びました。向正面から手応えがあり、前の馬を交わせると思いました。勝ってもファイナルへ行けないのは悔しいです。YJSは他の騎手がどう動くか読むのが難しかったですが、楽しかったです。地元リーディングも獲れるよう頑張ります。